いざアメリカへ

2017年10月11日 Filed under:司法制度

僕が司法試験に合格したのはもうずいぶん昔になる。
合格した当時は,弁護士志望であって渉外事務所で国際案件に携わってみたいという夢があった。
あるいは,当時まだバブルの余韻もあったからなのか,ブル弁(ブルジョア弁護士)になって不動産専門弁護士!になって一儲けしたいと真顔で考えていた。
大学の研究室の先輩弁護士からは,独禁法をやる事務所だが来ないかという誘いもあったが,当時は今とは違ってどの事務所に行くかは後期修習が始まるまでに決めれば良いとの考えから,特に事務所を決めずに第46期司法修習生になった。
もちろん入所前は就職活動などせず,せっせと英語の勉強をし,アメリカとイギリスに約1か月間,一人でバックパック旅行に出かけた。
実家の親はこの旅行計画に驚き,もうこの世の別れかと言わんばかりに心配して反対したが,親心子知らずで,当時,絶対に世界を見てみたいとの思いを抱き続けてきたので,司法試験に合格した瞬間,格安航空チケットと大きな旅行バッグを買ったものだ。吉田松陰がアメリカに密航を企ててるようなワクワク感があった。
何しろ生まれて初めての海外旅行だ。とにかく見てみたい。世界を見てみたい。ただそれだけである。

出発の1週間前くらいから緊張していたように思う。
英会話は「1週間で分かる旅行英会話」みたいな本を読んでいただけ。受験英語は得意だったが,司法試験の勉強に専念していたので英語からは全く遠ざかっていた。
何とかなるさという甘い考えだった。
いよいよ出発の朝。
パスポートは持ったし,格安航空チケットも持ったし,トラベラーズチェック(懐かしい)も持ったし,準備万端。
大きなバッグを背負って,革ジャンにジーパンといういでたちだった。
意気揚々と下宿を後にしたものの,あまりにも重いバッグで,立川の下宿を出発して成田空港の駅ホームに到着した瞬間,駅ホームでバッグを床に落としてしまい,中のアフターシェーブローションMANDAMの瓶が割れて,全ての荷物が大変な匂いになってしまった。。
このフレグランスな香りとともに冒険は始まり,そして,そのMANDAMの香りが今でもこの旅行を思い起こさせるのである。

テアトルポー

2016年8月4日 Filed under:司法制度

高校時代を郷里函館で過ごし,進路のことなど何も考えもせずに柔道の部活で汗を流し,
その当然の報いとして大学受験不合格,札幌で浪人生活を強いられることになった。

それほど裕福でもない親に頼み込んで,何とかお金を出してもらって札幌の予備校に通い,寮生活を始めたはいいが,根っからの人付き合いの悪さからからか,友人など一人もできるはずもなく,そうは言っても受験参考書を友人にする気にもならず,毎日純文学小説をむさぼるように読み,しかし,ときどき,札幌郊外の丘に寝そべっては,教室の斜め左向かいに座っていたショートヘアの子のことを思い,高く,透き通った空を見ていた。

当時の楽しみは,予備校の授業をさぼって観に行く名画座の映画だった。
それは札幌駅の地下にある「テアトルポー」という名画座だ。
250円で観ることができたのだ。
寅さん,ロッキー,道,ティファニーで朝食を,ローマの休日,サタデイナイトフィーバー,ミスターグッドバーを探して。。。
大抵の名画はそこで観た。
たぶん,疑似人生経験もテアトルポーで得られたに違いない。

大学を卒業して,司法試験に合格して司法修習生となり,郷里の函館地方裁判所に配属になったとき,
札幌への出張で,同期の染谷君(今は裁判官)と二人で,懐かしい,懐かしい札幌の街を歩いた。
でももう寮も,テアトルポーも,どこにもなかった。

もうあれから10年も経っていたのであった。

明日のジョー

2016年8月2日 Filed under:司法制度

山Pこと山下智久主演の実写版「明日のジョー」の中で、香川照之演ずる丹下段平がいいことを言ってた。

正確には忘れたけど、こんな感じ。

「明日」っていうのはよ、格好だけの薄っぺらい毎日を送ってる奴には永遠に来ないんだ。
「今日」という1日を、汗と泥にまみれ這いつくばってでも必死に生き、周りの奴らに、こいつ狂ってるんじゃないかと思われるほどガムシャラに立ち向かっていく奴にだけ訪れるんだよ、分かるかジョー。」

「明日」をつかむぞ。

薬物依存者等に対する刑の一部執行猶予制度について

2016年1月6日 Filed under:司法制度

弊所では,覚せい剤,大麻,麻薬などの薬物事件を多数担当しています。現在の日本の刑事司法においては,薬物の使用や所持といった薬物事件の初犯者であれば,起訴されて裁判所で審理を受ける場合でも,懲役1年6月,執行猶予3年といった刑が科され,社会復帰できることが多くあります。しかしながら,薬物事件は再犯率が高い犯罪であり,1回目は執行猶予であったとしても,2回目,3回目と裁判を受ける場合には実刑判決となり,刑務所に収容されることになります。そして,刑務所で矯正教育を受けたはずの人が,再び薬物に手を染め,再度長期の実刑に服する事例が後を絶たないのです。
弊所が薬物依存の再犯者を弁護する場合,実刑判決相当であったとしても,被告人に必要なことは薬物依存症の治療であり,刑事施設に長期間収容したとしても根本的な解決にならないことを訴え,専門治療施設と連携を図り,保釈期間中や出所後に専門治療施設等への入所・通院することを前提として,出来る限り短期間の懲役刑を求めていくという弁護を行うことも多々あります。しかしながら,全ての事件において,専門施設と連携を図ることが可能というわけでもありませんし,裁判所がこういった主張を汲みいれるか否かは,裁判所の裁量に委ねられます。
このような現状の日本の刑事司法制度では,薬物再犯者に対する処遇が不十分であり,薬物事件の再犯率を下げることには繋がらず,徒に再犯者を増やすことになってしまっていたのです。
こういった薬物再犯者の処遇についての問題点を踏まえ,平成25年6月,刑の一部執行猶予制度の導入等を内容とする「刑法等の一部を改正する法律」及び「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律」が成立し,今年の6月までに施行されることになっています。今までの刑事司法制度においては,刑期の全部を実刑とするか,刑期の全部を執行猶予とするかの2つしか選択肢がありませんでしたが,この法律によって,3年以下の懲役・禁固を言い渡すときは,判決で1年~5年間の間その一部の執行を猶予することができるようになりました。即ち,刑務所内における処遇と地域社会における処遇(保護観察)を併せることで,中間的な処遇を図ることができるようになるのです。
一部執行猶予期間中は,初犯者であれば保護観察に付するか否かは裁判所の裁量に委ねられますが,薬物使用等の罪の再犯者は,必ず一部猶予期間中に保護観察が付くことになります。そのため,刑の一部執行猶予期間中に保護観察に付された犯罪者は,一定期間の施設内処遇において矯正教育を受けた後,地域社会での生活への橋渡しとして,薬物処遇プログラムを受けたり,薬物処遇重点実施更生保護施設への入所等,再犯防止に向けた専門的な治療を受けることが可能になるのです。
この制度は,まさしく弊所の行う専門治療施設と連携した薬物存社者に対する弁護という方針が,日本の刑事司法にも取り入れられるという事であり,画期的な制度であると言えます。
もっとも,保護観察中等に薬物依存者の支援に協力する民間施設が少なく,実効性に欠けるのではないか,との問題点も従前から懸念されていました。そこで,平成27年11月19日に厚生労働省が発表したガイドラインでは,保護観察所や医療機関等の民間機関が連携して,薬物依存者に対して治療や支援を行う指針が定められました。
今後,薬物依存者に対する専門施設への連携が深まり,薬物事件の再犯率が低下していくことを期待します。弊所としても,個々の刑事裁判を通じて,薬物依存者に対する再犯率低下に向けた処遇改善の活動を継続する所存です。

確定記録の開示に関する最高裁決定

2015年11月11日 Filed under:司法制度

平成27年10月27日,最高裁第2小法廷で,刑事確定訴訟記録法4条1項ただし書、刑訴法53条1項ただし書にいう「検察庁の事務に支障のあるとき」と関連事件の捜査や公判に不当な影響を及ぼすおそれがある場合に関し,重要な決定が出ました(小貫芳信裁判長)。

刑事確定訴訟記録は,誰であっても閲覧請求ができます(刑事確定訴訟記録法4条1項)。しかし,「検察庁の事務に支障のあるとき」(刑訴法53条1項但書)には,閲覧は認められません。本最高裁決定は,「検察庁の事務に支障があるとき」とは,「その保管記録に係る事件と関連する他の事件の捜査や公判に不当な影響を及ぼすおそれがある場合が含まれる」と判断しました。
「検察庁の事務」という文言を狭くとらえ,裁判の執行や証拠品の処分等の検察庁自身の他の事務のことのみを指すとする考え方もありますが,それを超えて他の事件の捜査や公判への影響も捉えた点に,本決定の意義があります。
実は類似の地裁決定があります(水戸地裁土浦支決平成元年4月27日)。AとBとの共犯事件で,Aの事件は既に終結,Bの事件は継続中です。Bの弁護人は,B事件の証拠開示が認められないことから,既に終結したA事件の確定記録の中から証拠を探そうと考え,A事件の確定記録の閲覧を申請しました。これに対して,同地裁は本決定と同様に判断し,記録の閲覧を認めませんでした。本決定は,同裁判例を含む下級審判例を追認したものです。
本決定で,刑事確定訴訟記録法の証拠開示的利用が制限されることが明確になりました。弁護人の姿勢として,証拠開示の制度の拡充ないし運用の改善を訴えるとともに,正攻法での証拠開示に力を入れる姿勢が求められているというべきでしょう。

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