2013年5月 のアーカイブ

捜査機関による違法な取調べ

2013年5月30日 Filed under:刑事司法,刑事弁護

今日は取調べについての話です。

佐賀県弁護士会所属の男性弁護士が28日,佐賀市内で記者会見し,国選弁護人として担当している男性被告について,「佐賀地検の検事が取り調べ中,被告にカッターナイフの刃先を向けた映像が取り調べの録画記録に残されている」などとして,特別公務員暴行陵虐容疑での刑事告発を検討していることを明らかにした。

佐賀地検は「事実確認を行った上で改めてコメントする」としている。

弁護士によると,被告はわいせつ目的略取容疑などで県警に逮捕され,送検後,佐賀地裁に起訴された。公判はまだ開かれていない。

公判前整理手続きで,地検が取り調べの録画記録を証拠開示した中で,男性検事が2月19日,机越しに座っていた被告に対し,40センチほど前でカッターナイフの刃を出して数秒間示し,言葉を発する場面が映っていたという。

弁護士は「取り調べ中のこうした行為は,供述に影響する可能性がある」としている(2013年5月28日22時17分 読売新聞)。

警察に逮捕された後,被疑者(被告人)は,警察署や検察庁の中で長時間にわたり,取調べを受けることになります。ほとんどの人は初めて逮捕される人達ですから,警察署の留置施設の中での生活自体,辛く厳しいもので,精神的に追い詰められてしまった状態で取調べを受けることになります。警察や検察がこうした被疑者の精神状態を利用して真実とは異なる,虚偽自白を強要することがあってはなりません。そのために取調べの録画録音制度は導入されました。

カッターナイフを示したという検事の対応がもし本当だとすれば,仮に被疑者を脅すつもりがなかったとしても,あまりにも軽率な行為です。そのカッターナイフが犯行に使用された証拠としての凶器なのかどうかで映像の評価も変わってくるでしょうが,いずれにしても,軽率な行為といえます。このような問題のある取調べが白日の下に晒されたのも,取調べ録画録音制度のひとつの成果です。再発防止のために告発することも重要ですが,カッターナイフを示して被疑者に供述させた内容を,裁判で使用させないようにすることも,弁護人の重要な仕事になってくるかと思います。

少年事件の刑の厳罰化に思う

2013年5月29日 Filed under:事件,刑事司法

今日は少年に対する刑罰についての話です。

茨城県稲敷市の利根川河川敷で昨年9月,同市光葉,無職湯原智明さん(当時20歳)を集団暴行で死亡させたとの傷害致死罪などに問われた同市の無職少年(18)の裁判員裁判で,水戸地裁は27日,懲役5年以上8年以下(求刑・懲役5年以上10年以下)の不定期刑を言い渡した。

根本渉裁判長は「粗暴性と執拗さは際立っている」と述べ,主犯に準じる中心的な役割を果たしたと認めた。

判決によると,少年は遊び仲間の少年少女ら6人と共謀し,河川敷で昨年9月15日朝,湯原さんに約3時間半にわたり暴行を加えて死亡させるなどした(2013年5月27日21時38分 読売新聞)。

このように,少年事件の判決は,「懲役5年以上8年以下」という幅のある内容が言い渡されることが多く,「懲役3年」等のように懲役期間が確定している成年に対する判決と比して分かりにくいものとなっています。
少年法が幅のある判決を言い渡すこととしている理由は,少年の人格が発達途上にあることから,服役中の教育処及び更生の効果に応じて,刑の執行終了の時期を柔軟に判断できるようにするためとされています。難しい言葉で言うなら,そういう少年の社会に適応する性質を「可塑性」(かそせい)といいます。そして,実務上は,判決の上限を基準に,刑の執行終了の時期を判断しているようです。

被害者が亡くなっている事件の判決が,「懲役5年以上8年以下」と聞くと,刑が軽いと感じてしまう方が多いのではないでしょうか。今年に入ってから,法務省の法制審議会は,従前は5年であった不定期刑の短期の上限を5年から10年に引き上げ,長期の上限を10年から15年に引き上げる改正案をまとめております。成人に対する刑罰と同様,少年に対する刑罰も厳罰化の傾向が見られます。「自分は少年だから悪いことをしても刑が軽くて済む」などと付け上がっている少年犯罪者を厳罰に処して社会の厳しさを思い知らせる,ということなのでしょう。

ただ,少年に対して厳しい刑罰を科せばそれで少年犯罪がなくなるかというと,そう単純な問題でもありません。少年の問題は,親の問題でもあり,地域社会の問題でもあり,国の教育の問題でもあります。非行や犯罪に走る少年は,常日頃,普段は背広にネクタイを締めて立派そうにしている大人たちが,詐欺,粉飾,偽装,賄賂といった汚い金儲け主義に手を染めているのを,ニュース等を通じて目にし,耳にしています。自分の親も子供を放り出し,ギャンブル,酒,女に溺れていたりします。だから,そういうのを見ている少年は大人を信用しません。刑罰で威嚇しても本質的な改善が望めないことが多々あるのです。

そういう少年には「人の正しい姿」を見せてあげる必要があります。「こういう大人もいる」と,人としての正しい生き方を見せてあげるのです。正直で,まっすぐで,一生懸命,額に汗して自分の大切な者たち,家族のために毎日真面目に働き,慎ましやかな幸せを大切にして正直に生きている人たちがいる,ということを示してあげるのです。それが,自分が傷つけた被害者の家族の姿であったりします。そのことを感得すれば,その少年に元々あった善良な心にまるで染み渡るように,自己の犯罪行為に対する悔悟の情が広がっていきます。そうして初めて少年は刑罰を受け止めることができ,刑罰は効果を発揮し,少年は,その「可塑性」によって更生していくのです。
そのお手伝いをするのが弁護士(付添人)なのです。

低額すぎる刑事補償と裁判所の厳格な証拠評価

2013年5月28日 Filed under:刑事司法

今日はある窃盗事件の無罪判決の話です。

長野県塩尻市のコインランドリーで昨年2月,女性の下着を盗んだとして窃盗罪に問われた男性(39)の無罪確定に関連し,刑事補償法に基づき,拘束日数に応じた補償金166万2500円が24日,男性に支払われた。

補償の対象期間は,男性が長野県警塩尻署に逮捕された昨年11月7日から,無罪判決が言い渡された今年3月19日までの133日間。男性は無罪判決が確定した翌日の4月4日,1日あたり1万2500円の上限額で補償を請求していた。

男性は「お金が支払われたとはいえ,県警や検察からの謝罪がないことには全く納得できない」と話した。今月上旬,松本市で接客業の仕事に就いたという。

無罪確定を巡っては,県警が現在,捜査全体の検証を進めており,結果について先月26日,「県公安委員会に報告のうえ,公表できるものはする」という方針を明らかにしている。塩尻署の捜査員は,犯人とされる人物が映った防犯カメラの映像をディスクに記録したが,男性の逮捕前にコインランドリーの経営会社に返却。その後,ディスクは廃棄され,男性の公判には,この映像を写した写真が証拠として提出された。

捜査員は公判で,当時の上司の指示でディスクを返却したと証言しており,県警は捜査員らから事情を聞き,返却の経緯や理由についても調査している。

捜査員は「防犯カメラの映像と,デジタルカメラで撮影した映像に差異はなかった」と主張したが,地裁松本支部は,「(デジカメで撮影した)画像によって,人物の同一性を確定することは不可能であり,およそ,犯人性を示す根拠となり得ない画像」として,男性に無罪を言い渡していた(2013年5月25日16時59分 読売新聞)。

133日間の身体拘束を受けて,166万2500円。この金額を見て,皆さんはどう思われるでしょうか。多くの方は,「こんな少ない額しかもらえないの?」と思うのではないでしょうか。しかし,この金額は刑事補償法第4条第1項で定められている上限の金額であり,これ以上多くもらおうと思えば,別途,警察(都道府県)や検察(国)相手に損害賠償訴訟を起こさないといけないのです。それも勝てる見込みはほとんどありません。無実の罪で逮捕され,勾留されて,たったこれだけの金銭しかもらえないのでは,多くの人が納得いかないのではないでしょうか。

ただ,今回の事件の被告人は結果的に無罪を勝ち取れたので,その点については大変良かったと思います。現在の刑事裁判ではなかなか無罪判決はお目にかかれず,特に無罪判決で確定となるとなおさらです。今回,裁判所は,犯人とされる人物が映った防犯カメラの映像が廃棄され,それを二次的に複写したデジカメ画像しかないこと及びそのデジカメ画像が人物の同一性を確定するほどのものではなかったことから,被告人が犯人ではないとして無罪判決を下しました。裁判所が検察の提出する証拠を厳格に評価した形ですが,これからも裁判所にはこのような公正な法の番人としてのスタンスを忘れないでほしいものです。

外れ馬券代は必要経費か

2013年5月27日 Filed under:事件,刑事弁護

今日は馬券の話です。

競馬の予想ソフトを使って大量に馬券を購入し,配当で得た約29億円の所得を申告しなかったとして所得税法違反に問われた元会社員の男性(39)に対する判決で,大阪地裁(西田真基裁判長)は23日,男性に懲役2月,執行猶予2年(求刑・懲役1年)の有罪判決を言い渡した。

西田裁判長は「被告は,娯楽ではなく資産運用として競馬を行っていた」と指摘。所得から控除できる必要経費について「当たり馬券の購入額だけ」とする検察側の主張を退け,「外れ馬券分も必要経費に含まれる」との判断を示し,課税額を約5億7000万円から約5200万円に大幅に減額した。判決後,被告側は控訴しない考えを示した。一方,大阪地検は「判決内容を精査し,上級庁と協議のうえ適正に対処したい」との談話を発表した。

弁護側によると,「競馬の経費」を巡る司法判断は初めて。国税庁は1970年の通達で,馬券配当で得られた所得は「一時所得」としてきた。判決は,趣味や娯楽で楽しむ競馬について「原則として一時所得」とする一方,「被告の場合は一般的な馬券購入行為と異なり,機械的・網羅的で,利益を得ることに特化していた」とし,先物取引などと同じ「雑所得」にあたると判断した。

判決によると,被告は2007~09年の3年間,競馬予想ソフトと,日本中央競馬会(JRA)のインターネットサービスを使って計約28億7000万円分の馬券を購入。このうち,約1億3000万円分の当たり馬券で計約30億1000万円の配当を得ていた。収支総額の黒字は約1億4000万円だった。
公判では,必要経費の範囲を判断するうえで,前提となる「所得区分」をどう分類するかが争点になった。

検察側は「配当は偶発的な所得」として,所得税法上の「一時所得」にあたると主張。必要経費は「収入に直接要した金額」とする同法の規定に基づき,配当総額から当たり馬券の購入費を差し引いて半分にした約14億5000万円が課税対象と算定,所得税約5億7000万円を申告しなかったと主張していた。

しかし,西田裁判長は「雑所得の場合は費やした支出を合算して経費とする」との規定に従って,「外れ馬券の購入額や競馬ソフトのデータ利用料も経費にあたる」と判断。被告が申告すべきだった所得は約1億6000万円,課税額は約5200万円と認定した(2013年5月23日11時37分 読売新聞)。

この事件で検察官が言っているのは,「一時所得」というのは,営利目的で継続的に行われる行為から生じた所得ではない所得で,労務や資産の譲渡の対価としての性質も有さない所得のこと,つまり,娯楽で得た一時金のような所得を言い,当たり馬券の配当金も,「一時所得」にあたるということです。

通常,馬券を購入し,当たり馬券から配当を受ける行為は,娯楽の一時的な行為にすぎませんし,継続的に行われた行為とは言えませんので,当たり馬券から得られた配当金と外れ馬券には関連性がなく,外れ馬券は,配当金を受けるための必要経費とは考えられません。

ところが,被告人の行為が,全体として見て,資産運用として競馬をやっていたと考えられ,「営利目的で継続的に行われる行為」ということができれば,一時所得には該当しないのです。継続的に購入を続けていた馬券の購入額についても,(外れ馬券も含めて!)必要経費として考えることができるという訳です。

裁判所は,この事件で,被告人が娯楽ではなく資産運用として競馬を行っていたことを理由に,検察官の一時所得に当たるとの主張を斥け,先物取引などと同じ「雑所得」にあたると判断した上で,「外れ馬券は必要経費に当たる。」と判断しました。結果として,課税額が約5億7000万円から約5200万円に大幅に減額されました。被告人はこの判決に満足したでしょうね。優秀な刑事弁護人を選任したものだと感心します。

今なお続く振込詐欺被害

2013年5月23日 Filed under:事件

次のような新聞記事がありました。

米ニューヨーク市場での金取引を装った投資話で現金をだまし取ったとして,千葉県警は21日,K容疑者(40)ら男女11人を詐欺の疑いで逮捕した。

県警は1月に事務所などを捜索,押収した資料などから,K容疑者らが2008年以降,延べ1190人から計約11億円を集めたとみている。

発表によると,K容疑者らは昨年11月~今年1月,東京都町田市の無職女性(78)ら2人に「金は必ず値上がりする」などと虚偽の投資話をもちかけ,計525万円をだまし取った疑い。

11人のうち6人は容疑を認め,K容疑者ら5人は「だましてはいない」などと否認しているという(2013年5月21日19時46分 読売新聞)。

最近,警視庁が振込詐欺の新名称を募り,最優秀作品として『母さん助けて詐欺』が選ばれました。オレオレ詐欺等の不特定多数に対する詐欺行為が社会問題になってから暫く経ちますが,未だにこのような犯罪の被害に遭う方が後を絶たず,警視庁としても注意喚起のためにキャンペーンを展開したのだと思います。

今回の事件は,まだ裁判前の話ですから,本当に故意に詐欺行為をしていたかどうかは分かりませんが,未だに組織的にこのような詐欺を行うグループは確かに存在します。綿密な計画の下,足がつかないように何度も電話番号を変え,他人名義の口座を取得する等して,犯行が発覚しないように慎重に犯行に及んでおり,犯人を突き止めるまで大変な労力がかかります。他方で,犯人は少ない労力で多額の収入を得られるため,一度味を占めてしまうと,なかなか抜け出すことができません。そこで,犯罪が発覚した時には,甚大な被害が生じてしまうのです。

このような犯罪組織は,犯罪行為を繰り返すうちに欺罔行為が熟練していきますから,被害に遭う人は,詐欺ではないことを慎重に確認したつもりであっても,結局騙されてしまうということもあります。自分の理解できない話には手を出さないという堅実な態度が,犯罪被害から身を守る最善の策なのではないでしょうか。

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