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熱中症で無罪!「心神喪失」って,どういうこと?

2013年6月3日 Filed under:刑事司法,刑事弁護

刑事責任能力の認定について珍しい判断が下されました。

神戸市中央区の公園で2012年9月,通りかかった男性2人を殴るなどして重軽傷を負わせたとして,傷害罪に問われた香川県丸亀市の男性会社員(31)の判決が28日,神戸地裁であった。

片田真志裁判官は「会社員は犯行時,熱中症による急性錯乱状態で,心神喪失だった可能性がある」として無罪を言い渡した。弁護側によると,熱中症を理由に刑事責任能力を否定した判決は異例という。

判決によると,会社員は同月9日夜,神戸発香川行きのフェリーに乗り遅れ,野宿していたところ,かばんを盗まれたため,神戸市内を2日間にわたって徘徊。同月11日午後6時頃,散歩中の無職男性(80)を殴り倒した後,顔を踏みつけるなどし,高次脳機能障害の後遺症が残る重傷を負わせ,通行中の40歳代の男性の顔も殴り,軽いけがをさせたとして起訴された。

会社員は2人と面識がなく,目撃者には「殴りかかられたので倒した」と説明し,兵庫県警の調べには「なぜ襲ったのかわからない」などと供述していた。

地裁が職権で実施した精神鑑定では,会社員は2日間,睡眠や食事をとらず,犯行当日の気温が28度,湿度が60~80%だったことから,「熱中症により,意識混濁や被害妄想などの意識障害が生じていた」との見解を示していた(2013年5月29日10時46分 読売新聞)。

「心神喪失」という言葉を皆さんはご存知でしょうか。この言葉は,一般の方には聞きなれないものかと思います。判例においては,「心神喪失」とは,精神の障害により事物の理非善悪を弁別する能力またはその弁識に従って行動する能力のない状態であるとなっています。分かりやすく言えば,犯人が何らかの精神障害によってやってはいけないことを判断できなくなるか,もしくはやってはいけないことが何かは理解していても,その基準に従って行動できなくなっている状態を「心神喪失」というのです。犯人がこの「心神喪失」になっている場合には,刑法第39条第1項によって,犯人の行為を罰しないと規定されています。

今回の被告人は,熱中症により意識が混濁するなどしていたことから,裁判所は犯行を行った時点で,被告人には精神障害があったと判定し,傷害という罪を犯したことに対する非難まではできないと判断したのでしょう。熱中症は皆さんもご承知の通り,人間を死に至らしめる可能性がある症状です。被告人が,その死の一歩手前の状況にあったのならば,自分のしていることを理解できなくなったり,やってはいけないことを判断する能力がなくなっていたりした可能性はあります。

ただ,被害者の方からすると,犯人が熱中症だったから無罪という理屈は,容易には納得できないのではないでしょうか。いずれにしても,「熱中症」という特定の病名が問題なのではなく,当時の被告人の精神状態が問題なのですから,熱中症イコール無罪という単純図式にはなりません。   

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