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法廷で無断録音,ネットで公開

2013年7月11日 Filed under:刑事司法,司法制度

今日は「裁判の公開」について考えてみましょう。

威力業務妨害事件をめぐる大阪地裁の法廷でのやり取りが無断録音され,動画サイト「ユーチューブ」で半年以上にわたり公開されていることがわかった。録音を原則禁じた裁判所法に触れる疑いがあり,地裁は削除を求めるとみられる。

無断で録音されたのは,JR西日本への威力業務妨害容疑などで昨年12月に逮捕された男性(40)の勾留を認めた理由について地裁が開示した法廷。男性は東日本大震災による「震災がれき」の大阪市搬入に反対するデモをJR大阪駅構内でしたとされたが,3月に不起訴になっている。

動画サイトでは,裁判官が「釈放すると共犯者らと口裏合わせをする恐れがある」と勾留を認めた理由を説明したり,男性の弁護人が「罪証隠滅の恐れはなく勾留を取り消すべきだ」と主張したりする音声が36分ほど公開されている。笑い声やため息も交じっており,傍聴した人物が傍聴席で録音したとみられる。

公開され始めたのは1月で,これまでに1千回以上再生された。法廷での録音を認めるべきだとする書き込みもあった。弁護人は取材に「コメントのしようがない」と話している。

報道機関は重大な裁判などの開廷前の様子を撮影しているが,これは「裁判官は法廷の秩序を維持するために必要な処置をとれる」とした裁判所法に基づいて映像のみ許可を得ている(2013年7月7日16時45分 朝日新聞)。

憲法82条1項は「裁判の対審及び判決は,公開法廷でこれを行う」と定めて,裁判の公開に関する原則を定めています。裁判の公開とは,要するに,国民に裁判の傍聴を認めるということです。裁判の公開を実現するために,各裁判所の法廷には必ず傍聴席が設けられていますし,国民はいつでも自由に裁判の傍聴ができるという建前になっているのです。また,最高裁判例でも,「傍聴人のメモをとる行為が公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げるに至ることは通常あり得ないのであって,特段の事情がない限り,これを傍聴人の自由に任せるべきであり,それが憲法21条1項の規定の精神に合致する」として,傍聴人がメモをとることを許容しています。

それでは,メモを超えて,録音すること,さらに,それをYouTubeにアップすることは許されるでしょうか。刑事訴訟規則215条が「公判廷における写真撮影,録音又は放送は,裁判所の許可を得なければ,これをすることができない」と規定して,法廷内での録音等の許否に関して裁判所に裁量を認めています。この規定は,法廷秩序を維持して裁判の公正を確保する要請や,訴訟当事者や関係人の名誉保護の要請を実現することを趣旨としています。そうすると,録画や映像のネット上へのアップロードは,この趣旨を著しく害するものといえそうです。たとえば,証人尋問や被告人質問では,彼らの極めて私的な情報を公にするわけですから,供述内容が傍聴人の記憶の中に留まるだけでなく,映像として媒体物に正確に記録されることとなれば,証人や被告人には大きな心理的プレッシャーが働きます。そうすると,なかなか真実を話しにくい状況が作られてしまい,「公正で円滑な裁判」の実現は難しくなってしまうというのがその理由です。メモでさえも無制限に認められているわけではなく,法廷の秩序を害しない範囲で裁判官が許容しているにすぎないのですから,録画であればなおさら許容される余地は狭くなるでしょうし,それをYouTubeで公開することは許されないということになります。

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