2013年7月 のアーカイブ

国際指名手配について

2013年7月8日 Filed under:刑事司法,司法制度

今日は,「国際指名手配」について書きます。

国民健康保険の海外療養費をだまし取ったとして,警視庁は25日,東京都世田谷区弦巻,バングラデシュ国籍の調理師アミン・ショリフ被告(45)(詐欺未遂罪などで起訴)を詐欺容疑で逮捕した。

同庁は,同じ手口で海外療養費を詐取しようとしたなどとして,同被告のほかに同国人3人を逮捕,犯行の指南役として,ジュリップ・エイエスエイ・アル容疑者(53)についても同容疑で逮捕状を取った。

発表によると,A被告は2009年12月,バングラデシュの病院で約1か月間,重い心臓病で入院治療を受けたとする虚偽の診断書を同区役所に提出し,海外療養費約87万円をだまし取った疑い。

ジュリップ容疑者は,A被告に詐欺の手口を教え,療養費の半額を受け取っていたという。昨年8月,同国に逃亡しており,同庁は,電話などで出頭を呼びかけるとともに,現地警察に協力を求めて行方を追っている(2013年6月25日16時09分 読売新聞)。

国際指名手配とは何でしょうか?
国際手配とは,国際刑事機構(インターポール)の加盟国が,インターポールに対して行う手続です。
インターポールには190か国・地域が加盟しており,日本及びバングラディッシュも加盟しています。インターポールは,加盟国の中に窓口となる機関を指定しており,その機関のことを国家中央事務局といいます。国家中央事務局は,自国内におけるインターポールの窓口となり,他国の国家中央事務局,事務総局,自国の関連機関等との連絡等を行っており,日本では警察庁が国家中央事務局として指定されています。また,バングラディッシュにおいては,バングラディッシュ警察が,国家中央事務局として指定されています。

インターポールによる国際手配制度として以下の6種類があります。

① 逮捕手配(赤手配) 引渡請求を前提として逃亡犯罪人の身柄拘束を求めるもの
② 情報照会手配(青手配) 国際犯罪者の所在・身元・犯罪経歴等に関する情報を求めるもの
③ 防犯手配(緑手配) 常習的国際犯罪者につき通報して,各国警察の注意を促すもの
④ 行方不明者手配(黄手配) 行方不明者,自救無能力者等に関する情報を求めるもの
⑤ 身元不明死体手配(黒手配) 国内で発見された身元不明死体について通報し,その身元を照会するもの
⑥ 武器警告手配(オレンジ手配)偽装爆弾,小包爆弾その他危険物について,各国警察,公的機関及び国際機関などに警告するもの

今回のジュリップ容疑者に対するものは,上記の内,「赤手配」にあたるものと思われます。

国際指名手配の方法として,各加盟国内に設置されている国家中央事務局に対して直接国際手配書を送付し,当該国内でのみ手配をする方法と,インターポールの事務総局に対して国際手配書を作成し,全加盟国の国家中央事務局に送付し,全世界中で被疑者を指名手配する方法があります。具体的には,インターポールの事務総局を通じて手配する場合には,顔写真や指紋を添えた国際手配申請書を事務総局宛に送付し,事務総局が,手配書発行の妥当性及び宗教性や政治性の有無を判断した後に発行されることになります。また,事務総局を介さずに直接他国の国家中央事務局に手配書を送付する場合には,インターポール専用のコミュニケーションシステムを通じて行うことができ,迅速な手配が可能となります。

いずれの方法が採られたとしても,国際手配書を受理した国家中央事務局は,逃亡犯罪人引渡法等,それぞれの国内法に基づいて被疑者の確保のための国内手配を行います。そして,現地の警察官等が被疑者を逮捕した場合,国家中央事務局を経て,手配書を送付した国に引き渡すことになります。引渡しについても,現地の国内法に基づいて行われますので,引渡の条約を締結していなければ,引渡されない訳ではなく,各種事案に応じて引渡の可否が判断されることになります。

今回の事件は日本国内で発生した事件です。しかし,日本の警察官は海外で被疑者を逮捕することはできません。また,銭形警部のように,インターポールに所属し,世界中どこにでも手錠を持って犯罪者を逮捕できる捜査官も存在しません。そこで,犯罪者を逮捕する権限を有する現地の警察官等に被疑者を逮捕してもらう必要があるのです。

国家中央事務局から被疑者の身柄の引渡しを受けた後は,通常の国内法によって,被疑者を裁判にかけることができることになります。

強制起訴の社長,二審も無罪判決 詐欺事件で那覇支部

2013年7月5日 Filed under:刑事司法,司法制度

こんにちは。今日も雨がしとしとと降っています。雨の降る日は交通事故が多いなどと言いますが,その原因としてすぐに思いつくのは,路面が滑るからですよね。最近では自転車が車道を走ることも多いですが,クロスバイクやロードバイクは特に車輪が細くて滑りやすいですよね。自転車と自動車,あるいは,自転車と歩行者の接触事故は,雨の日こそ気を付けなければなりません。傘を差している歩行者も,足元ばかりを見て歩くのは禁物です。周りの景色を楽しんで見渡せるくらいの余裕をもって,雨の日も快適で安全な通勤・通学を!

さて,今日は「検察審査会制度」の話です。

上場見込みの薄い未公開株の購入を持ち掛けて現金をだまし取ったとして,詐欺罪で強制起訴された投資会社社長(61)の控訴審判決で,福岡高裁那覇支部は18日,無罪とした一審・那覇地裁判決を支持し,検察官役の指定弁護士の控訴を棄却した。

公判で指定弁護士は,上場する見込みは大きくないのに,社長は株価が上がると偽ったと主張したが,判決理由で今泉秀和裁判長は「当時,投資家の間で注目企業と評価されていて,上場に期待を寄せるだけの状況があった。社長が上場すると考えることには根拠があった」として退けた(2013年6月19日日本経済新聞朝刊)。

今回の事件では,指定弁護士が検察官役を担当しています。弁護士と検察官は,刑事事件において相対する関係にあるはずなのに,なぜ?と思った方もいるかもしれません。今回の事件では「検察審査会制度」が利用されたのです。

この制度について,先の陸山会事件関連のニュースで聞いたことがある方も多いかもしれませんね。検察審査会制度は,検察官が行う起訴という公訴権の行使に,国民の意見を反映させようとする目的で設けられたものです。検察官の不起訴処分に不服のある被害者や告訴人等は,検察審査会に申し立てることができます。そして,二度に渡って検察官が不起訴処分をし,検察審査会が不起訴処分を不当だと判断した場合には,それを受けた指定弁護士は,検察に代わって起訴し,公判で立証する役割を担うことになるのです。

検察審査会議は非公開で行われるため審査が不透明であるとか,起訴議決の判断基準も不明確であるなどの批判がされることもあります。しかし,起訴・不起訴は検察官に独占されている制度(国家訴追主義)を採る我が国にあっては,検察の独善に対するチェック機能を果たすものとして有効です。裁判員制度とともに,国民の司法参加を促し,刑事司法に国民の感覚を取り込むという検察審査会制度には大きな意義があると思います。まだ制度導入の初期にすぎないのですから,長期的・継続的に,国民の感覚から刑事司法を捉え直す努力をし続けることが肝要でしょう。

オウム3死刑囚を証人尋問へ…平田被告の公判で

2013年7月3日 Filed under:刑事司法,刑事弁護,司法制度

今日は「オウム事件」の話です。

オウム真理教の目黒公証役場事務長拉致事件などで起訴された元教団幹部・平田信まこと被告(48)の公判前整理手続きが17日,東京地裁であり,斉藤啓昭ひろあき裁判長は,井上嘉浩死刑囚(43)ら元教団幹部の死刑囚3人の証人尋問を地裁の法廷で行うことを決めた。

確定死刑囚が拘置所の外に出て,公開の法廷で証言するのは極めて異例。

検察側はこれを不服として同日,地裁に異議を申し立てたが,棄却された。今後,最高裁への特別抗告も検討するが,地裁の判断が覆ることはないとみられる。

公開法廷での尋問が決まったのは,井上死刑囚と中川智正(50),小池(旧姓・林)泰男(55)両死刑囚。

検察側は,平田被告が起訴された事務長拉致事件,東京・杉並のマンションで起きた爆弾爆発事件の立証のため,3人を証人申請。この際,「拘置所から出て傍聴人の目にさらされれば,死刑囚が精神的に不安定に陥るかもしれない」として,尋問は3人が収容中の東京拘置所で非公開で行うよう要望していた。

しかし,斉藤裁判長は「現時点で,例外的に裁判所外で尋問する必要性が認められない」と判断し,検察側と弁護側に説明した。憲法は裁判を公開の法廷で行うと定め,特に刑事裁判の公開を求めており,この原則に基づいたものとみられる。平田被告の弁護人も,「傍聴席から見えないよう仕切りを置けば,精神的な安定を乱すとは考えにくい」として,公開での実施を求めていた。公判は裁判員裁判で年内にも始まる可能性が高い(2013年6月17日23時38分 読売新聞)。

検察側は,東京拘置所内での証人尋問を求めていました。証人の健康状態や年齢,その他の事情を考慮し,審理を行っている裁判所以外の場所に,裁判官,検察官,弁護人らが出かけて行って行う非公開の尋問のことを「所在尋問」と言います。
今回の東京地裁の決定は妥当なものだと考えます。死刑の瞬間を日々待ち続ける死刑囚の精神状態は,我々の想像を絶するものでしょう。いったん拘置所の外に出れば,生への強い願望が刺激され,予想外の心情の変化が生じてしまうかもしれません。

しかし,公開裁判を受ける権利は,憲法上の権利です。もし刑事裁判が密室で行われ,国家が気に入らない者を国民の監視の届かないところで裁き,葬るなら,それは暗黒裁判であり,専制国家の司法制度に他なりません。死刑囚の心情の安定も重要な利益ですが,憲法上の原則を重要と考えた結果が今回の裁判所の判断であると言えそうです。

ただ,公開の法廷で死刑囚の証人尋問を実施すると言っても,その心情の安定への配慮は必要です。遮蔽措置等の物理的配慮のみならず,関連性のない尋問の排除など,尋問面での配慮も当然必要となるでしょう。

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