2014年5月 のアーカイブ

保釈取消し

2014年5月21日 Filed under:司法制度

PC遠隔操作事件で,保釈になっていた被告人が保釈取消しとなって再び収監されました。
保釈とはどんな制度で,どんなときに取消になるのでしょうか。

保釈は,起訴された後に一定の条件で認められる身柄釈放制度で,起訴前の捜査段階では法律上認められません。
重大事件でないこと,常習性がないこと,証拠隠滅のおそれのないことなどといった条件を満たせば,権利としての保釈が認められます(権利保釈)。
権利としての保釈が認められない場合であっても,特別事情があれば裁判官の裁量で保釈が認められることがあります(裁量保釈)。

保釈条件として重要なことは,保釈決定で定められた住居地(制限住居地といいます)で生活すること,共犯者と口裏合わせをしたり,被害者に働きかけるなどの罪証隠滅工作をしないことなどです。これらの条件に違反すると保釈が取り消されるわけです。

今回のPC遠隔操作事件では,被告人が真犯人ではないことを示す偽装工作をしたということで,罪証隠滅工作を行ったので,保釈が取り消されました。
これはあからさまな保釈条件違反ですが,そのほか,保釈で決められた住居で生活していないといったケースで保釈が取り消されることがあります。
少し古いですが,許永中の保釈取消しがそうでした。韓国に逃亡してしまったのですから。

海外逃亡という大胆な行為に出なくても,例えば,久しぶりに自由の身となって友達のところを泊まり歩き,制限住居地になかなか帰らなかった事例や裁判所の許可を得ないで海外旅行に行ってしまった場合なども保釈が取り消されることがあります。

そのほか,裁判所から重要書類が書留で郵送され,偶々その日不在にしていて郵便局員が不在票を郵便受けに入れたものの,被告人がずぼらな性格で,郵便受けを全然確認せずに,とうとう郵便局から書類が裁判所に戻ってしまった場合などにも,制限住居地に住んでいないのではないかということで保釈取消しが問題となるので(少なくとも裁判官にこっぴどく叱られるので)注意が必要です。

現代の魔女裁判

2014年5月20日 Filed under:司法制度

魔女裁判は中世ヨーロッパにだけ存在するものか。

被告人の認識に関する事実認定を考えてみよう。
認識が問題となる密輸事案にあって,被告人の行動や外形的事実から被告人の認識を推認するという手法がとられる。
間接事実から要証事実を推認するという認定手法自体,否定されるべきではないが,同じ間接事実であっても,裁判官によって解釈が幾通りもあるような推認手法は常に誤判の危険を伴う。

スーツケースの中には古着が入っているからとの説明を信じて海外から運んできた被告人Aは,税関検査にひっかかり,不安な面持ちで,スーツ開披作業を見守り,中から古着とは思えないような粉末状のビニール袋が何袋も発見され,仮鑑定で覚せい剤と判明する。
被告人Aは覚せい剤と告げられてただ茫然として言葉もなかった。

そして裁判で裁判官はこう指弾する。
「被告人Aがスーツケース内の収納物が違法薬物であると分かり,予想外の物であったにもかかわらず,『騙された!』『俺は無実だ!』などと強く主張しなかったのは不自然であり,それは,経験則上,被告人Aが収納物について違法薬物かもしれない,と思っていたからこそそのような行動になって表れたのである。」

一方,被告人Bは,同じような状況の中で,「騙された!」「俺は知らなかった」などと大声で抗議した。

そして裁判で裁判官はこう指弾する。
「麻薬組織から報酬の約束をして違法薬物の運搬を頼まれ,実行した者が,税関検査で発覚した際に,「騙された!」などと抗議するのは自己の罪責を免れようとする者の巧妙な演技であって,そのような言動をもって被告人Bに薬物の認識がなかったとすることは到底できない。」

要するに,黙っていても有罪,「騙された」と叫んでも有罪。
言い換えると,被告人を縛って拘束して海に投げ込んで,浮かんだら魔女だから火あぶり。浮かばなかったら水死してそのまま。いずれもしても社会から抹殺という,中世の魔女裁判と何ら異ならないのである。

日本の裁判官は,実は,「疑わしきは被告人の利益に」という原則を理解していない。
その原因は,日本の刑事裁判の基本原則として「疑わしきは被告人の利益に」という大原則がある,という「知識」しか勉強しておらず,この法原理の深淵にあるもの,この法原理の背後にある「血の色」を見ることができず,「鎖の錆の匂い」を感じ取れず,苦しみに歪んだ顔が発する「無辜の叫び声」を聞く耳をもたないからである。

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