2014年11月 のアーカイブ

北大生らのイスラム国参加計画で警視庁が家宅捜索

2014年11月12日 Filed under:司法制度

今日は,「私戦予備及び陰謀罪」に関する記事です。

イスラム過激派組織「イスラム国」に参加するためにシリアに渡航しようとしたとして,警視庁公安部が北海道大学の学生の関係先などを捜索した事件です。この学生は,東京都内の古書店でシリア行きの求人広告を見て,応募したとみられることが新たに分かりました。
この事件は,北海道大学を休学中の26歳の大学生らが「イスラム国」に戦闘員として加わるためシリアに渡航する計画を立てた刑法の「私戦予備・陰謀」の疑いで警視庁公安部による事情聴取を受け,関係先数か所が捜索されたものです。
任意の事情聴取に対し,大学生は「『イスラム国』に加わり,戦闘員として働くつもりだった」と話しているということです。
警視庁などへのその後の取材で,大学生は,東京・JR秋葉原駅近くの古書店でシリア行きの求人広告の貼り紙を見て,応募したとみられることが新たに分かりました。
貼り紙には,「求人 勤務地シリア」などと記されていたほか,「新疆ウイグル自治区」「暴力に耐性のある方」という記載もありました。
「ただの求人広告ですね。シリアに行くっていう求人。(求人を見て来た人は)8月とかに1人いたとか聞いた」(古書店店員)
この大学生は,7日,成田空港を出発し,トルコ経由でシリアに入る予定だったということで,航空券も用意していました。また,今年8月にもシリアに渡航する計画を立てていましたが,何らかのトラブルで断念したことも新たに分かりました。
「(一緒に住み始めたのは)2か月前くらい 。最近イスラム国いろいろとあったので,話題になったのを一緒に見たりして」(同居人の男性)
警視庁公安部は関係先の捜索で大学生のパスポートなども押収していて,この大学生以外にも「イスラム国」に参加しようとした動きがなかったかなど事件の全容解明を進める方針です。(2014年10月7日11時10分 TBSNewsi)

 私戦予備及び陰謀罪とは,「外国に対して私的に戦闘行為をする目的で,その予備又は陰謀をした者は,3月以上5年以下の禁錮に処する。ただし,自首した者は,その刑を免除する。」という罪で,刑法93条に規定があります。
 この罪における保護法益は我が国の国際関係的安全であり,章立ても「国交に関する罪」となっています。国民が一部でも外国に対して戦争をしかけるようなことがあれば,我が国と諸外国との関係性は修復不可能なものになるおそれさえあります。
 私戦の処罰は予備・陰謀のみであり,既遂犯処罰規定や未遂犯処罰規定はありません。これは,私人が外国と戦争を実際に行うことは考えられないだろうという理由で,設けられていないのだと考えられています。ですが,仮に実行をした場合には刑が科されないということではなく,殺人罪,放火罪,強盗罪,騒乱罪など,刑法の一般規定が適用されるというのが一般的な理解になっています。
 実際にどのような行為が私戦予備・陰謀に当たるかといいますと,①外国に対して,②私的に戦闘行為をする目的で,③その予備又は陰謀をすることです。①の「外国」とは国家としての外国であり,外国の一地方へ限定した武力行使や特定の外国人組織に対する攻撃は含まれません。②「私的に戦闘行為をする目的」とは,日本の国家的意思とは関わりなく勝手に,外国に対し武力行使を目的とすることです。③「予備」とは私的な戦闘行為を行うための準備行為をいい,武器確保・食料調達・資金調達のみならず,兵の準備も含まれます。「陰謀」とは,私的な戦闘行為の実行のため,二人以上の者が謀議・画策をする行為をいいます。
 本件について見てみたいと思います。まず,イスラム国はイラク・シリアとの間で戦闘をしているので,ここで戦闘員として働くことは,①「外国」に私的に戦闘行為を目的としているといえます。次に,日本はイスラム国を援助して武力行使をするような意思は持っていませんので,②についても満たしているといえます。また,兵として志願することは兵の準備若しくは謀議に加わるということになりますので,③予備か陰謀のいずれかには該当することになります。
 また,刑法3条には日本国民が日本国外にて犯した場合においても,適用される日本刑法が列挙されていますが,93条はこの中には挙げられていません。つまり,国外にて戦争の準備をした場合には,本条は適用されないことになります。これは,上述の本条の保護法益からも,国外にて戦争の準備をした場合には,日本の意思とは思われないであろうことから,国外犯を処罰しないという趣旨だと読み取れます。しかし,日本国民が国外にて戦争の準備をした場合には,我が国の国際関係的安全という保護法益を犯さないのかというと,疑問が残るところではあります。
 最後に,ただし書には自首をした場合には刑の免除がなされることが規定されています。刑の免除とは,刑を軽くする刑の減軽と異なり,全く刑を科さないというものです。それも,刑を免除「できる」ではなく,免除「する」という規定のため,自首があったら必ず免除をしなければなりません(これを必要的免除といいます)。本条における犯罪の,自首をしたときの特典は,他の犯罪類型の中でも非常に大きいといえます。これは,自首に大きな特典を与えることによって,私戦の実行を未然に防止しようとする刑事政策的規定であるということができます。

危険ドラッグ:成分不明 即座に有害判定できる検査

2014年11月6日 Filed under:司法制度

今日は,「危険ドラッグの検査」に関する記事です。

 成分不明の危険ドラッグが、人体に有害かどうかを即座に判定できる検査手法を、国立精神・神経医療研究センターのチームが開発した。従来の検査キットは特定の化学物質の有無を調べるため、構造を一部変えたドラッグには反応しなくなる難点があった。生きた細胞を使った新たな手法では構造に関わらず物質の毒性が分かり、規制の網がかかっていないドラッグの素早い販売禁止につなげられると期待される。
 流通している危険ドラッグで最も多いのは「カンナビノイド系」と呼ばれる化学物質を含むタイプ。大麻と似た成分で、毒性は数十倍ある。現在、この系統で約800種類が販売や所持などを禁じた指定薬物になっているが、比較的簡単に構造を変えた薬物を合成できるため、規制対象外の新物質が次々現れる「イタチごっこ」が続いている。
 同センターの舩田正彦・依存性薬物研究室長らは、合成したカンナビノイドが脳内の特定のたんぱく質(受容体)と結合して幻覚や錯乱などを引き起こすことに着目。ハムスターの細胞を遺伝子操作し、受容体が刺激されると緑色に光る細胞を作製した。これにカンナビノイドを含む溶液をたらすと、作用(毒性)が強いほど明るく光るという。
 新たに出回った危険ドラッグを法規制するには、まず化学物質を特定しなければならず、解析には半月〜数カ月かかる。6月の池袋の乗用車暴走事件でも使われたドラッグの緊急指定には3週間かかった。この手法を使えば、物質の構造は不明でも人体に有害であることは確認できるため、未承認薬として回収などがしやすくなる。厚生労働省監視指導・麻薬対策課は「早急な規制が必要なドラッグを見極めるのに有効だ」と期待する。
 今後、各都道府県の衛生研究所に導入されれば警察の早期取り締まりに貢献すると期待される。しかし、遺伝子組み換え細胞を扱うだけに、十分な管理体制と機器の整備が必要になる。
 舩田室長は「細胞を使わずに同じ原理で検査できるキットを開発し、どこでも使えるようにしたい」と話す。(2014年09月03日 07時00分 毎日新聞)

 人体に有害で,危険な薬物であるのなら法規制を待たず,所持・使用を罰していけば良いではないか,と考える人もいるかと思われます。確かに,記事にあるような「いたちごっこ」の状態が続いており,さらに高い可能性で今後取り締まりの対象となる物質であれば,そのように考えるのも理由があることかもしれません。しかし,刑法には,罪刑法定主義や遡及処罰の禁止という原則があります。これらの根拠は憲法31条,39条に規定があります。罪刑法定主義とは,法が規定することによって禁止される行為をした場合にのみ処罰されるというもので,遡及処罰の禁止とは,行為時に適法だった(処罰規定がなかった)行為は,事後の法律の規制によって遡って処罰することは出来ないというものです。いずれも,国民の自由を広く保障した反面,一定の行為は取り締まる,という自由主義の思想から認められるものです。
 このような憲法の大原則がある以上,危険だから,悪いことだからという理由で,むやみに刑事責任を問うことは出来ないのです。法律の制定の方で先回りして,取締対象薬物を増やしていくことも考えられますが,記事にもあるとおり,薬物の配合を少し変えただけで取締対象から外れてしまうのでは,実効性がありません。
 結局,「いたちごっこ」を続けていく他ないのかもしれませんが,薬物の特定のもと迅速な法制定が実現できるようになれば,社会における薬物の規制も期待できるものとなっていくことでしょう。

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