児童ポルノとCG加工

2013年8月14日 Filed under:事件,刑事司法

今日は「児童ポルノとCG加工」のお話です。

コンピューターグラフィックス(CG)で児童ポルノ画像を製造し,インターネットで販売したとして,警視庁は7月11日,岐阜市正木,デザイナーT容疑者(52)を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供目的製造など)の疑いで逮捕したと発表した。

CGの児童ポルノの摘発は全国で初めて。

同庁幹部によると,T容疑者は2009年12月,約30年前に雑誌に掲載された少女の裸の写真をCGで加工し,昨年12月,島根県の男性に約3000円でダウンロードさせた疑い。

T容疑者は「CGなので販売しても大丈夫だと思った」と供述している。しかし,同庁は,CGによる画像でも実在の少女を基に描写すれば児童ポルノにあたると判断した(2013年7月11日12時42分 読売新聞)。

単純所持罪に関する議論など,最近は「児童ポルノ」を巡る問題がよく取り上げられています。児童ポルノと言ったときに,おそらく皆さんが想像するのは,ポルノ写真だと思います。ですが,今回問題となったのはポルノ写真そのものではなく,ポルノ写真をCG加工したものです。一見すると,CG加工した物全般にまで「児童ポルノ」の解釈を拡大したようにも思えますが,そうではありません。せっかくですので,少し「児童ポルノ」の対象範囲について考えてみましょう。

「児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,①児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態児童の姿態,②他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの,または,③衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの,を視覚により認識することができる方法により描写したものをいいます(児童買春・児童ポルノ禁止法2条3項参照)。

そして,ここでいう「児童」とは,18歳未満の男女をいいます。「その他の物」には,写真やビデオテープなどのように例示されている物に類する物をいうものと考えます。

そうすると,絵やCG加工した物は,明示こそされていないものの,「その他の物」に含まれて規制対象となる可能性があるのです。特に,実在する児童を特定可能な程度にリアルに描写した絵などは,「その他の物」に該当する可能性が高くなります。今回問題になった対象物は,約30年前に雑誌に掲載された実在の少女の裸の写真をCG加工した非常に精巧な物のようで,写真に類する物として「その他の物」に該当すると判断されたのでしょう。実在している人物の存在が判断の分かれ目となったようですので,写実的なCG加工物であれば,たとえ空想の人物であっても処罰対象となる,とまでは考える必要はないのです。

このように考えると,空想の人物でも実在世界に存在する誰かに似ていることもあるのではないか?空想の人物であってもリアルで性欲を刺激するようなものは規制対象にしても良いのでは?という反論も出てきそうです。この反論は妥当でしょうか。

児童ポルノ法と一見すると似ている,青少年保護育成条例は,「有害指定図書」の流通を制限しています。その規制の趣旨は,心身の未成熟な青少年が,著しく性的感情を刺激するような有害図書を閲覧することで,健全な育成を阻害されることを防止する点にあります。仮に,児童ポルノ法が,青少年保護育成条例と同じ趣旨で「児童ポルノ」の流通を禁ずるのであれば,児童一般の健全な育成を保護するために,空想の人物であっても児童の性的感情を著しく刺激するようなリアルなものは,規制の対象とする方が合理的なように思います。

しかし,児童ポルノ法は,直接的には,児童ポルノに描写された児童の保護を目的とするものであり,間接的に,児童一般を保護することをも目的とするものと解されています。したがって,モデルとされた児童本人を保護するという観点から,「児童ポルノ」に該当するためには,モデルとされた児童が実在することが必要だと考えられているのです(大阪高裁平成12年10月24日)。また,実在の人物と「リアルな空想の人物」との境界線は極めて曖昧です。そうすると,侵害されるべき具体的な利益を有しない空想の人物についてまで保護を拡大する必要はないのであって,むしろ表現の自由の保護を優先させる方が妥当ではないか,という価値判断が働きます。このように,児童ポルノ法と青少年保護育成条例とは,規制の趣旨が異なる以上,導かれる結論も異なるのです。以上より,上記反論は妥当ではないものと考えます。

「児童ポルノ」を規制すれば,作成者の表現の自由を一定程度制限することは否めませんが,かといって,安易な制度批判に偏らないよう注意しなくてはなりません。将来,もしも表現の自由が著しく侵害された場合に建設的な議論ができるよう,日々冷静に警察・検察の立ち位置を分析し議論していく必要があるでしょう。

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