ピンクパンサー逮捕・送還

2010年8月16日 Filed under:司法制度

銀座の宝石店の強盗傷害事件の容疑者として,国際窃盗団”ピンクパンサー”のメンバーがスペインで身柄を拘束され,日本に送還されました。
スペインと日本との間には犯罪人引渡条約は締結されておらず,外交ルートを通じての送還の実現でした。
実は,日本が現在,犯罪人引渡条約を締結している国は,アメリカと韓国の2国だけです。そして,中国と条約交渉中です。この締約国数は非常に少ないです。アメリカが100か国以上との間で条約を締結しているのと比べればその少なさは歴然としています。
どうして,少ないか?

いかなる場合に犯罪人を要請国に引き渡すかに関する考え方として,2つの考え方・法制度があります。ひとつは,条約がある国に対してのみ犯罪人を引き渡すという条約前置主義を採る国のグループ(Aグループと言うことにします)と,必ずしも条約がなくても引き渡しを認める国のグループです(Bグループということにします)。アメリカなど英米法の国々はAグループに属し,日本はBグループに属します。日本は,条約を締結していない国から犯罪人の引き渡しを要請された場合にあっても,一定の条件が満たされれば引き渡す運用をしているのです。ですから,多くの国々とわざわざ条約を締結する必要がないという事情がありました。しかし,その逆に,日本で犯罪を犯した者が海外に逃亡した場合,もし逃亡先の相手国がAグループに属する国の場合,引き渡しを実現することは不可能になってしまい,不処罰といった不正義の結果となります。
今回,ピンクパンサーはスペインから移送されました。偶々,スペインがBグループに属する国だったからです。これがもしAグループに属する英国のような国であったならば,日本と英国との間で犯罪引渡条約は締結されていないので,引き渡しは実現しなかったのです。
今後,このようなグローバルな犯罪組織に対抗するためにも,犯罪人引き渡し条約の締結国を増やしていく必要性は大きいでしょう。

刑事事件 弁護士 中村勉

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