テアトルポー

2016年8月4日 Filed under:司法制度

高校時代を郷里函館で過ごし,進路のことなど何も考えもせずに柔道の部活で汗を流し,
その当然の報いとして大学受験不合格,札幌で浪人生活を強いられることになった。

それほど裕福でもない親に頼み込んで,何とかお金を出してもらって札幌の予備校に通い,寮生活を始めたはいいが,根っからの人付き合いの悪さからからか,友人など一人もできるはずもなく,そうは言っても受験参考書を友人にする気にもならず,毎日純文学小説をむさぼるように読み,しかし,ときどき,札幌郊外の丘に寝そべっては,教室の斜め左向かいに座っていたショートヘアの子のことを思い,高く,透き通った空を見ていた。

当時の楽しみは,予備校の授業をさぼって観に行く名画座の映画だった。
それは札幌駅の地下にある「テアトルポー」という名画座だ。
250円で観ることができたのだ。
寅さん,ロッキー,道,ティファニーで朝食を,ローマの休日,サタデイナイトフィーバー,ミスターグッドバーを探して。。。
大抵の名画はそこで観た。
たぶん,疑似人生経験もテアトルポーで得られたに違いない。

大学を卒業して,司法試験に合格して司法修習生となり,郷里の函館地方裁判所に配属になったとき,
札幌への出張で,同期の染谷君(今は裁判官)と二人で,懐かしい,懐かしい札幌の街を歩いた。
でももう寮も,テアトルポーも,どこにもなかった。

もうあれから10年も経っていたのであった。

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