ご相談事例

11.ストーカー被害に遭っているとき

恋愛関係にあった男女の関係が破綻し,例えば,女性が別れ話を相手の男性に切り出したとします。男性は,その女性がかつて自分を愛してくれたこと,優しかったことを忘れられません。それなのに,今,目の前の彼女は信じ難いほど自分に冷淡で,何を言っても耳を傾けてくれません。まるで壁と話しているみたい。こんなとき,もしこの男性に未成熟な幼児性と粘着質な傾向が備わっている場合,情熱的な恋愛感情は激しい憎悪に変わり,自己抑制が利かなくなってしまいます。こうして,「ストーキング」,つまり「つきまとい行為」が始まり,さらに,傷害事件,殺人事件へとエスカレートしていくことがあります。

平成12年5月18日に、国会において「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」が成立し、同年11月24日から施行されました。ストーカー事例にあっては,従前は,「脅迫罪」などで対応する以外に方法はありませんでした。それ以前の段階の,例えば「待ち伏せ」,「監視」行為などに対して警察が何らかの介入をすることは,逆に,私的行為への公権力介入であると非難されかねなかったのです。しかし,ストーカー行為は,それがエスカレートして重大な殺傷事件に発展する危険性を秘めていることから,これを規制する必要性が認識され,桶川女子大生ストーカー殺人事件を契機に立法化の機運が高まり,ストーカー規制法成立に至ったのです。

この法律では、ストーカー行為等を処罰するための必要な規制と、被害者に対する援助等を定めています。

この法律による規制対象となる「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意感情又は、それが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、その特定の者又はその家族に対して行う行為を次のとおり、8つに分類しています。

  1. つきまとい・待ち伏せ・押しかけ
  2. 監視していると告げる行為
  3. 面会・交際の要求
  4. 乱暴な言動
  5. 無言電話・連続した電話・ファクシミリ
  6. 汚物などの送付
  7. 名誉を傷つける
  8. 性的しゅう恥心の侵害

そして、ストーカー行為とは、上記の「つきまとい等」に分類されている行為を同一の者に対して、繰り返して行うことを規定しており、罰則を設けてあるのです。

それでは,こうした「つきまとい行為」があった場合,被害者であるあなたはどのように対応すべきでしょうか。二つのアプローチがあります。

まずは,被害者であるあなたが、相手を「告訴」して直ちに処罰を求めることができます。この場合の処罰については,6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金という処罰規定が適用されます。

二つ目のアプローチは,警察に相談し,警察を通じて相手に対し,「警告」,さらに「禁止命令」といった処分をまず最初にしてもらう,というアプローチです。どうして,第一のアプローチのほか,このような警察を通じての段階的対応手段を設けたかというと,被害者によっては,相手はかつて自分の恋人であったし,二人で楽しい時間を過ごしたこともあったし,思い出もある,そういう相手をいきなり刑事告訴して処罰してもらう,というのは忍びないと思うこともあるのです。被害女性にとっては,相手がつきまとい行為を止めてくれればそれでいいのです。もし,逮捕や刑務所に入れるという強硬手段を用いずに,警察による警告や禁止命令などによって,つきまとい行為を止めてくれるのなら,それに越したことはない,というケースがほとんどではないでしょうか。そのような被害者の心情を慮って,ストーカー規制法は,被害者にその二つの対応手段を選択的に用意したのです。

それでは,第2のアプローチについて少し詳しく説明します。

あなたが、つきまとい等に該当する行為を受けたら、「自宅の最寄り警察署」に相談しましょう。「この程度だから」などと我慢したりしていると、その行為はエスカレートしていきます。初期の段階でも、一度相談に行っておけば、その記録が警察において「相談受理簿」というものにオンライン登録されるシステムになっており、以後の相談の際にも既成事実として残りますので、相談者側にとっても後々有利に機能するはずです。

警察では、ストーカー被害の相談を受けると、ケースや度合いにより対応も若干異なりますが、まずあなたの申し出によって、「つきまとい等」を繰り返している相手に対し、警察署長名をもって「ストーカー行為をやめなさい」と申し入れをします。これを「警告」と言います。

更に、この警告に従わない場合は、東京であれば東京都公安委員会の名の下で、「その行為をやめなさい」と伝えます。これを「禁止命令」と言います。 相手方が、この禁止命令にも従わない場合は、警察は,被害者の告訴を得て相手を逮捕して処罰するのです。この命令違反のストーカー行為に対しては,1年以下の懲役または、100万円以下の罰金という処罰を受けることになります。警察の禁止命令違反にかかるストーカー行為の方が,第1のアプローチで述べた,直接刑事告訴して処罰を求める場合の刑罰(6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金)よりも重い処罰規定になっていますが,その理由は,「警告」,「禁止命令」という段階的な対応をしたにもかかわらず,これを無視してストーカー行為を継続したという行為の悪質性に着目してのことです。

もっとも,実際のところは、この警察による「警告」に基づき、約90パーセントが、その後のストーカー行為を止めている実情があります(「警視庁ホームページ「ストーカー規制法」より)。

以上のように,ストーカー規制法は,被害者に二つの対応方法を用意しました。このうちどちらの対応方法をとるべきかは,様々な事情を総合的に検討して慎重に判断する必要があります。時には,警察による「警告」,「禁止命令」といった段階的対応ではなく,いきなり刑事告訴して逮捕してもらった方がさらなる重大犯罪を抑止する効果がある場合があります。ですから,あなたが警察に相談に行く前に,専門の刑事弁護に相談することは意義があります。被害者によっては,相手のことを慮って第2のアプローチ,つまり,警察の段階的対応を手段として選択することですら躊躇することがあります。彼氏を警察沙汰に巻き込みたくない,という気持ちがある場合です。そのような場合には,いわば,“第3のアプローチ”として,弁護士対応を先行させる,ということも考えられるのです。弁護士名による内容証明通知書によって相手のつきまとい行為を中止させることもできるのです。

NICDでは,刑事事件の経験が豊富な元検事の代表弁護士のほか,元警視庁警察官としてストーカー相談に従事したこともある専門スタッフを揃えておりますのであなたを力強くサポートすることができます。

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