少年事件Q&A|刑事事件に強い元検事弁護士が強力対応

少年事件Q&A

刑事弁護コラム 少年事件Q&A

目次

Q.少年法とはなんですか

 少年法は,「少年の健全な育成を期し,非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに,少年の刑事事件について特別の措置を講ずること」を目的としています(少年法1条)。
 少年は,人格の発展途上にあり,精神的に未熟で,周囲の環境の影響を受けやすいことから,処罰ではなく「性格の矯正」と「環境の調整」といった教育的手段によって再非行防止を図る方が効果的といえます。また,たとえ非行を犯したとしても,深い犯罪性に根ざすものではないことから,刑罰による社会的責任の追及は妥当しません。
 そのため,その是非はともあれ,現行法は,少年に対して,刑罰ではなく教育的処遇を行うことを原則とする制度を採用しています。
 このような教育主義の観点からすれば,非行を犯した少年に対して,できるだけ刑罰によらずに,保護処分やその他の教育的手段によって非行性の除去を図ることに努めるべきで,これを保護優先主義といいます。
 そして,教育・福祉的措置を含め少年に適切な処遇選択を行うことを手続面から保障するために,少年法は事件を家庭裁判所に送致すべきという全件送致主義を採用しています(41条,42条1項)。
 もっとも,この例外として,検察官送致が定められており,この場合には教育的処遇ではなく通常の刑事事件と同様刑罰を科すことを定めています。
 したがって,この点において教育主義は修正され,通常の刑事事件と同様司法的機能が図られているものといえます。

Q.全件送致主義とはなんですか

 通常の刑事事件では,捜査機関が被疑者を逮捕・勾留した後,犯罪の嫌疑がある場合には公訴提起という手続がなされ,犯罪の嫌疑がない場合には不起訴処分,あるいは公訴提起がふさわしくない場合と検察官が判断する場合には起訴猶予処分といった事件処理がなされます。起訴するか否かについては検察官の裁量の余地が極めて大きい点に特徴があります。
 これに対し,少年法は,全件送致主義を採用しており,全ての事件について家庭裁判所へ送致することを規定しています。その判断に際しては,捜査機関に裁量の余地を認めていません。捜査機関は,被疑少年を逮捕後,最大20日間の勾留を終えた後,初めて検察庁から家庭裁判所に送致しています。仮に,捜査の段階で当該犯罪についての嫌疑が認められない場合であっても,「ぐ犯少年」に該当する場合には,すべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。したがって,犯罪の嫌疑の有無に関わらず,逮捕後20日間の勾留を終えると,家庭裁判所に送致され,審判に付されることになるのです。
 家庭裁判所では,審判に付すべき少年について調査をしなければなりません(8条1項後段)。その際,医学,心理学,社会学,教育学等の専門的知識を活用すべきものとされています(9条)。家庭裁判所には,調査のための専門機関として,家庭裁判所調査官や医学的診断を行う医務室が設けられています。
 少年事件の背景には,少年の資質や生育環境等様々な事情があります。少年審判の目的が「少年の健全育成」にあることから,少年が非行に陥った原因を探求してそれを解消,除去するための方策を検討する必要があります。そこで,各分野における専門家の知見を用いるべく,家庭裁判所に調査官が設けられています。

Q.国選付添人制度とは何ですか

 (1)国選付添人と私選付添人の違いは何ですか?
 国選付添人も私選付添人も,その職務や権限に違いはありません。しかし,国選付添人は国が選任する付添人であり,国選付添人名簿に登録された弁護士の中から自動的に割り当てられるという仕組みになっています。そのため,私選付添人のように,少年や,そのご家族が自ら弁護士を選択することはできません。また,現行法上,国選付添人対象事件は限定的であり,国選付添人が選任されるケースは極一部なのが現状です。

 (2)国選で付添人が選任される対象事件とはどのようなものですか
 平成12年の少年法改正により,少年審判への検察官関与制度(少年審判に検察官が参加する制度)が導入されるに当たり,検察官関与事件は必要的付添事件とされ,私選付添人が存在しない場合には,裁判所が必ず国選付添人を選任することとなりました(少年法22条の3第1項)。
 また,平成19年11月からは,①故意の犯罪により被害者が死亡した事件,②死刑又は無期もしくは短期2年以上の懲役もしくは禁錮に当たる罪の事件について,裁判所の判断で国選付添人を選任することができるようになりました(同法22条の3第2項)。
 さらに,平成20年改正によって,被害者の審判傍聴制度ができたことに伴い,被害者が審判傍聴の申出をした事件について,少年に付添人が選任されていない場合には,必ず国選付添人が選任されるようになりました(同法22条の5)。
 現行法上,国選付添人が選任されるケースは以上の通り限定的であり,付添人を付けるためには,積極的に私選付添人を選任するか,法律援助制度の利用を検討する必要があります。

 (3)すぐに弁護士費用を用意できない場合の援助制度はないのですか
 国選付添人対象事件でないために国選付添制度を利用できない場合があります。また,国選付添人制度は勾留決定後に選任手続が始まるので,逮捕後,勾留決定までの72時間は,どの事件であっても国選付添人はつきません。ですから,これらの場合には私選付添人をつけなければなりません。しかし,一方で,十分な資力がなく,私選で付添人を依頼することもできない場合には日本弁護士連合会の少年保護事件付添援助事業の利用が可能な場合があります。
 この制度は,日本弁護士連合会の会費を財源として,家庭裁判所に送致された少年のために付添人活動を行う弁護士の弁護士費用を援助する制度です。ただし,事件終了後に費用を償還しなければならない場合があります。
 なお,保護者が付添人選任に反対していても,少年本人が選任を希望している場合には,この制度の利用申込みが可能です。

Q.少年事件では,少年の親は,どのような役割を果たすのでしょうか。また,弁護士さんは,少年の親のケアもしてくれるのでしょうか

 少年事件では,少年の保護者も重要な役割を果たします。そのため,付添人は,少年本人との面会と同様に,保護者と面談や電話で密にコミュニケーションを取ることが重要です。
 少年事件では,少年の生育歴や家族史が事件を考える上で大事になってきますので,保護者から少年の生育歴や家族史を聞き取ることになりますが,この際に少年と保護者との関係性等についても聞いていきます。なぜかと言いますと,少年と保護者の関係が良好な場合には,生育歴や家族史の話が少年側も保護者側もあまり変わらない話になりますが,両者の関係が良好でない場合には,お互いの立場で全く異なる話になることもあるからです。

 また,少年事件では,少年だけでなく保護者も精神的に傷つき,苦しむことが多く見受けられます。そして,少年事件においては,保護者の活動も多岐にわたるので,保護者は肉体的にも疲弊してしまいます。
 具体的な保護者の活動としては,少年が学校に通っている場合には,学校への対応がありますし,少年が仕事をしている場合であれば,勤務先への対応があります。また,警察や検察,裁判所から連絡が来ることもあり,保護者は少年事件が終了するまで,少年のために奔走することになります。
 もちろん,このような保護者の活動は,保護者に少年の問題点を知ってもらうために必要です。そして,少年にとっても,保護者が自分のために頑張ってくれている姿を見ることは,更生の気持ちを促進させることにプラスに働きます。しかし,そうは言っても,保護者によっては,仕事が忙しいこともあって,精神的にも肉体的にも疲弊して,逆に参ってしまう方もいます。こういうことにならないように,付添人は,少年だけでなく保護者の話も十分に聞いてあげて,精神的負担を少しでも和らげてあげる必要があります。時には,保護者が事件から少し離れた話をすることもあるかと思いますが,そのような場合にも,付添人は保護者の方に寄り添っていく必要があります。
 また,多くの保護者は,これまでに警察や検察,裁判所といった機関の人間と話したことがありませんし,少年事件の手続をいまいちよく分かっていません。このような状態では,いろんなことに不安を感じてしまうのも当然ですから,付添人は,警察や検察,裁判所からの連絡や調査官との面談などに対して,どのような姿勢で臨むべきかを保護者に詳しくアドバイスしてあげる必要があります。

Q.少年院と少年刑務所はどのように違うのですか。少年刑務所に行く場合というのは,どのような場合なのでしょうか

 少年院とは,家庭裁判所から保護処分として送致された者及び少年法56条3項の規定により少年院において刑の執行を受ける者を収容し,これに矯正教育を授ける施設のことをいいます(少年法1条)。
 少年院は,一般的に4種類に分けられており,初等少年院,中等少年院,特別少年院,医療少年院があります。
 初等少年院は,心身に著しい故障のない,おおむね12歳以上16歳未満の者が収容される少年院です。中等少年院は,心身に著しい故障のない,おおむね16歳以上20歳未満の者が収容される少年院です。特別少年院は,心身に著しい故障はないけれども,犯罪的傾向の進んだおおむね16歳以上23歳未満の者が収容される少年院です(ただし,16歳未満であっても,受刑者は収容することができます。)。医療少年院は,心身に著しい故障のある,おおむね12歳以上26歳未満の者が収容される少年院です。
 これらの区分は,入院時の少年の年齢を基本としつつ,犯罪的傾向が進んでいるか否か,医療的な対応が必要か否かを加味して分けられます。
 少年院では,保護処分となった少年の更生を図るために,生活指導,職業補導,教科教育,保健・体育,特別活動を行っています。
 少年刑務所とは,16歳以上20歳未満の受刑者を収容する刑務所のことをいい,全国に7つの施設があります(函館少年刑務所,盛岡少年刑務所,川越少年刑務所,松本少年刑務所,姫路少年刑務所,奈良少年刑務所,佐賀少年刑務所)。
 少年刑務所は,保護処分に付すよりも刑罰を科す方が適切であると家庭裁判所に判断された少年が,刑事裁判にかけられて実刑判決を受けた場合に収容される施設です。
 このように,少年院と少年刑務所は,少年が何かしらの刑事事件を起こしたことによって収容される施設である点では共通していますが,施設の存在する目的という点では大きく異なります。
 少年院は,上記のとおり,少年の更生及び教育に重点が置かれていますが,少年刑務所は,基本的に成人が収容される刑務所と同様に,刑罰として刑務作業などを行うことになります。ただ,少年であることにも配慮はなされており,成人とは異なる教育的処遇も取られています。

Q.少年院での生活はどのようなものですか

 少年院の矯正教育は,在院者を社会生活に適応させるため,その自覚に訴え規律ある生活の下,教科教育,職業補導,適当な訓練及び適当な医療を授けるものとされています(少年院法4条)。
 具体的には,教科教育では,少年の年齢に応じた義務教育が行われ,学力テストの実施や通信教育,さらには高等学校卒業程度認定試験の受験も行われることもあります。職業補導では,溶接,木工,土木建築,建設機械運転,農業,園芸,情報処理,介護サービス,接客応接等が行われており,資格・免許取得に向けた指導も行われることがあります。また,保健・体育及び特別活動としては,社会見学や社会奉仕活動等の院外教育活動,体育祭・文化祭等の行事,各種クラブ活動が行われています。
 少年院での生活は,入所当初は個室寮での生活から始まり,その後,調査等を経て集団生活へ移行していきます。教育活動は教室や多目的ホールで行われ,それぞれの集団寮の居室は施錠されず,共同の空間となっています。そのため,少年は集団での生活の中で,社会内で生じる種々の困難を乗り越え,健全な社会人として生きていくための教育が行われているといえます。
 なお,少年院に在院中,少年院長は,近親者その他適当な者に対し,通信又は面会をするように勧めなければならないとされています(少年処遇規則56条)。多くの少年は,退院後に親やその他近親者のもとに帰ることになるため,連絡が重要になるためです。そのため,少年院には面会を実施するための部屋が設けられ,矯正教育に害がない場合には許可されることになります。

Q.少年が事件を起こした時には,名前や顔などが報道されるのでしょうか

 少年法においては,61条に以下のような規定があります。
 「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については,氏名,年齢,職業,住居,容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」
 このように,少年事件においては少年本人を特定できる推知報道は禁止されています。なぜこのような規定が置かれているかというと,少年には,憲法や子どもの権利条約で,成長発達権やプライバシー権が保障されているため,少年の成長発達を阻害するおそれのある推知報道を排除しなければならないからです。
 しかし,この点については,少年を保護しすぎであるとの批判や国民の知る権利を害しているとの批判もあります。

 ただ,知る権利についても一定の制約はありますし,少年のプライバシー等の人権も重要な人権であることに間違いはありません。大人が身体拘束された後に,報道機関がその名前や顔写真を報道することを直接禁じる規定がない中,それにもかかわらず,少年法61条で推知報道が禁じられている意味は非常に大きいものといえます。そう考えると,少年を特定する報道を禁じた少年法61条は,少年の成長発達権やプライバシー権と国民の知る権利とを調整するものであり,少年の重要な人権との調整のための,「知る権利」の内在的制約だと考えられるのです。

Q.少年が事件を起こした場合,学校に知られてしまうのでしょうか。弁護士さんには,学校との対応もお願いできるのでしょうか。また,学校を退学処分となった場合には,弁護士さんはどのような活動をしてくれるのでしょうか

 少年が何らかの事件で逮捕された場合,警察から少年が所属する学校に対して当該事件に関する連絡が行くことがあります。これは,警察・学校相互連絡制度によるものです。
 この制度によって,少年の事件が発覚した場合,それまで少年が所属していた学校は,事件の軽重にもよりますが,少年に対して退学などの重い処分を下す可能性が高くなります。
 そんな時に,弁護士は学校側と交渉し,少年がそれまで所属していた学校に復帰できるように環境調整を行っていきます。具体的には,少年の事件の性質や家庭裁判所における最終的な処分の見通しなどを学校側に伝えることで,学校側の過剰な反応を抑制していきます。そして,付添人は,校長や担任と面談し,少年を学校で積極的に受け入れるよう要請していきます。学校側の協力を求められる場合には,校長や担任に受け入れる旨の上申書を書いてもらうなどし,裁判所に提出することもあります。
 このようにして,弁護士は少年の社会復帰を学校という環境面からも支援していきます。
 もっとも,このような活動をしても,少年が退学処分を受けてしまうことがあります。そのような場合には,弁護士が少年のために新しい学校を探すことになります。基本的には,通信制の学校になることが多いとは思いますが,少年の性格等を考慮し,少年にあった学校で,転入できる可能性が高い学校を弁護士がアドバイスしていきます。最終的に転入する学校を決定していただくのは保護者の方になりますが,学校を決める際の指針については,弁護士からも示させていただきます。
 通信制の学校については,学生一人一人のペースに合わせてくれたり,学校での日常を尊重した融通の効く教育システムを取ってくれたりするところも多く存在するため,事件後に少年が勉強を再開することが苦になりにくいです。また,登校する日数についても,週1日から週5日まで自由に選べる形態を取っている学校も多いので,少年の生活リズムに合わせた勉強環境を構築することができます。

Q.少年事件と成年事件の捜査の違いはありますか

 少年事件であっても,成人事件と同様,捜査段階では基本的に刑事訴訟法が適用されます(40条)。犯罪少年の事件では,成人と同様,捜査機関が捜査することになり,少年は被疑者として逮捕・勾留されることになります。したがって,警察により逮捕された場合には,検察官への送致手続を行うまでの48時間,警察から送致を受けた後,検察官が裁判所に勾留請求するまでの24時間について,少年の身柄は拘束されることになります。
 しかしながら,少年法では,勾留に際して,成人の場合とは異なる規定が設けられており,「検察官は,少年の被疑事件においては,やむを得ない場合でなければ,裁判官に対して,勾留を請求することはでき」ず(43条3項),裁判官においても,「勾留状は,やむを得ない場合でなければ,少年に対して,これを発することはできない」(48条1項)と規定されています。また,勾留場所についても,少年鑑別所とすることができ(同条2項),少年を警察留置施設で勾留する場合でも,成人とは分離しなければならない(49条3項)とされています。
 このように,勾留を「やむを得ない場合」に限定することで,少年の身体拘束を最小限に行うよう配慮を行っているといえます。勾留されると20日間拘束され,心身ともに未熟な少年に悪影響を及ぼすおそれもある上,その間学校に通えず,退学処分となるおそれもあるからです。また,勾留場所を制限するのは,少年を成人と同じ留置施設に勾留しては,様々な悪影響が生じると考えられるからです。しかし,実際の運用においては,少年事件であっても,逮捕後,軽微な事件を除いて勾留請求されており,勾留延長も加えて20日間の身柄拘束がされるのが通常です。成人と同様,刑事訴訟法が定める罪証隠滅,逃亡のおそれの有無という要件が認められる場合には勾留されているのです。
 そして,勾留場所も成人と同様に警察留置施設が普通であり,拘置所や少年鑑別所で身柄拘束されることはほとんどありません。少年鑑別所では捜査官の往復に時間を要し,身柄の借り受けに支障が出るなどといった理由で,容易に上記の「やむを得ない場合」という要件が認められているのです。したがって,実質上は上記の規定は空文化しており,勾留されるのが一般的と考えておく必要があると思います。
 なお,法律で,「罰金刑以下の刑にあたる犯罪」を犯したとされる場合には,警察で逮捕された後,検察官を経由することなく直ちに家庭裁判所へ送致されます(41条)。「罰金刑以下の刑」とは,過失傷害罪(刑法209条1項(30万円以下の罰金又は科料)),過失致死罪(210条(50万円以下の罰金))などが含まれます。これらの罪名の場合には,逮捕されて警察署に連行された後,検察庁を経ずに直ちに家庭裁判所へ送致されることになることに注意する必要があります。

Q.少年鑑別所では何がなされるのでしょうか

 捜査機関から家庭裁判所へ送致された後,少年は少年鑑別所に通常4週間,最大8週間収容されます。少年鑑別所とは,医学・心理学・教育学・社会学その他の専門的知識に基づいて,少年の資質の鑑別を行う施設であり,全国で52か所設置されています。鑑別所では,少年の非行の原因や今後どうすれば健全な少年に立ち戻れるかについて,法務技官(鑑別技官)との面接や各種の検査がなされると同時に,法務教官による鑑別所内での行動観察が行われています。
 なお,通常の刑事事件においては,警察の留置施設での面会の場合には,接見禁止がない限り,友人も面会可能です。これに対し,少年鑑別所での一般面会については,近親者,保護者その他鑑別所が必要と認める者に限って許可されているのが実務です(少年鑑別所処遇規則38条)。

Q.少年審判手続の特徴はありますか

 少年事件の手続は,事件の受理に始まり,調査,審判を経て,終局決定に至って終結します。この一連の流れについては刑事事件における起訴,公判に至る手続と類似しています。
 もっとも,異なる点も多くみられます。例えば,通常の刑事裁判では当事者主義的訴訟構造が採用されており,検察官と被告人及び弁護人が対立して攻撃防御を尽くしたうえで,裁判所が独立した第三者として公的判断を下すという構造になっています。
 これに対し,少年事件では,訴訟の構造がそもそも異なります。すなわち,少年審判では,検察官は原則として審判の当事者として関与しません。少年の非行性を明らかにするための専門的調査は弁論になじまない上,家裁を中心とする各関係者が少年の更生のため協力し合う手続がより適切であり,関係者の協力のもと,裁判官が直接少年に語りかける形式の方が望ましいと考えられるからです。そのため,対立当事者が存在せず,家庭裁判所が自ら手続を主宰し,少年に対する調査・審問の上で終局的な決定を行うことになる職権主義的訴訟構造となっているのです。
 また,刑事裁判では憲法上,審理の公開が要求されている(憲法37条1項,82条1項)のに対し,原則として非公開です(少年法22条2項)。少年が社会復帰を進める上で,少年や家族のプライバシーに関して要保護性が求められるからです。
 さらに,一人の少年について複数の事件がある場合には,なるべく併合して審判しなければならないとされています(少年審判規則25条の2)。他方,一つの事件に複数の少年が関与していた場合には,原則として少年ごとに審理すべきとされます。
 少年が審判期日に出頭しないときは,審判を行うことができません(同規則28条3項)。審判の教育的効果を図るためには,通常の刑事手続以上に出頭確保の必要性が高いからです。
 また,少年事件では,通常の刑事事件で採用される証拠法上の伝聞法則の適用がないことも重要といえます。警察・検察段階で署名押印した供述調書がいずれも容易に証拠になってしまうのです。

Q.審判を開始することなく事件が終結するのは,どのような場合ですか

 審判を開始することなく事件が終結することを審判不開始といいます。審判不開始は,家庭裁判所による調査の結果,審判に付することができないとき又は審判に付することが相当でないと認めるときに行われます(少年法19条1項)。
 審判に付することができない場合については,具体的には次の3つの場合が考えられます。
 (ア)審判条件が存在しない場合
 (イ)非行事実存在の可能性がない場合
 (ウ)少年の心神喪失や,所在不明,疾病,海外居住などにより調査・審判が法律上又は事実上不可能になった場合
 (ア)の審判条件とは,保護手続の開始存続の条件を欠く場合をいいます。簡単にいえば,少年が20歳未満であるかどうか,有効な送致,通告及び報告が存在しているかどうか,同一の事件が他の家庭裁判所に二重に係属していないかどうかといった条件が欠けた場合に,審判不開始の判断がなされることになります。仮に少年が20歳以上であることが判明した場合には,家庭裁判所で審判する必要はなく,通常の裁判所で裁判を行えば足りるため,年齢超過を理由に検察官送致決定(少年法19条2項)がなされることになります。
 (イ)については,証拠に照らして,非行事実の存在が認められないときをいいます。そもそも非行を行っていない場合には,少年審判に付する必要はないからです。
 (ウ)については,所在不明になってしまった場合には審判を行うことができないため,審判不開始と判断されます。実務上,3か月ないし6か月程度所在不明と判断された場合に,審判不開始となる運用となっています。もっとも,その後,少年の所在が判明した場合には,再び審判が行われる場合もあります。
 他方,審判に付することが相当でない場合については,審判条件や非行事実の存在が認められ,審判を行うことは可能ですが,保護処分等を行うことが妥当でなく,裁判官による直接審理の必要性もない場合を指します。具体的には,
 (ア)事案が軽微な場合
 (イ)別件保護中の場合
 (ウ)保護的措置により要保護性が解消された場合
 が挙げられます。
 (ア)事案が軽微とは,例えば,過失により傷害を負わせてしまった事件で,被害者の傷害の程度が極めて軽い場合が考えられます。この場合,既に警察や学校,家庭で適切な措置がとられ,再び非行に走るおそれがなくなっていると認められれば,審判を行う必要がないと判断されます。
 (イ)は,少年が複数の事件を起こし,一つの事件で保護処分に付されている場合には,もはや別の事件で審判を行う必要はないと判断されます。
 (ウ)は,調査官の訓戒や,教育的指導及び保護的措置によって,少年が将来再び非行に陥る危険性がないと認められることをいいます。例えば,街頭清掃活動といったボランティア活動に継続的に少年を参加させることで,少年の内省を促し,その結果,少年の性格・環境に照らして非行性を除去させることが行われています。

Q.少年審判では,大人の刑事裁判の弁論と同じように弁護士さんが意見を言ってくれるのでしょうか

 刑事裁判では,証拠調べ手続が終了した後,判決を出す前の段階で,弁護人が意見陳述をすることになっています。これを弁論といい,基本的には,検察官の論告求刑と対になっています。
 この弁論の目的は,訴訟の全過程を通じて行われた弁護活動の結果を集約し,証拠に基づき認定されるべき事実とこれに対して適用されるべき法律判断を周到かつ明快に展開し,裁判所に対し被告人に有利な判決を要請することにあります。
 弁論は,被告人の権利を擁護するための第1審最後の機会であって,これまでの弁護活動の集大成として裁判所を説得するものになりますから,最終公判期日において,弁護人が弁論を読み上げる形で公判に顕出されることになります。ただ,通常は,口頭で読み上げるだけでなく,書面でも用意しておいて,その書面を裁判所に提出することになります。
 弁論の内容としては,無罪を争う事件であっても,公訴事実を争わずに情状のみを争う事件であっても,検察官の主張及び被告人に不利益な証拠を弾劾し,被告人の言い分を積極的に主張していくことになります。
 少年審判においても,刑事裁判における弁論のように,審判の際に付添人が意見陳述するものがあります。これを付添人意見書といいます。
 非行事実なしを争う事件であれば,付添人意見書においても,検察官の主張を弾劾するという形になりますが,少年の非行事実を争わない事件であれば,主に少年の非行性が減退していることや少年の生活環境が非行時よりも改善されていることなどを主張していくことになります。このように違いが出るのは,少年事件の手続が少年の犯した罪を罰するためにあるのではなく,少年の健全な育成を図るためにあるからです。そのため,少年事件では,付添人は少年の更生の度合いを裁判所に伝えることになります。
 また,少年事件では,少年の非行性を調査するために,調査官と呼ばれる人が付添人とは別に調査を行います。そして,この調査官も付添人と同様に意見書を出しますが,この意見書の内容が審判の結果に大きく影響を与えるため,付添人の意見書は調査官が意見書を出す前に提出する必要があります。刑事裁判における弁論のように,付添人意見書を審判の日に初めて提出する形になっても,裁判所に与える影響はほとんどないものになってしまいます。それを表すかのように,少年審判では,付添人意見書をその場で読み上げるようなことはしません。裁判官が付添人に対して,付添人の意見は付添人意見書のとおりでいいか聞くだけです。ですから,付添人意見書は早目に出す必要があります。
 さらに,付添人意見書は,弁論要旨と異なり,最終段階でなければ出せないということもありませんので,少年事件が裁判所へ送致されればいつでも提出することができます。

Q.少年審判には,誰が出席し,どのような流れで審理が進められるのでしょうか

 少年審判は,刑事裁判と異なり,そこに参加する人間も違ってきます。
 刑事裁判では必ず検察官が出席していますが,少年審判では,少年が重大な非行事実を否認しているような事件でない限り,基本的には出席しません。これは,少年審判では和やかな雰囲気の中で審理を行い,少年に過度な緊張を与えないために配慮されたものだからです。
 それでは,少年審判の出席者は誰になるのでしょうか。
 基本的には,裁判官,書記官,調査官,付添人,少年,少年の保護者という形になります。ただ,家庭裁判所が求めれば,保護観察官,保護司,少年鑑別所の法務技官及び教官も出席することができますし,裁判長の許可があれば,保護者以外の少年の親族や少年の学校の教員なども出席することができます。

 次に,少年審判の審理はどのように進められるのでしょうか。
 審判手続の進行は,一般的には,裁判長において審判の開始を宣言した上,次の順序,内容で行われています。
 ①人定質問
 ②黙秘権の告知
 ③審判に付すべき事由の要旨の告知並びに少年及び付添人の陳述の聴取
 ④非行事実の審理
 ⑤少年の生活環境等の要保護性に関する事実の審理
 ⑥最終的な処分決定の告知
 ⑦決定の趣旨の説明および抗告できることの告知
 上記④,⑤では,一般的に裁判官が少年に対して質問する形で審理が進んで行きます。少年審判は,前述のとおり,少年が手続の内容をよく理解できるように,懇切を旨として行い,和やかな雰囲気の中で,少年や保護者等に信頼感を持たせるように行わなければならないとされていますから,刑事裁判に比べて,裁判官の少年に対する対応は柔らかいものとなります。
 また,裁判官からの質問が終わった後には,付添人と調査官からも質問が行われることが多く,少年に対して指導的な言葉が投げられることも多々あります。少年審判は,少年の非行事実を裁く場という意味だけでなく,少年に対して教育する場としての意味も有するため,このような審理方法がとられているのです。

Q.要保護性とは何ですか

 審判の対象は,非行事実と要保護性の有無にあります。要保護性とは,一般的には再非行の危険性や,矯正の可能性,保護処分による保護相当性の3つの要素により構成されます。
 少年審判では,非行事実に争いのある事件においては,まず,非行事実に関する審理を行い,その結果,裁判官が非行事実があるとの心証を得た場合には,引き続き要保護性に関する審理を行うことになります。非行事実に争いのない事件であっても,重大事件では,審判期日を分けて非行事実に関する審理と要保護性に関する審理を行うことが多いといえます。

Q.少年事件では,どのような専門家の方が,手続きにかかわるのでしょうか。また,弁護士さんはどのように専門家の方と接してくれるのでしょうか

 少年事件では,弁護士が調査官,鑑別技官,裁判官と接する機会があります。
 特に,調査官については,調査段階においてコミュニケーションを取る機会が多くあります。この調査官というのは,医学,心理学,社会学や教育学などの知識を身に付けた家庭裁判所の職員のことをいい,調査官は,保護手続における調査を担当しています。調査官は,少年と面接を行い,少年に対して,家庭および保護者との関係,境遇,経歴,教育の程度および状況,不良化の経過,性行,事件の関係,心身の状況などの聞き取りを行います。また,家族及び関係者に対して,経歴,教育の程度,性行および遺伝関係等,少年のプライバシーに関わるような幅広い聞き取りを行っていきます。調査官は,調査を終了した段階で,少年の最終的な処分についての意見書を裁判官に提出しますので,弁護士は調査官と頻繁に連絡を取り,調査官の心証形成に影響を与えていかなければなりません。弁護士の意見を調査官にしっかりと伝えるためにも,調査官が意見書を出す前に,弁護士が意見書を出す必要がありますし,少年に対しても,調査官との面接でどのような話をするか打ち合わせをしておく必要があるでしょう。

 次に,鑑別技官との接し方ですが,鑑別技官とは,少年鑑別所の職員で,少年に対して面接や各種心理検査を行い,知能や性格等の資質上の特徴,非行に至った原因,今後の立ち直りに向けた処遇上の指針等を明らかにするという資質鑑別に従事する人のことをいいます。鑑別技官は,少年鑑別所における少年の様子を観察し,審判の前には意見書を提出しますので,やはり調査官と同様,弁護士が鑑別技官と会って,鑑別技官の心証形成に影響を与える必要があります。ただ,少年が鑑別所に入ってすぐの段階では鑑別技官も少年がどんな人間か把握できていないことも多いので,弁護士はある程度の期間が経ってから,鑑別技官と面会することが多いと思われます。

 最後に,裁判官との接し方ですが,少年審判では主に調査官が少年の調査を行う関係で,弁護士が裁判官と接する機会は審判の時のみになりがちです。しかし,非行事実に争いがある事件は,勿論のこと,情状面に争いがある事件でも裁判官と事前に面談をすることが必要になってきます。弁護士が裁判官と事前に面談することで,少年についての共通理解ができることになりますし,裁判官の事件に対する印象をこちらも知ることができます。
 特に,少年の処遇に関する意見が調査官と付添人とで異なる場合には,少年の処分を最終的に決定する裁判官の説得は重要であり,審判前の付添人と裁判官の面接は非常に重要な意味を持ちます。付添人としては,少年の特徴や現在の状態を裁判官に伝えるほか,少年の要保護性に関する問題点がどこにあり,付添人が考える処遇によりその問題点がどのように解決されるか,調査官の意見にはどのような問題があるのかなどについて,具体的に説明していきます。
 また,審判当日の進行などについて,通常と異なる対応を取ってもらいたい場合にも,付添人が裁判官と面談することがあります。

Q.少年事件で事実を争う場合,どのような手続きになるのでしょうか

 少年がある非行事実で捜査を受けたものの,少年がその事実を否定している場合,弁護人としてはどのような活動をしていくことになるでしょうか。
 まず,捜査の初期段階では,弁護人が少年に対して黙秘権等の権利をしっかりと説明することが重要です。成人であっても,自分にどのような権利が認められているのか理解できていない人は多いですが,少年であればなおさらです。また,少年は警察官の誘導に乗りやすいという面もありますので,弁護人がしっかりと少年に対して,黙秘権等の権利を説明し,「自分の記憶どおりに話せばいい。」ということを伝えておかなければなりません。そして,その上で弁護人が詳細に少年から聴き取りを行わなければなりません。少年の場合,重要なことであっても,自分から話さないことがよくあります。少年が話さなかったために,非行事実が認定されてしまうということがないように,弁護人の方からいろいろと少年に対して質問し,聞きだしていく必要があります。
 次に,検察官が家裁送致についての判断をする段階では,弁護人が少年の主張を書面にして,検察官に対して家裁不送致を求める意見書を提出することが重要です。少年事件の場合,警察や検察の取調べで,少年が自分の言いたいことをうまく伝えられていないこともありますので,こちらから少年の言い分を聞き取ったものを資料として検察官に提出し,検察官に非行事実がないことを説得していきます。そして,事件を家庭裁判所に送らないように要請していきます。

 その後,結果的に事件が家裁送致され,審判段階に入った場合には,付添人は,早めに裁判所と連絡を取り,審判の日程を調整する必要があります。非行事実を認めている事件であれば,通常審判は1回のみですし,審判までに4週間程度の時間がありますが,非行事実を争っている場合には,証人尋問期日等が別個入ることになりますから,タイトなスケジュールになる可能性が高いです。ですから,付添人は早目に立証計画を固めた上で,付添人にとっても少年にとっても無理のないスケジュールで日程調整をしておく必要があります。
 また,審判の際の証人尋問や少年本人への質問の行い方について,付添人は,裁判所と協議しておく必要があります。少年審判では,裁判官が主導的に進めていくこともあり,裁判官から質問を先に行うケースも多くあります。ただ,少年によっては,付添人が先に質問した方が,緊張がほぐれてちゃんと話せるようになる子どももいますので,事前に付添人と裁判官どちらが先に尋問・質問するかなどを決めておかなければなりません。少年にとっては,付添人しか味方がいないと思う状況になりますので,付添人が,少年がしっかりと話せる環境を築いてあげることが重要です。

Q.少年事件で,示談ができた場合に,処分は軽くなるのでしょうか。また,少年事件における被害者保護制度とはどのようなものでしょうか

 成人の刑事事件と異なり,保護主義が採用されている少年審判においては,被害弁償をしたこと自体は,本来は要保護性に直接影響を与える事実ではありません。そのため,被害者と示談をすれば,処分が必ず軽くなるというわけではないのです。
 しかし,少年や保護者が被害者に謝罪したいという意思を持っているか,被害弁償のために努力したかなどの事情は,要保護性を考える上で重要な要素になることも確かです。そのため,付添人としては,少年や保護者に謝罪文を書いてもらい,それをもって被害者と面会し,被害者と示談交渉を行っていきます。少年事件では,被害弁償をしたこと,示談をしたことそのものよりも,その過程が重要になります。

 少年事件では,被害者保護の制度が用意されており,少年事件の被害者は,家庭裁判所に対して,①少年事件記録の閲覧・コピー,②心情や意見の陳述,③審判の傍聴,④審判状況の説明,⑤審判結果等の通知の申出をすることができます。
 ①少年事件記録の閲覧・コピーに関しては,捜査段階の記録や審判期日調書などが対象となっていますが,記録の中には,少年や関係者のプライバシーに深くかかわるものもあり,このようなものが被害者に閲覧・コピーされることになれば,少年の健全な育成を害するおそれもあります。そこで,付添人は,事前に裁判所に対して閲覧等をさせないように申し入れをしていきます。当該事項が開示されることによって,少年にどのような不利益が生じるかを裁判所に説明していきます。
 また,③審判の傍聴に関しても,少年の故意の犯罪行為(殺人,傷害致死,傷害など)や交通事件(自動車運転過失致死傷)などによって,被害にあわれた方が亡くなっていたり,生命に重大な危険を生じさせる傷害を負ったりしたときには,被害者本人やその遺族が審判の傍聴をすることができます。ただ,家庭裁判所が,少年の健全な育成を妨げるおそれがあると認めたときには,被害者等が審判を傍聴することはできませんので,付添人は被害者等を十分に調査し,その者たちが審判を傍聴することで,少年の健全な育成を害するおそれがあると判断した場合には,裁判所に対してその者らの傍聴を認めないように意見書を提出していきます。

Q.試験観察とは何ですか。弁護士さんは試験観察に関してどのように活動してくれるのでしょうか

 家庭裁判所は,保護処分を決定するため必要があると認めるときは,決定をもって,相当の期間,少年を家庭裁判所調査官の観察に付することができます(同法25条1項)。これを試験観察といいます。これは,少年に対する終局処分を一定の期間留保し,その間に調査官の観察に付するという中間処分であり,①遵守事項を定めてその履行を命ずる措置,②条件を付けて保護者に引き渡す措置や,③補導委託先の施設や団体,個人に預けて生活させる措置の3種類に分けられます(同条2項各号)。
 終局処分の中での保護処分は,いずれも少年の身柄を拘束する重大な権利制約を伴うものであるため,それまでに少年にとって何が適正な処分かを見極める必要があります。また,矯正施設への収容を猶予し,社会内で指導監督や援助を行うことにより,観察期間中での更生を促すという効果を期待できるため,中間処分としての試験観察が設けられているといえます。
 試験観察が認められるには,①保護処分に付する蓋然性があること,②直ちに保護処分に付することができないか,あるいは相当でない事情があること,③調査官の観察活動が必要であり,かつ,その結果,適切な終局決定ができる見込みがあること,④相当の期間内に観察の目的を達成する見込みがあること,です。あらかじめ相当期間内の観察の目的を達成できないことが判明している場合には,保護観察等の保護処分に付して,その執行にゆだねるべきといえます。なお,試験観察の期間について,少年法は「相当の期間」としか定めていませんが,実務上,在宅試験観察の場合には,3~4か月であり,補導委託の場合には4~6か月が目処となります。事案によっては1年を超える場合もあり,個別の事案によるものといえます。
 少年鑑別所においても家裁調査官は少年から聴き取り調査を行っており,その限りでは試験観察も調査官の調査の延長線にあります。しかし,試験観察は少年を特定の場所ないし条件下におき,教育的な働きかけを行いつつ観察するという能動的な作用を有するものです。つまり,保護者に引き渡すなどして学校に通わせたり,特定の補導委託先に居住させながらボランティア活動をさせるといった,より社会の中で生活させながら観察することが試験観察の特徴といえます。

 それでは,少年が試験観察処分を受けた場合,付添人はどのような活動をすべきでしょうか。
 試験観察決定が出された場合,裁判所から試験観察期間中に遵守しなければならない遵守事項が言い渡されます。この遵守事項を破ることになれば,最終的な処分が重い処分になる可能性が高いので,付添人は少年に対して遵守事項をしっかりと理解させる必要があります。
 また,在宅試験観察の場合,少年は事件の前と同様に自宅などの普段生活している場所へ帰ることになりますので,気が緩みがちになります。また,友人等からの誘惑で,堕落した生活に引き込まれる可能性もあります。そのため,付添人は少年に対して電話やメールなどで定期的に連絡を取り,試験観察期間中の非行などが最終的な処分にどのような影響を与えるか,常に少年に意識させるように行動していく必要があります。
 さらに,試験観察は,裁判官の最終的な処分を決めるための判断材料を収集するために,調査官が少年の生活状況などを観察するという意味合いがあることから,付添人は,少年との関係だけでなく,裁判所との関係でも,調査官や裁判官に頻繁に連絡を取っていく必要があります。少年が付添人だけに話した内容等で,少年にとって有利に働きそうな事情については,積極的に付添人が裁判所に報告すべきでしょう。

Q.少年審判で決定された処分に不服の場合,観護措置決定や,少年審判の決定に不服の場合どのような手続きをとることができるのでしょうか

 家庭裁判所の保護処分決定に対し,上訴として高等裁判所に抗告することができます。この高等裁判所での審理を抗告審といいます。
 この抗告審は,刑事事件の控訴審に相当しますが,両者には大きな違いもあります。
 まず,一つ目が原決定告知の翌日から2週間以内に提出する抗告申立書に抗告理由を具体的に記載しなければならないということです。刑事事件であれば,控訴申立書を提出するまでの期間は,一般的に1か月以上はありますが,少年事件ではたったの2週間しかありません。また,刑事事件の控訴申立書のように,抗告する旨の記載しかしなかったり,「理由は追って抗告理由書を持って詳述する」などと記載して申立書を提出したりするということができません。そのため,少年の抗告事件では,2週間という短い期間で記録を再度丹念に検討し,具体的な理由を付した抗告申立書を作成しなければならないのです。そして,充実した抗告申立書を作成するために,少年本人や家族と面会する必要があります。
 次に,二つ目の違いとしては,少年事件の抗告審では審判が開かれず,基本的には書面審理になるということが挙げられます。そのため,付添人としては,事件記録が高等裁判所に送付された段階で,担当裁判官に面接を申し入れ,口頭で抗告理由について補足説明するなどの活動が求められます。抗告審では,抗告申立書を提出したまま,何も活動をしていないと,いつの間にか抗告棄却決定が出されるということが往々にしてありますので,付添人は積極的に活動する必要があります。
 また,三つ目の違いとしては,抗告申立てに原決定の執行停止の効力がないため,申立てをしても保護処分が執行されて少年が施設に収容されてしまうことが挙げられます。この点については,付添人が少年及び少年の家族にしっかりと説明しておかなければ,後々信頼関係を失うことにもなってしまいます。また,抗告をしても結論が変わりそうにない事案で,意味もなく抗告をしてしまうと,少年の更生への意欲を却って削いでしまうことにもなりかねませんので,注意が必要です。

 また,少年事件の中でも,検察官関与事件においては,原決定の処分が軽いとして,検察官から抗告される可能性もあります。検察官から抗告された場合についても,付添人に迅速性・積極性が求められることは同じでありますから,付添人は,高等裁判所の担当裁判官に対して,検察官の抗告を受理しないように働きかける必要があります。
 具体的には,裁判官に意見書を提出したり,裁判官と面談したりすることになるでしょう。

Q.観護措置を避けたい場合や,観護措置への不服申し立てをする場合,どのような手続きになるのでしょうか

 観護措置の必要性がない場合や観護措置を避ける必要がある場合,少年が身体拘束されている事案では,付添人は,家裁送致日当日に,家裁送致の日時を事前に確認した上で,送致の時間を見計らって家裁に出向き,観護措置を避けるための活動をすることになります。
 まず,付添人は,家裁で少年と接見し,観護措置審判の流れを説明しておきます。観護措置審判は,短時間で行われることが多いですので,少年に自分の言いたいことをちゃんと言えるように指導しなければなりません。そして,審判前に裁判官・調査官と面談して,少年に観護措置を出さないように要請していきます。その後,審判で観護措置が出なければ,少年は釈放されることになります。

 それでは,観護措置が出てしまった場合,その決定を争うことはできるのでしょうか
 観護措置決定を争う方法としては,異議申立てという方法と観護措置取消の職権発動を促す申立てという方法があります。
 まず,異議申立てですが,少年,法定代理人,付添人は,観護措置決定及び観護措置更新決定に対して,異議申立てをすることができます。異議申立てについては,家裁は合議体で判断しなければならず,その決定には原決定に関与した裁判官は関与することができないとされていますので,観護措置を決定した裁判官以外の裁判官の判断を仰ぐことができます。ただ,裁判官らが検討している期間は,付添人も事件記録を閲覧・謄写できなくなりますので,記録の検討が遅れることにはなってしまいます。この異議申立てが棄却された場合には,憲法違反や判例との相反等を理由として,5日以内に最高裁判所に対して,特別抗告をすることができます。
 次に,観護措置取消の職権発動を促す申立てですが,観護措置はその必要がなくなった場合には速やかに取り消されなければいけません。そこで,観護措置決定それ自体を争うのではなく,決定以後に生じた事情や調査の結果などを踏まえて,観護措置の必要性がなくなったことを主張するのがこの申立てになります。この観護措置決定の取消については,少年の側に申立権はなく,あくまで裁判所の職権発動を求める形になりますが,裁判官は比較的柔軟に対応してくれます。ただ,この方法ですと,観護措置決定を出した裁判官が判断する形になりますので,取消の必要性をなかなか認めてくれない可能性もあります。

Q.少年事件でも裁判員裁判が行われることがあるのでしょうか。どのような場合に,裁判員裁判となるのでしょうか。大人の裁判員裁判との違いは何でしょうか

 裁判員裁判とは,刑事裁判に,一般市民から選ばれた裁判員が参加する制度のことをいいます。裁判員裁判の対象事件は,①死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に関する事件,もしくは,②法定合議事件(法律上合議体で裁判することが必要とされている重大事件)であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に関する事件になります。具体的には,殺人罪,強盗致死傷罪,現住建造物等放火罪,身代金目的誘拐罪,危険運転致死罪等の重大な犯罪があたります。
 裁判員裁判においては,一般的な裁判官の裁判に比べて,公開の法廷において主張や証拠が朗読される機会が多く,口頭主義が前面に押し出されています。

 それでは,このような裁判員裁判は,少年事件であっても行われることがあるのでしょうか。
 結論から言えば,少年事件であっても裁判員裁判が行われることはあります。原則として,少年事件は,まず家庭裁判所に送られることになりますが,一定の要件を満たした上で,家庭裁判所が少年に刑事処分を科すことが相当と考えた場合には,事件が検察庁に再度送られ,成人事件と同様の刑事手続に乗せられることになります。そして,少年が犯した罪が裁判員裁判対象事件であれば,裁判員裁判が開かれることになります。
 しかし,この点については,少年法の理念との関係で問題があることも確かです。すなわち,少年法は,少年の健全な育成ないし成長発達権の保障を理念としていますが,裁判員裁判では,当事者から提出された証拠が公開の法廷で明らかとなっていくことから,裁判員裁判を行うことで,少年の健全な育成ないし成長発達権を阻害してしまうのではないのかという問題があるのです。
 この問題を解消するためには,裁判員裁判における口頭主義の貫徹に例外を設け,裁判員にも書面を読んでもらうことによって,公開の法廷で少年のプライバシーに関することが明らかになることを防ぐという方法が考えられます。また,裁判の公開原則に例外を設け,傍聴人を退廷させ,場合によっては被告人をも退廷させることによって,少年のプライバシーなどを守るという方法も考えられます。
 ただ,現状としては,このような少年への配慮がなされた形で,少年事件の裁判員裁判が行われてはいません。少年法の理念が死文化・空文化しないためにも,少年に対する裁判員裁判では,成人事件の場合とは異なる取り扱いを定めることが急務だと思います。

Q.自分の息子が知人を暴行する犯罪をしてしまいました。13歳なのですが,逮捕や家宅捜索のおそれはありますか

 刑法上,14歳未満の者の行為は犯罪になりません(刑法41条)。
 そのため,逮捕されることはありません。14歳未満で犯罪を犯した者については,少年法上「触法少年」として扱われ,保護処分の対象となります。触法少年が発見されると,まずは児童相談所に通告されます。児童相談所において,一時保護として少年の身柄を拘束するのが通常です。
 一時保護の期間は法律上は2か月と定められているものの,必要があると認められるときは延長が可能となっているため,相当長期化するおそれもあります。
 その後,家庭裁判所は,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り,これを審判に付することが可能となっています。
 それでは,13歳未満の少年に対して,家宅捜索といった捜査は許されるのでしょうか。
 従来,14歳未満の少年には刑事責任能力がないため,これに対する捜査は許されないとされてきました。しかし,2003年7月,長崎で12歳の少年による誘拐殺人事件が発生し,2004年6月には佐世保で11歳の女子小学生が同級生を刺殺する事件が発生し,世論は少年に対する厳罰化を求める機運が高まってきました。
 その流れの中で,2007年に少年法が改正され,14歳未満の少年に対しても,警察は調査を行うことができ(6条の2第1項),強制処分として,押収,捜索,検証及び鑑定嘱託をすることができるものとされました(6条の5)。したがって,家宅捜索を受ける可能性は法律上ゼロではないといえます。

Q.少年法について,法改正が行われたようですが,どのように変わったのでしょうか

 少年法については,2014年に法改正が行われ,少年の刑事事件に関する処分の規定が見直されました。その中で,少年に対する不定期刑に関する規定及びいわゆる無期刑の緩和刑(犯罪時に18歳未満の者に対する処断刑が無期懲役又は無期禁錮の場合に,裁判所が裁量で有期の定期刑を科すことができることとするもの)に関する規定が見直されました。
 具体的には,少年に対する不定期刑に関しては,①不定期刑を科すこととなる対象事件の範囲について,処断刑が「長期3年以上の有期の懲役又は禁錮」である場合から,処断刑が「有期の懲役又は禁錮」である場合に拡大しました。また,②不定期刑の長期と短期の上限について,改正前の少年法では長期は10年,短期は5年とされていたのを,長期は15年,短期は10年に引き上げる改正を行いました。さらに,③不定期刑の長期と短期との幅について,一定の制限を設けました。加えて,④不定期刑の短期について,一定の場合には処断刑の下限を下回る期間を定めることができるようにするなどの改正が行われました。
 また,いわゆる無期刑の緩和刑に関しては,⑤これまで10年から15年の範囲内で定期刑を言い渡すとされていたのを,10年から20年の範囲内で定期刑を言い渡すこととするなどの改正が行われました。

 このような法改正は,どのような目的でなされたのでしょうか。
 法務省は,今回の少年に対する刑事事件の処分の規定の見直しについて,裁判所の選択肢を広げることにより,裁判所が少年の犯した行為に応じ,より適切な量刑を行うことができるようにすることを目的としたものであって,少年に対する科刑を一律に引き上げることを目的とした,いわゆる厳罰化を目的としたものではないとしています。その表れとして,不定期刑の短期について,一定の場合には処断刑の短期を下回る期間を定めることができることとしていることや不定期刑を科すことができる事件の範囲を広げ,これまで短期を定めることができなかった事件についても短期を定めることができるようになったことを挙げています。
 しかし,今回の改正がそのような厳罰化を目的としたものでないとしても,現実には,不定期刑の長期と短期は改正前よりも5年も伸びていますし,無期刑の緩和刑に関しても,20年の範囲まで刑を重くすることができるようになってしまいました。実際の裁判において,裁判官が法定刑の重くなったことをどのように評価して,判決に反映させていくか注視していく必要があります。

Q.14歳未満の少年には当番弁護士制度というものがあるのでしょうか

 刑法では,14歳以上であれば刑事責任を問うことができるとしています。そのため,14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年については,触法少年という呼び名で,14歳以上の少年とは別の手続で処理されていくことになります。
 この触法少年の事件についても,警察の調査段階から弁護士が付くことができます。そして,弁護士は,警察の調査が適正に行われているかどうかを監視することになります。

 東京にある弁護士三会では,一時的に保護された触法少年に弁護士を付けるために,触法調査少年当番弁護士制度が設けられています。これは,児童相談所に一時保護されている触法少年に対して,児童相談所の児童福祉司が弁護士派遣制度について説明を行い,少年が弁護士の派遣を希望する場合には,児童相談所から東京三弁護士会刑事弁護センターに対して当番弁護士の派遣要請の連絡がなされ,弁護士が派遣されるというシステムを取っています。
 児童相談所に一時保護される触法少年の数はそれほど多くないと考えられるため,現在のところ,通常の当番弁護士のように待機制を取っておらず,委員会から派遣される形になっています。少年より触法調査少年当番弁護士の派遣要請があった場合には,東京三弁護士会刑事弁護センターからFAXが届き,その書面に従って,少年のいる一時保護所に出動することになります。
 弁護士が少年と面会し,少年が選任意思を示した場合には,少年から付添人選任届を取って,担当の警察署の警察官に提出することになります。弁護士費用については,触法調査段階ではいまだ国選付添人制度がないので,私選による受任ができない場合には,子どもの法律援助制度を利用することになります(なお,国選付添対象の刑罰法令に触れる触法事件が家裁送致された場合には,犯罪少年と同じく国選付添人が選任できるため,国選制度が利用できることになります。)。

Q.一旦大人と同じ刑事裁判を受けた後で,事件が家庭裁判所に送られることがあるのでしょうか

 少年法55条では,「裁判所は,事実審理の結果,少年の被告人を保護処分に付するのが相当であると認めるときは,決定をもって,事件を家庭裁判所に移送しなければならない」と規定しています。少年事件が逆送された後に,刑事事件の公判において,この決定がなされた場合には,事件が再度家庭裁判所に送られ,そこで再び審判を行った上で,処分が決定することになります。
 そのため,弁護人は,たとえ逆送されたとしても,当該少年には保護処分がふさわしいと考える場合には,少年法55条に基づく移送の主張・立証活動を行うことになります。

 それでは,少年法55条でいう「少年の被告人を保護処分に付するのが相当であると認めるとき」(保護処分相当性)というのは,どのような場合をいうのでしょうか。
 少年法の理念から言えば,保護処分相当性については,保護処分に付することが少年の改善更生にとって有効であること(逆から言えば,少年が保護不能ではないということ)を意味すべきと考えられます。
 しかし,多くの裁判例や裁判所の実務の大勢は,保護処分有効性があるだけではなく,事案の性質,社会感情,被害感情などから保護処分に付することが社会的に許容されること(逆から言えば,保護不適ではないということ)も要求されると考えています。この解釈によれば,仮に少年を保護処分に付することが少年の改善更生に有効であったとしても,被害者死亡事案など重大事案で被害感情が厳しい場合,刑事処分を科さなければ社会が許容しないという論理により,少年に刑事処分が科されてしまう可能性が高くなります。そのため,弁護人としては,少年法の目的が少年の健全な更生を図ることであることを主張して,この考え方を批判していく必要があります。

 ただ,裁判所が上記のような考えである以上,弁護士としては,①少年の年齢,②非行・保護処分歴,③家庭環境・成育歴,④行為態様・動機,⑤犯行後の情状,⑥再非行のおそれ,⑦収容保護の必要性と更生可能性などの判断要素の中から,少年の保護処分相当性が認められる方向に傾く事実を拾い上げて,少年には保護処分が必要であることを主張立証していくことになります。

Q.少年事件とは

 成人の刑事事件は,罪を犯した個人に対して刑罰を科すことを目的とした刑事手続きです。犯罪の成否に関する証拠が収集される捜査段階を経て,公開の法廷において犯罪事実があったかが明らかにされる公判(裁判)手続きが行われます。
 これに対して,少年事件は,非行をした少年や,罪を犯すおそれのある少年等の,保護を目的とした手続きです。少年事件では,犯罪等の証拠が集められる捜査段階の後,家庭裁判所に事件が送致され,少年の生育環境などについて調査官による調査等を経て,家庭裁判所裁判官によって非公開の審判廷において審判がなされます。
 審判での処分は,あくまで少年の保護を目的としたものであって,刑罰ではありません。
 このため,保護観察処分や,少年院送致処分を受けても,それは前科にはなりません(逮捕された事実が前歴として残るだけで,前科にはなりません)。
 少年の保護を目的とした少年事件においては,どのような非行を犯したのか(あるいは犯していないのか)という点だけでなく,少年自身の生育環境も,審判での最重要の判断要素となります。例えば,少年が家に寄り付かないといった事実やその原因,解決策の有無が,保護観察処分と少年院送致処分いずれを選択するかの重要な判断要素となります。
 上記のような少年事件の手続きにおいて,弁護士は,捜査段階においては弁護人として,家庭裁判所に送られてからの段階では付添人として,少年を助けることになります。そこでは,非行について,自分がやった以上の罪を着せられないように取調べ対応をアドバイスしたり,不当な捜査に対して抗議したり,少年にとって有利な事情を集めたりする活動をするとともに,少年の生育環境について解決すべき点を分析し,その解決策を考えて実施することや,調査官では拾いきれない少年の成長,進歩を記録に残し,調査官や裁判官に対して意見をして,少年に対する適切な処分を導くように働きかける活動を行います。

Q.内気な子のため,弁護士に心を開かないかもしれません

 少年事件の場合,未熟な少年が留置場に留置されることで精神的に参ってしまうことが多く,そのような中では,虚偽の自白や捜査機関の誘導によって少年に不利な取り調べが行われる可能性が非常に高いです。そのため,弁護士がすぐに接見・面会に行き,精神的にサポートするとともに事案と少年の言い分の把握し,取調べにおいて注意しなければならないことを伝える必要性が,成人事件の場合以上に高いといえます。具体的には,現段階で警察からどのポイントを聞かれているのか把握し,どのように答えていくかをアドバイスすることが必要です。
 また,接見や面会を通して,少年との接し方は非常に重要です。少年は初めて知らない大人である警察からの取り調べを受け,大人に対する不信感が募らせていることが多いです。そのため,きちんと少年の味方であることを説明し,先入観を持たずに少年の言い分を聞き,心を開いてもらいます。その上で,少年が理解でき,かつ話しやすいように,なるべく簡単な言葉を用いて,ゆっくりと,図や例え話を交えながら話を進めます。この技術の質は経験量によって段違いの差を生じます。
 以上のように,初動である接見面会だけでなく,その後の捜査活動においても,少年事件の経験が豊富であり,信頼関係を数多く構築できている実績が弁護士には強く求められるのです。

Q.学校に通えなくなるのでしょうか

 学校に事件のことが知られていなくても,後に事件が学校に発覚してしまい,退学等の処分が予測される場合には,早急に対応するが必要になります。具体的には,弁護人・付添人において勾留や観護措置を争って早期に身柄解放を実現し,在宅事件とすることで学校に通うことができるようにすることが考えられます。
 学校に事件が発覚してしまうパターンとしては,学校・警察相互連絡制度による警察からの連絡と,調査官から学校に送付される「学校照会書」が考えられます。後者の場合には,調査官が自ら一定の配慮をすることがありますが,付添人から裁判所に対し,調査官の照会をしないでほしいという明確な申し入れを行うべきです。
 すでに学校に事件のことが知られている場合,付添人が校長や担任と面談し,少年を学校で引き続き受け入れてくれるよう要請をすることが考えられます。特に,学校内の事件で,被害者も同じ学校の生徒であるような場合,少年が学校に戻れるようにするためには,学校の協力が必要不可欠です。
 このことは,少年が仕事に就いている場合にも基本的には同じです。早期に身柄解放を実現して仕事に戻れるようにすること,職場との面談を行い,復職を受け入れてもらうことが必要になります。
 いずれにしても,フットワークを軽くして,少年の環境に飛び込み,周囲の理解を得ていくことが重要となるのです。

Q.保護観察とは,少年院ってどんなところでしょうか

 保護観察および少年院(送致)は,いずれも「非行」を行った(犯罪にあたる行為をした)少年に対する処遇方法(矯正措置)の一つであり,家庭裁判所において「強制的に更生させる必要性がある」と判断された場合に実施が決定されるものです。逆に,強制的措置が必要ない,と判断された場合には「審判不開始」あるいは「不処分」という決定が下されます。
 先ず,保護観察とは,非行を行った少年の中でも,問題の程度が比較的軽い場合に行われるものです。この措置の主たる特色は,あくまでも「社会内での処遇」を主眼に据えている点です。すなわち,この矯正措置は少年院をはじめとする施設への収容を前提とせず,在宅のかたちで行われることになるのです。保護観察の実施の主体となるのは,法務省の機関の一つである保護観察所に所属する保護観察官(心理学,カウンセリングに精通し,少年が健全な社会生活を送ることが出来るようにサポートするもの)と,法務省から委託を受けた民間篤志家である「保護司」と呼ばれる人たちです。保護観察期間中は,自宅にいながらも「遵守事項」というルールを守りながら生活し,一定の頻度で保護観察官および保護司それぞれから面接を受けることを課されます。また,時としてボランティア活動等への参加を求められることもあります。保護観察の機関はおおよそ2年ですが,経過が好ましければ繰り上げて終了することもあり,他方,好ましくない点が多く見受けられる場合には,改めて施設への収容(少年院送致)が検討されることもあります。
 次に,少年院(送致)とは,基本的に,行った非行が重大あるいは度重なったものである場合に決定される措置です。少年院というと,ともすれば「少年用監獄」のようなイメージがありますが,刑務所が「刑罰を与える施設」であるのに対し,少年院はあくまでも「少年の更生(立ち直り)」を目的とする施設です。従って,その本質は全寮制の「学校」に似たものと言えるでしょう。少年院には複数の種類(1種,2種,3種など)が存在し,それぞれ入院中に実施される矯正・教育プログラムが異なるものになっています。入院期間も施設によって様々であり,短くて半年,長くて2年程といったところになります。こうした多種多様な少年院のうち,送致の対象となった少年にとって最もふさわしい処遇を行う施設が選択されることになります。少年院においては,「法務教官」と呼ばれるやはり心理学の専門家が矯正実施の主体となります。
 なお,少年院とは別に「少年刑務所」という施設もありますが,こちらがいわゆる「少年用監獄」にあたります。もっとも,通常の刑務所(成人向け刑務所)とはいくらか趣を異にし,やはり刑罰よりも更生および教育に重点が置かれるところとなっています。少年刑務所に入所する可能性があるのは,家裁において「検察官送致」の決定を受けた少年のみであり,社会的かつ具体的に相当重大な非行を行った場合に限られます。

Q.被害者に謝罪すべきでしょうか

 少年事件においては全件送致主義が採られており,成人事件の起訴猶予処分にあたる処理が存在しません。また,少年審判においても,成人事件ほどは示談の成否が処分を左右するほどのポイントとまではいえません。
 しかしながら,少年本人の反省や保護者が少年の犯した行為に関する責任をきちんと果たしているのか(少年に対する監督意思,監督能力)等の点で必ず考慮されます。また,近年では,家庭裁判所も,示談の成立を考慮すべきとの考えを強くしている傾向があります。
 そして,少年事件においては,被害者と少年がもともと知り合いであるケースや,被害者自身も未成年で被害者の保護者との間で示談をするケースも多くあります。このように,少年事件における示談は特殊なケースであることが多く,示談交渉に精通した弁護士でなければ示談を成立させることが困難です。

Q.少年鑑別所での生活とは

 少年鑑別所と聞くと,刑務所や少年院と同じ様な場所だと考える方も多いかもしれません。しかし,少年鑑別所は,一時的に少年を施設に収容して,鑑別(専門的見地から少年の内心の分析を行うこと)するための場所であり,数か月以上の身体拘束による罰を与え収容者の更生を図る刑務所や,生活面を厳しく指導して少年を矯正する少年院とは,全く異なるものです。
 すなわち,少年鑑別所は,少年を更生させたり,矯正したりする施設ではなく,心理テストや,技官と呼ばれる職員との面接が繰り返し行われ,その中で少年の個性や考え方の傾向を心理学等の専門的見地から分析する場所なのです。(その分析結果は,最終的に鑑別所内部の会議でまとめられ,裁判官の少年審判の基礎とされたり,保護観察処分や,少年院送致処分となった場合の処遇の資料とされたりします。)もちろん,家に帰れず,好きなときに友人と会えなくなるという点で,送致された少年にとってはつらい場所ですが,一方で,これまで自分が過ごしていた社会と切り離されたことで,自分と向き合い,自分のしてきたことを落ち着いて見つめなおす機会にもなります。鑑別所での少年の考え・行動の変化・反省の深まりも,少年審判の重要な資料となります。
 付添人たる弁護士は,鑑別所に収容された少年と面会し,そこでの心理面での変化の過程を聞き出したり,鑑別所の技官と面会して少年についての情報を聞き出すことを通して,家庭裁判所への報告書,意見書を作成して,少年に有利な審判が行われるよう働きかけることができます。

Q.入試間近に鑑別所に入った場合

 観護措置の期間が,学校の試験や入試の時期と重なってしまうことがあります。そのような場合,まず観護措置がなされないように活動するのはもちろんとして,観護措置が決定された場合においても,一時的な監護措置の取り消しを求める活動が考えられます。
 具体的には,付添人が,裁判所に対して観護措置の取消しを促す上申書を提出するとともに,裁判官や調査官と面会をして事情を説明します。この際には,学校の試験を受けられないことで留年,退学になってしまうおそれや,入試を受けられないことによって進学の機会を喪失してしまうという不利益が,少年の健全な育成を阻害するという主張をすることが重要です。

Q.調査官とは

 少年事件の特徴のひとつとして,家庭裁判所調査官による調査が挙げられます。家庭裁判所の調査官は,心理学をはじめとする人間科学分野に精通する専門家であり,非行をした少年に対して法律的見地のみならず,人間科学の見地からもアプローチし,調査を行います。家庭裁判所において,少年に対する最終的な処分を判断(審判)するのは裁判官ですが,調査官は調査結果を基に報告書を作成し,いかなる処分がふさわしいかを裁判官に上申することをその役割としています。
 なお,家庭裁判所の調査官が行うのはあくまでも「調査」であり,捜査機関における取り調べとは趣を異にします。調査における調査官と少年の関係は,いわばカウンセラーと患者の関係に類似したものといえるでしょう。
 調査官は,少年本人や保護者との面接,あるいは本人の生活環境(学校・職場)への出張や照会を通して,最適な処分を判断するための資料を収集します。調査は在宅で行われる場合と,少年鑑別所等に収容しながら行われる場合があります。

Q.少年審判では,「何」が行われるのか

 少年審判は,審判廷で,裁判官が部屋の奥に座り,少年が部屋の真ん中で裁判官と向かい合うように座ります。部屋の両脇には付添人(弁護士)と調査官が座ります。
 少年の横には,親が座ることもできます。審判は非公開の手続であり,一般の傍聴はされていません。非行事実に争いのない場合には1回で審判が終了しますが,非行事実に争いがある場合などは,複数回審判が開かれることがあります。
 審判の進行としては,まず出頭した少年が本人であるかを確かめる人定質問から始まり,少年には黙秘権があるとの説明がされた後,審判の対象となっている非行事実が裁判官から読み上げられ,その事実に間違いがないかについて少年の意見確認がされます。付添人の意見も聞いた後,裁判官は非行事実があったかなかったかについて証拠調べを行い,事実の有無を認定します。この際,裁判官が主として少年に対する質問をし,付添人も補充的に質問を行います。
 それに続き,少年が再非行に及ぶ可能性を判断する基礎となる事実について,付添人の提出資料や,調査官の調査結果報告書などに基づき,裁判官が認定を行います。この際,付き添いの親などに対して裁判官が質問を行うこともあります。
 そして,少年をどのような処遇にすべきかについて,調査官・付添人それぞれから最終的な意見が述べられ,その後,少年が最終陳述をする機会が設けられます。
 この後に,裁判官から,少年に対する処分の決定が言い渡され,これによって,保護観察や少年院送致などの処分を受けるのか,不処分となるのかが明らかになります。また,事件によっては試験観察に付する場合もあります。これは,少年に対する処分の是非を決するには早計であるとしてこれを一旦先送りにし,その後の経過を観察して,再度処遇を決定することとするものです。
 少年や親にとって,少年審判は今後の生活を占う重要な舞台です。それをしっかりと乗り越えるためには,付添人による入念な準備と,付添人との信頼関係が築かれていることが必要です。

Q.「未成年」の刑事裁判

 少年事件において,少年は,すべて家庭裁判所に送られますが,家庭裁判所で調査した結果,事件の重大性などから,刑事処分をすることが相当と判断された場合,少年は再び検察官に送致されます(「逆送致」や「逆送」などと言います)。特に,故意の犯罪によって人を死亡させた凶悪な犯罪を疑われる場合には,原則逆送されます。
 逆送されると,通常の刑事手続きと同じように,勾留の下での捜査が進められ,検察官による起訴不起訴の判断がなされ,起訴されれば,大人と同様,公開法廷での裁判手続きを受けることになります。少年であることから一定の手続き上の配慮がされますが,裁判が終結すると,大人と同様,有罪無罪が判断され,有罪の場合,刑罰の宣告がなされます(この場合,有期懲役を宣告する際には,「不定期刑」といって,「懲役5年から10年」のように,刑期が幅をもって定められます)。懲役刑等が宣告され,執行猶予が付かない実刑となれば,少年は少年刑務所に移送され,そこで懲役等の刑罰を受けることになります。
 家庭裁判所の調査官による調査に基づき少年の保護のために行われる審判手続きとは異なり,少年の刑事裁判は,まさに犯罪自体がどのようなものであったかという点が第1に着目され,少年の成育環境など,犯罪以外の情状は,2次的な判断要素となります。
 ここでは,刑事手続き面でしっかりと弁護をし,不当に重い判決を受けることを回避することが必要です。また,少年事件手続へと戻してもらうよう,家庭裁判所への移送を主張するという弁護方針を取ることも場合によっては必要です。このため,刑事弁護に精通した弁護士,特に少年の刑事事件の弁護経験を積んだ弁護士に依頼をすることが重要です。


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