日産ゴーン会長事件と司法取引について|刑事事件に強い元検事弁護士が強力対応

日産ゴーン会長事件と司法取引について

刑事弁護コラム

日産ゴーン会長事件と司法取引について

 昨日東京地検特捜部に逮捕された日産会長カルロス・ゴーン氏の捜査に関して,司法取引が適用されたと報道されています。
 今年6月にスタートした同制度が適用されるのは,7月に三菱日立パワーシステムズの元取締役らが在宅起訴された外国公務員への贈賄事件に続き,2例目ということになります。
 ところで,今回の容疑は,有価証券報告書への虚偽記載ですが,これは金融商品取引法197条1項違反となり,10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金となります。
 そして,会社の代表がこの罪を犯したときは,法人自体も刑罰を受け,同法207条1項によれば,なんと7億円以下の罰金となります。ゴーン会長は代表権をもつ会長ですので,207条は適用されるのです。日産にとっては重大な事態に直面したわけです。昨日の日産記者会見を見ると,日産社内における内部調査に端を発して監査役から問題提起がなされ,社内調査を実施し,東京地検特捜部に報告されたということでしょう。今後,第三者委員会を設置するとのことです。つまり,日産は逮捕前にこの重大事態を把握し,社内調査を実施していたのです。社内の内部通報制度が機能したことになります。問題が発覚した時点で第三者委員会を設置して調査しなかったのは,おそらく不正嫌疑者であるゴーン会長らに知られないよう,秘密裏に調査を進める必要があったからではないでしょうか。
 ところで,日産という法人自身が両罰規程によって刑罰適用を受ける場合,その日産が法人として今回のように捜査協力した場合に,司法取引の恩恵を受けるでしょうか。司法取引の要件を見てみましょう。

司法取引の要件

 今年の6月に,司法取引制度として,合意制度及び刑事免責制度が新たに導入されました。
 合意制度とは,被告人や被疑者が他人の犯罪事実を明らかにして捜査や公判に協力した場合に,見返りとして刑が軽くなる等の合意を検察官とすることができる制度です。捜査や公判の協力とは,取調べや公判において真実の供述をしたり,証拠収集に協力したりすることです。
 今まで立証が困難であった汚職,詐欺,横領事件という財産事件や,独禁法違反などの経済事件,薬物・銃器犯罪等が対象犯罪で,この制度の導入により,今まで解明が困難であった組織的犯罪等の迅速な真実解明が可能となりました。今回の金融商品取引法違反にも適用があります。
 司法取引の要件ですが,被疑者や被告人及びその弁護人と捜査機関が協議し,「他人」の刑事事件の捜査公判に協力行為を行う代わりに,自らの犯罪を不起訴または求刑を軽くしてもらうことなどを合意することをいいます(刑事訴訟法第350条の2以下)。
 問題となるのは,今回の事例で,日産が「他人」であるゴーン会長の刑事事件の捜査に協力したということで,司法取引の恩恵を受けることができるかということです。受けることができるのです。先例となった三菱日立パワーシステムズでは,法人自体の捜査協力によって法人が両罰規定で罰せられることなく,刑事免責となりました。
 今回も日産は刑事免責となる可能性があります。司法取引の効果としては,公訴をしないこと(不起訴処分にすること),公訴を取り消すこと(起訴を取り消すこと),特定の訴因及び罰条により公訴を提起し,またはこれを維持すること(軽い罪で起訴すること),特定の訴因もしくは罰条の追加もしくは撤回または特定の訴因もしくは罰条への変更を請求すること(起訴した後に,軽い罪に変更すること),刑事訴訟法第293条第1項の規定による意見の陳述において,被告人に特定の刑を科すべき意見を陳述すること(軽い量刑で求刑をすること),即決裁判手続の申立てをすること(罰金または執行猶予が見込まれる簡易な手続),略式命令の請求をすること(罰金または執行猶予が見込まれる簡易な手続)のうち,1つか2つ以上のことを検察官が行うと定められています(刑事訴訟法第350条の2第1項2号)。
 今回の粉飾規模から言いますと,日産が刑事免責を得るのは難しいと思います。しかし,両罰規定によって起訴された場合,非常に軽い罰金求刑がなされる可能性はあります。
 このように,日産の内部通報制度が機能して,捜査機関に事件の端緒を掴まれる前に社内調査を実施し,捜査に協力できたという点では,刑事処罰の面では(社会的非難や投資家による避難は別として)日産をある程度救ったことにはなります。
 しかし,個人的に思うのは,わが国では法人に犯罪能力が認めておらず,両罰規定によって連動型の過失処罰しか認められていない,法人に有利な法制度の中で,司法取引によって自らの役員に対する捜査に協力して更なる恩恵を受けるというのは,法人を優遇し過ぎのような気もします。暴力団の親分を罰するため,子分を免責するならしっくり来るのですが。(元特捜検事中村勉)


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