事案
暴力団との衝突事件が発生したことを契機に、将来犯罪が発生した場合の証拠保全のため、警察は、付近の歩道上の電柱に設置されたテレビカメラを用いて、ビデオ装置で録画を行った。この撮影行為につき、違法ではないかが問題となった事案。
判旨(東京高裁昭和63年判決)
承諾なくしてみだりにその容貌等を写真撮影されない自由は、いわゆるプライバシーの権利の一コロラリーとして憲法13条の保障するところというべきであるけれども…当該現場において犯罪が発生する相当高度の蓋然性が認められる場合であり、あらかじめ証拠保全の手段、方法を取っておく必要性及び緊急性があり、かつ、その撮影、録画が社会通念に照らして相当と認められる方法でもって行われるときには、現に犯罪が行われる時点以前から犯罪の発生が予測される場所を継続的、自動的に撮影、録画することも許されると解すべきである。
コメント
公道上における、将来発生する犯罪の証拠を収集するためのビデオ撮影は、「強制の処分」(刑事訴訟法197条1項但書)にはあたらないとされていますが、任意捜査の限界を超える場合には、違法となります。判例は、承諾なくしてみだりに容貌等を撮影されない自由というプライバシーの権利(憲法13条)に言及した上で、ビデオ撮影の適法性にも限界があることを示しています。
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