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刑事判例紹介(23)

事案

覚せい剤取締法違反事件の被疑者である被告人がホテルに泊まっているとの情報を得たため、ホテルの支配人からマスターキーを借り受け、それを用いて入室した。入室後、被告人を静止し、ベッドの上で捜索差押許可状を被告人に呈示した上で捜索を開始した。その結果、覚せい剤入りのビニール袋と注射器が発見され、差し押さえられた。
その後、公判において捜索差押許可状を執行し、室内に立ち入る時点で令状の呈示を行わなかったことの適法性が争われることになった。

判旨(最高裁平成14年判決)

覚せい剤事犯の前科もある被疑者において、直ちに覚せい剤を洗面所に流すなど短時間のうちに差押対象物件を破棄隠匿するおそれがあったため、ホテルの支配人からマスターキーを借り受けた上、来意を告げることなく、施錠された上記客室のドアをマスターキーで開けて室内に入り、その後直ちに被疑者に捜索差押許可状を呈示して捜索及び差押えを実施したことが認められる。
以上のような事実関係の下においては、…手続きの公平性を担保するするとともに、処分を受ける者の人権に配慮する趣旨に出たものであるから、令状の執行に着手する前の呈示を原則とすべきであるが、前記事情の下においては、警察官らが令状の執行に着手して入室した上その直後に呈示を行うことは、法意にもとるものではなく、捜索差押えの実効性を確保するためにやむを得ないところであって、適法というべきである。

コメント

令状の呈示時期について、明文上の規定は存在しないものの、原則として執行の着手前に呈示する必要があると考えられています。令状を事前に呈示し、被処分者に告知することによって手続きの公平を担保するためです。
もっとも、事前に令状を呈示している時間がなく、捜索差押え対象物が破壊されたり、滅失されたりするような蓋然性があるような場合は、証拠保全の必要性に照らして許容できる場合であれば、令状の事前呈示は厳格には要求されないでしょう。厳格に要求されていないとしても終始呈示のないまま捜索差押えを行うことまでは許容されませんので、客観的に可能となった時点で捜査機関は令状を呈示する必要があるでしょう。

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