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刑事判例紹介(46)

事案

被告人は、Yらと共謀の上、殺人等の罪で起訴された。公訴事実は、実行行為者を特定せず、「被告人は、Yと共謀の上…殺害した」というものであったが、裁判所は、「被告人は、Yと共謀の上、…Y又は被告人にあるいはその両名において、…殺害した」旨の事実を認定し、有罪とした。そこで、被告人は実行行為者の認定につき、訴因変更手続を経ていない点が違法であるとして争った。

判旨(最高裁平成13年決定)

…そもそも、殺人罪の共同正犯の実行行為者が誰であるかが明示されていないからといって、それだけで直ちに訴因の記載として罪となるべき事実の特定に欠けるものとはいえない…。とはいえ、実行行為者が誰であるかは、一般的に、被告人の防御にとって重要な事項であるから、当該訴因の成否について争いがある場合等においては、争点の明確化などのため、検察官において実行行為者を明示するのが望ましいということができ、検察官が訴因においてその実行行為者を明示した以上、判決においそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、実行行為者の明示は、前記の通り訴因の記載として不可欠な事項ではないから、少なくとも、被告人の防御の具体的な状況等の審理に照らし、被告人に不意打ちを与えるものでないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではないものと解すべきである。

コメント

刑事訴訟法における審判対象は、検察官の主張する具体的事実としての訴因となります。そして、訴因に変更がある場合には、検察官が訴因変更手続を行うことになり、これを経なければ、不告不理の原則違反(378条3号)、または、審理不尽の違法(379条)として控訴理由となります。本決定では、実行行為者の明示は訴因の記載として不可欠な事項とはいえないとした上で、訴因に実行行為者が明示された場合に訴因と異なる認定をしても、被告人に不意打ちを与えるものでなく、かつ認定事実が訴因よりも不利益であるとは言えない場合には、例外的に変更手続を経なくても違法ではないと判断されました。

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