事案
飲酒運転の多発する時期及び場所において、車両の外観・走行状態からは異常の認められない自動車すべてに対して実施された検問(一斉自動車検問)が、法的根拠に欠ける違法なものである等として上告した。
判旨(最高裁昭和55年判決)
警察法2条1項が「交通の取締」を警察の職務として定めていることに照らすと、交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な警察の諸活動は、強制力を伴わない任意手段による限り、一般的に許容されるべきものであるが、それが国民の権利、自由の干渉にわたるおそれのある事項にかかわる場合には、任意手段によるからといって無制限に許されるべきものでないことも同条2項及び警察官職務執行法1条などの趣旨にかんがみ明らかである。…警察官が、交通取締の一環として交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制限することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである。
コメント
自動車検問とは、一般に、犯罪の予防・検挙のため、警察官が走行中の自動車を停止させて、自動車の見分、および運転者または同乗者に対し必要な質問を行うことと定義されています。そのうちの一斉自動車検問について、本決定は、警察法2条1項との関係で検討した上で、本件の方法、態様の下では適法であると判断しました。