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刑事判例紹介(53)

他人の氏名を冒用した場合に被告人が誰であるかが争われた事案

窃盗の罪で懲役刑の執行を受けたAは、刑の執行を終わった日から5年を経過していない時期に再び窃盗の罪で逮捕された。2度目の捜査において、Aは捜査機関に対して、知人Bの氏名を偽って用いたところ、検察官もこれに気づかないまま起訴し、執行猶予付の有罪判決を受け、確定した。後日、Aが偽名を用いていたことが判明したため、検察官が執行猶予の取消を求めたところ、Aは、B名義の判決が自己に及ぶことはない等として、特別抗告をした。

判旨(最高裁昭和60年判決)

本件においては、申立人Aが、捜査官に対し、ことさら知人Bの氏名を詐称し、かねて熟知していた同女の身上及び前科をも正確に詳しく供述するなどして同女であるかのように巧みに装ったため、捜査官は、申立人が右Bであることについて全く不審を抱かず、両者の指紋の同一性の確認をしなかった結果、執行猶予の判決確定前には申立人の前科を覚知できなかったというのであるから、検察官が執行猶予取消請求権を失わないとした原審の判断は正当である。

コメント

被告人を決定する基準については、学説の間で見解の対立がありますが、実務では、起訴状の表示を基本としつつ、検察官の意思や被告人としての行動をも考慮に入れて判断するとされています。本判決は、このような考えに立つことを判示した上で、本件においては検察官はAをBの名前で認識していること、Aは公判廷においてBの名前で自ら被告人として行動していること、Bの名前を被告人氏名とする判決がすでに確定していること等に鑑みて、被告人はBの名前で表示されているAであったと判断し、実質的に被告人を対象としているかを総合的に検討する姿勢を明らかにしました。
なお、より早期の段階において氏名冒用の事実が判明したり、単に人違いであった場合にも、起訴状の訂正や、公訴棄却(刑訴法338条4号)をする等して柔軟に対応することが考えられます。

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