事案
殺人事件の嫌疑がある被疑者に対して、警察は、任意の取調べを終えた後、4夜にわたり、警察の手配した宿泊施設に宿泊させた上、前後5日間にわたって被疑者としての取調べを続行した。このような警察の行為が違法ではないかが問題となった事案。
判旨(最高裁昭和59年判決)
任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは…強制手段、すなわち、「個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段」によることができないというだけでなく、さらに、事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において、許容されるものと解すべきである。
コメント
任意同行及びその後の取調べの適法性については、強制手段とは評価されないことに加えて、任意捜査としての限界を超えないことが必要とされています。判例は、宿泊を伴う取調べにについて、強制手段についての従前の判例による定義を引用した上で、被疑者の意思により取調べ及び宿泊を容認し応じていたものと認められるか等を検討しており、宿泊を伴う取調べにも適法性の限界があることを示しています。
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