事案
強制性交等(旧 強姦)及び殺人の非行事実により少年院送致の決定を受けた被告人ら(当時少年)の親権者らに対して、被害者の両親が、民事訴訟として不法行為に基づく損害賠償請求をし、原審は少年らの自白の信用性を肯定し、原告らの請求を認容した。これに対して、自白の信用性等を争うとして被告らは上告した。
判旨(最高裁平成12年判決)
(自白の)信用性の判断は、自白を裏付ける客観的証拠があるかどうか、自白と客観的証拠との間に整合性があるかどうかを精査し、さらには、自白がどのような経過でされたか、その過程に捜査官による誤導の介在やその他虚偽供述が混入する事情がないかどうか、自白の内容自体に不自然、不合理とすべき点はないかどうかなどを吟味し、これらを総合考慮して行うべきである。
…少年らの自白にはいわゆる秘密の暴露があるわけではなく、自白を裏付ける客観的証拠もほとんど見られず、かえって自白が真実を述べたのであればあってしかるべきと思われる証拠が発見されていない上、一部とはいえ捜査官の誤導による可能性の高い明らかな虚偽の部分が含まれ、しかも犯行事実の中核的な部分について変遷が見られるという幾多の問題点があるのに、漫然とその信用性を肯定した原審の判断過程には経験則に反する違法があるといわざるを得ず、その違法は原判決の結論に影響を及ぼす…
コメント
前提として、民事訴訟では、先行する少年事件で認定された事実と異なる事実を認定することが可能です。また、本件の自白についての基準は、刑事裁判にも妥当すると考えられています。その上で、原判決が少年らの自白内容の具体性及び全員で内容が一致していることを重視したのに対して、本判決は、犯行現場に残された血液の血液型と一致する者が少年らの中に存在しないこと、現場には複数人による足跡の痕跡がないこと、少年らの自白における関与者・犯行場所・犯行内容等という事件の中核的な部分が幾度も同一時期に変遷していること等という客観的証拠との矛盾や変遷の不自然さを重視して、自白の信用性を否定しており、捜査機関による誘導等がなされやすい自白の信用性は特に慎重に判断すべきという姿勢を明確にしています。