事案
被告人らは慰謝料名下に金員を喝取したなどとして起訴され、犯行前に共犯者Aが作成した「(25)確認点―しゃ罪といしゃ料」との記載(以下「本件メモ」)を含むノートを証拠の一つとして事前共謀の存在が認定された。本件メモはAが会議に出席したBから同会議で確認された事項を聞いて書き留めたものと判明した。
判旨(東京高裁昭和58年判決)
人の意思、計画を記載したメモについては、その意思、計画を立証するためには、伝聞禁止の法則の適用はないと解することが可能である。…数人共謀の共謀事案において、その共謀にかかる犯行計画を記載したメモは、それが真摯に作成されたと認められるかぎり、伝聞禁止の法則の適用されない場合として証拠能力を認める余地があるといえよう。ただ、この場合においてはその犯行計画を記載したメモについては、それが最終的に共犯者全員の共謀の意思の合致するところとして確認されたものであることが前提とならなければならない。本件についてこれをみるに、本件メモに記載された右の点が共犯者数名の共謀の意思の合致するところとして確認されたか否か、確認されたと認定することができないわけではない。したがって、確認されたものとすれば、本件メモに記載された右の点に証拠能力を認めるべきは当然であろう。
コメント
人の意思、計画を立証する場合は、知覚・記憶の過程がなく、表現・叙述の真摯性、正確性だけが問題となるため、非伝聞となり、それは共犯事案についても同様といえます。また、本判決は、他の証拠から関与者全員が共通の犯罪意思を形成したと認められれば、共犯者の一人の特定の犯罪意思を記載した書面は、他の者も同じ内容の犯罪を共謀したと推認でき、この場合は当該メモは非伝聞となることを示しています。