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刑事判例紹介(86)

事案

電車内で被害者の臀部に触れた事実等で起訴された被告人に対して、捜査機関の提出した被害・犯行状況の再現結果を記録した実況見分調書等が証拠として採用されたため、被告人側は本件両証書の証拠能力等を争い、上告した。

判旨(最高裁平成17年判決)

…本件両書証は、捜査官が、被害者や被疑者の供述内容を明確にすることを主たる目的にして、これらの者に被害・犯行状況について再現させた結果を記録したものと認められ、立証趣旨が「被害再現状況」「犯行再現状況」とされていても、実質においては、再現されたとおりの犯罪事実の存在が要証事実になる…。このような…実況見分調書…等の証拠能力については、刑訴法326条の同意が得られない場合には、同法321条3項所定の要件を充たす必要が…、再現者の供述の録取部分及び写真については、再現者が被告人以外の者である場合には同法321条1項2号ないし3号所定の、被告人である場合には同法322条1項所定の要件を満たす必要がある…。もっとも、写真については、撮影・現像等の記録の過程が機械的操作によってなされることから…再現者の署名押印は不要と解される。
本件両書証は、いずれも刑事訴訟法321条3項所定の要件は満たしているものの、各再現者の供述録取部分については、いずれも再現者の署名押印を欠くため、その余の要件を検討するまでもなく証拠能力を有しない。また、本件…写真は、署名押印を除く刑訴法321条1項3項所定の要件を満たしていないから、証拠能力を有しない。

コメント

公判期日における供述に代えた書面でその記載内容の真実性の立証に用いられるものは、供述者の知覚・記憶・表現の過程に対して反対尋問等によって誤りの無いことを確認できないことから、特別の要件を満たさない限り、証拠として用いることは禁じられます(刑訴法320条1項)。本件は、被告人が犯行の具体的な態様を争っているという審理の経過に鑑みて、本件両書証の立証趣旨は被害・犯行の状況の記録にすぎないとの検察官の主張を否定し、実質的にはその記載通りの被害・犯行内容が真に存在したことが要証事実であるとした上で、特別の要件を満たさず証拠能力を有しないと判示し、これらを証拠として採用した訴訟手続を違法としており、捜査機関の主張する形式的な立証内容を盲信せず、実質的な見地から検討し、裁判官に対する不当な予断を排除する姿勢を明らかにしています。

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