私人が作成した燃焼実験報告書の証拠能力が刑訴法321条3項準用によって認められるかが争われた事案
被告人は非現住建造物等放火および詐欺未遂の事実で起訴された。検察官は民間会社に勤務するBが作成した燃焼実験報告書の証拠調べ請求をし、私人が作成した報告書が刑訴法321条3項準用により証拠能力が認められるかが争われた。
判旨(最高裁平成20年判決)
321条3項所定の書面の作成主体は「検察官、検察事務官又は司法警察職員」とされているのであり、かかる規定の文言及びその趣旨に照らすならば、本件報告書抄本のような私人作成の書面に同項を準用することはできないと解するのが相当である。…上記作成者は、火災原因の調査、判定に関しては特別の学識経験を有するものであり、本件報告書抄本は、同人が、かかる学識経験に基づいて燃焼実験を行い、その考察結果を報告したものであって、かつ、その作成の真正についても立証されていると認められるから、結局、本件報告書抄本は、同法321条4項の書面に準ずるものとして同項により証拠能力を有する。
コメント
本決定は、321条3項の文言は検察官等に限定されており、その趣旨は明示された主体が法律上捜査の職権と職務とを有する公務員であり、その検証の結果を信用しうる資質上、制度上の保障を備えている点にあるとして、私人が作成した報告書への同項の準用を否定しました。もっとも、本件報告書は特別な学識経験を有する者が作成した書面で、特別の専門的知識を有する者が作成し信頼性があるため証拠能力を認めるという同条4項の趣旨が妥当するため、同項の準用により証拠能力が認められました。