事案
覚せい剤中毒の疑いがある被告人に対して職務質問を行い、ポケットに手を入れてプラスチック・ケース入りの注射針1本とちり紙の包みを取り出した。ちり紙の中身が覚せい剤であることが判明したため現行犯逮捕したが、違法な証拠収集活動によって得られた証拠には証拠能力が認められないのではないか、と争われた事案。
判旨(最高裁昭和53年判決)
憲法35条、31条等の保障に照らすと証拠物の押収等の手続に、憲法35条及びこれを受けた刑訴法218条1項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法捜査抑止の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるものと解すべきである。
コメント
前提として、本件の取り出し行為は捜索に当たり所持品検査の許容限度を超えているため、これに引き続いて行われた逮捕や差押え手続は違法です。違法収集証拠排除法則については刑訴法上明文の規定がないため、その判断基準が問題となりますが、本判決は違法集証拠排除法則の要件として、①違法の重大性と②排除相当性が認められる場合には証拠能力が否定されると判示しました。①に関しては、手続違反の程度や令状主義潜脱の意図等が考慮され、②に関しては違法の重大性を前提として事件の重大性や証拠の重要性等を考慮して決せられることになります。
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