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変化する特殊詐欺について – 特殊詐欺とは? 移動型とは? 様々な詐欺について詳しく解説します

特殊詐欺という言葉をご存知ですか。特定の相手を対面で騙すのが通常の詐欺であるのに対し、電話やメール、インターネット等を用いて直接対面せずに、不特定多数の人を騙すものを「特殊詐欺」といいます。

電話などで息子や娘を装って現金を要求する「振り込め詐欺(オレオレ詐欺)」や、有料のインターネットサイトを利用したと言ってその利用料を要求する「架空請求詐欺」などが代表例です。

そのほかに「融資保証金詐欺」、「還付金詐欺」などがあります。特殊詐欺の手口は年々悪化しており、最近は移動型や、葉書を用いた特殊詐欺がみられるようになりました。

「移動型」の特殊詐欺とは?

かつての特殊詐欺は、詐欺グループが事務所やマンションの一室などを借り、そこをアジトとして利用するという手法がしばしば用いられていました。しかしながら、一つの拠点だけでは不動産の契約情報などから犯人グループの情報が漏れたり、近隣の住民から怪しい集団がいる等と警察に通報されたりして、即座に検挙されてしまいます。

そこで、一ヶ所のアジトにとどまらず、ホテルや民泊、貸別荘などの宿泊施設や、カラオケボックス、駐車場(ボックスカー)などを転々とすることによって、犯人グループの居場所を警察に特定されないようにする移動型の特殊詐欺が目立つようになってきているのです。

特殊詐欺事件の無罪判決?

特殊詐欺事件の被害者が宅配便で送った現金を受け取った「受け子」を詐欺罪として問う場合、宅配便の中身が詐取金だとの認識がどこまで必要かが争われた最高裁の裁判において、逆転無罪とした2審の判決が見直される可能性があるという報道が出ました。

この裁判で被告人は「詐欺罪」と「詐欺未遂罪」に問われております。弁護人は「被告人は荷物の中身が詐取された現金であるとは知らなく、違法薬物あるいは拳銃であるという認識であった」として無罪を主張しています。一方、検察官は「不釣り合いな高額の報酬が約束され、詐欺の被害金であるかもしれないという認識はあったはずだ」と主張しています。

1審判決では、被告人が犯行までの一か月間、約20回、複数のマンションの空き部屋でその住人であることを装い、荷物を受け取って報酬を得ていたと指摘の上、「何らかの犯罪行為に加担している認識はあった」と詐欺罪の成立を認めました。

一方、2審判決では、マンションの空き部屋を悪用し、宅配便で現金を受け取る手口は当時はあまり知られていなかったとして、「荷物の中身が詐欺によって得た金である可能性を認識していたとは認定できない」と判断され、詐欺罪については無罪判決となりました。そして続く最高裁では、同様の主張をして2審東京高裁で逆転無罪となった女性被告人の上告審弁論を開く予定です。この裁判において、先述の結論が見直される可能性があり、続報が待たれます。

なお、振り込め詐欺に関する詳細につきましては下記のページもご覧ください。

巧妙化する手口

振り込め詐欺(オレオレ詐欺)等の特殊詐欺では、電話が不可欠ですが、IP電話(インターネットをアクセス回線として利用したもの)や格安スマートフォンの回線を利用した手口が増加しています。IP電話は固定電話として扱われるため、本人確認を要求する携帯電話不正利用防止法が適用されず、詐欺グループにとっては身元を明かさずに契約できるメリットがあります。また、近年増加している格安スマートフォンの事業者は、契約者を増やすために本人確認の審査が甘く、詐欺グループの温床になっています。

さらに、詐欺グループが金銭を受け取る方法も、多様化しています。直接、グループの一人が被害者宅を訪れて金銭を受け取る方法や、振り込みによる方法に加えて、近年では、Amazonギフトカードなどの電子マネーで支払わせる方法や、コンビニエンスストアを利用する方法(収納代行利用型)も広がっています。

葉書を用いた特殊詐欺

上記のように、特殊詐欺では電話が用いられることが多いですが、最近では郵便葉書を用いた古典的な特殊詐欺が復活しています。「法務省管轄支局」や「民事訴訟管理センター」などを名乗り、葉書には「あなたの契約の相手方である会社から訴訟が提起されました」などという告知が書かれています。自分が訴えられていると思うと、不安になりますが、これらの葉書はすべて詐欺です。

告知の文言は抽象的で、具体的な相手方や契約内容は伏せられていることが多くあります。葉書に書かれた番号に電話すると、「有料サイトの利用料を払え」などと言われるようです。そもそも、「法務省管轄支局」や「民事訴訟管理センター」などという機関はありませんし、もしも実際に訴訟が提起された場合には裁判所から連絡が来ますが、それは一般郵便ではなく、特別送達という書留によって行われます。また、葉書には不動産等の財産を差し押える旨が書かれている場合がありますが、いきなり強制的に差押えされることもありません。これらの葉書は、専門家が見れば本物か偽物かは瞬時にわかります。不安であれば一度、弁護士にご相談ください。

詐欺グループのアルバイト

さて、このような特殊詐欺の被害者にならないよう、身に覚えがないのにお金を振り込まないなど、気をつけることはもちろんですが、特殊詐欺の加害者、つまり詐欺グループの一員とならないように注意することも重要です。

詐欺グループの幹部は、犯行計画を立て、メンバーに指示を与えるのみで、実際に振り込め詐欺の電話をしたり、口座から現金を引き出したりするわけではありません。これらの行為を行うのは、末端の若い暴力団員や、アルバイトなどです。電話をする者を「かけ子」、銀行で現金を引き出す者を「出し子」、被害者から直接、現金を受け取る者を「受け子」と呼びます。これらの仕事への報酬は一般的に非常に高く、それに飛びついて仕事の内容をよく理解しないままに、あるいはこれらの行為が犯罪であることを知らないままに、「かけ子」や「出し子」、「受け子」の仕事を引き受けてしまう人が少なくありません。また、銀行口座を開設し、それを売買させるアルバイトも存在します。後述のとおり、銀行口座の売買は犯罪です。近年のネット銀行では、インターネット上で簡単に口座を作成できますが、売買された銀行口座は振り込め詐欺等で現金をやり取りするために用いられます。

かけ子・出し子・受け子はどのような罪に問われるのか?

これらの行為は、詐欺罪(刑法第246条)に該当します。

刑法第246条(詐欺)
1 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

もっとも、「出し子」が銀行の窓口で現金を引き出した場合には、銀行の窓口の担当者が1項の「人」に当たるため、詐欺罪に該当しますが、ATMから現金を引き出した場合は、詐欺罪ではなく、窃盗罪が成立します。

刑法第235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

なお、詐欺罪と窃盗罪の違いは、法定刑です。窃盗罪には懲役刑と罰金刑がありますが、詐欺罪には懲役刑しかありません。オレオレ詐欺などの詐欺事犯は、人を錯誤に陥らせることによって多額のお金を騙し取る、非常に悪質な犯罪であることから、その刑罰は年々、重罰化しています。また、犯行計画を立案し、実行者に指示を行う詐欺グループの幹部だけでなく、実際に電話を掛けたり、現金を受け取ったりする末端の「かけ子」、「出し子」、「受け子」にも重罰が科される傾向にあります。

詐欺に末端で協力したこれらの者にも、執行猶予の付かない実刑判決が下ることが珍しくありません。また、組織ぐるみの詐欺事犯に対し、組織犯罪処罰法が適用されれば、刑罰はさらに重くなります。しかしながら、適切な弁護活動を行うことにより、無罪を勝ち取ったり、執行猶予を獲得したりすることも可能です。

近年、福岡地裁では、詐欺については何も知らなかった、と主張する被告人には詐欺の故意はなかったとして、無罪が言い渡されました。このように、自分の知らない間に詐欺グループの一員となってしまった場合には、無罪判決が得られる可能性もあります。

銀行の口座売買はどのような罪に問われるのか?

まず、口座の売買は、預金契約の約款で禁止されています。したがって、売買する目的で新たに預金口座を開設すれば、詐欺罪(刑法第246条)が成立します。また、犯罪による収益の移転防止に関する法律第28条が適用される場合もあります。

犯罪による収益の移転防止に関する法律第28条
1 他人になりすまして特定事業者(中略)との間における預貯金契約(中略)に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として、当該預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報その他特定事業者との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けるために必要なものとして政令で定めるもの(中略)を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。(後略)

なお、このように刑事罰を受ける可能性があるだけでなく、その銀行では今後一切、口座を作ることができません。また、警察の名簿に名前が載り、他の銀行においても、預金口座開設等の取引ができなくなる可能性もあります。

移動型の特殊詐欺に加担してしまったら、どのような罪に問われるのか?

「かけ子」や「出し子」などとして、詐欺に直接関与せずとも、移動型の犯罪グループに対して、アジトとなる場所や自動車等を提供した場合、幇助犯として、処罰される可能性があります(刑法第62条1項)。この場合、実行者(正犯)よりも、罪は軽くなります(刑法第63条)。

刑法第62条(幇助)
1 正犯を幇助した者は、従犯とする。
2 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。

刑法第63条(従犯減軽)
従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。

なお、有期懲役の減軽は、長期及び短期の2分の1を減らすことになっているので(刑法68条3号)、10年以下の懲役を法定刑として定めた詐欺罪の場合は、5年以下の懲役となります。

刑法第68条(法律上の減軽の方法)
3 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。

もちろん、詐欺グループによって、アジトとして使われると知らずに場所を提供した場合は、故意がないため、罪に問われることはありません。

詐欺で逮捕されてしまったら

「かけ子」や「出し子」などの末端関与者として詐欺罪で警察に逮捕されてしまった場合、接見禁止処分となるケースが多く、勾留決定までの最大72時間以内は、弁護士以外の者との接見ができません。弁護士が取調べ時の注意事項をアドバイスしたり、今後の動きについて説明したりする必要があります。

なお、逮捕された場合の対応について、事前に詐欺グループの上層部から説明を受けている場合があります。「組織について話すな」や「組織内の情報を警察に流せば出所後に報復する」などが考えられます。これらへの対処についても、事案に応じて弁護士が適切なアドバイスをする必要があります。警察や検察に適切な供述を行うことで、不起訴処分等が得られる場合もあります。

また、詐欺事犯においては、頼んでもいない弁護士が接見にやってくることがあります。これは、詐欺グループに雇われた弁護士で、弁護活動と称して捜査状況を把握し、グループに情報提供することが目的です。必ずしも被疑者・被告人とされた者に有用な弁護活動を行うとは限りません。当然ではありますが、当所の弁護士は、犯罪グループとは、一切の関わりがありませんので、自らや家族等の依頼もないのに、突然、接見に訪れることは決してありません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。特殊詐欺の手口は年々、複雑化しており、詐欺の被害者になるばかりでなく、加害者になってしまう可能性も身近に潜んでいます。万が一、加害者として逮捕された場合には、弁護士が迅速な接見を行い、適切なアドバイスをすることによって、罪を軽くしたり、無罪判決を勝ち取ったりすることが可能となります。また、被害者への謝罪や賠償なども、刑の減軽のための重要なポイントです。

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