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最新判例平成27年2月3日 – 死刑に処した裁判員裁判による第1審判決を職業裁判官のみで構成される上訴審で破棄することの許否および死刑選択の基準が問題となった事案(松戸事件)

死刑に処した裁判員裁判による第1審判決を職業裁判官のみで構成される上訴審で破棄することの許否および死刑選択の基準が問題となった事案(松戸事件)

千葉県松戸市内のマンションの当時21歳の女性方居室に侵入した上、同女に対し、暴行脅迫を加え、その犯行を抑圧して金品を強取するとともに、殺意をもって同女を包丁で3回突き刺し、殺害のうえ、強取したキャッシュカード等を使用して、現金窃盗に及び、翌日、上記強盗殺人の犯跡を隠蔽しようと企て、現に15名が住居に使用する上記マンションに放火するとともに、同女の死体を焼損した(松戸事件)。

また、松戸事件の前後約2カ月間に、住居侵入の上、窃盗(3件)、住居侵入の上、強盗致傷(1件)、住居侵入の上、1名に対し強盗致傷、他の1名に対し強盗強制性交等(旧 強姦)、監禁、強取したキャッシュカード等を使用した現金窃盗(1件)、住居侵入の上、強盗強制性交等(旧 強姦)未遂(1件)の各犯行に及んだ。裁判員裁判による第1審判決は死刑判決を言い渡したが、弁護側が控訴し、控訴審では同判決を破棄、無期懲役に処したため、検察と弁護側双方が上告した事案。

判旨(最判 平成27年2月3日)

第1審判決を破棄して無期懲役に処した原判決は、第1審判決の…判断が合理的ではなく、本件では、被告人を死刑に処すべき具体的、説得的な根拠を見いだし難いと判断したものと解されるのであって、その結論は当審も是認することができる。したがって、原判決の刑の量定が甚だしく不当であり、これを破棄しなければ著しく正義に反するということはできない。

コメント

裁判員制度と控訴審の役割について

この事件は第1審の裁判員裁判で死刑が宣告されたものの、控訴審でそれが破棄され無期懲役とされたというものです。裁判員裁判は刑事裁判に国民の良識を反映させるという趣旨で導入されたはずであるのに、それが控訴審の職業裁判官の判断のみによって変更されるのであれば裁判員裁判導入の意味がないのではないかと批判され、社会的な注目を集めました。

これを受け、補足意見において、裁判員制度と控訴審の役割について、(1)裁判員制度は、刑事裁判に国民が参加し、その良識を反映させることにより、裁判に対する国民の理解と信頼を深めることを目的とした制度であること、(2)我が国が採用した裁判員制度は米国の陪審制度と異なり、裁判員が参加した裁判であっても、それを常に正当で誤りがないものとすることはせず、事実誤認や量刑不当があれば、職業裁判官のみで構成される上訴審においてこれを破棄することを認めるという制度であること、(3)裁判員制度は(2)のような形で国民の視点や感覚と法曹の専門性とが交流をすることによって、相互の理解を深め、それぞれが刺激し合って、それぞれの長所が生かされるような刑事裁判を目指すものであり、このような国民の司法参加を積み重ねることによって、長期的な視点から見て国民の良識を反映した実りある刑事裁判が実現することが述べられました。

死刑という量刑の選択について

また、この事件では、死刑という量刑を選択すべきか否かが問題となりました。
被告人を死刑に処した第1審は、「本件に特有の事情を考慮すると、殺害された被害者が1名であることや、殺害行為自体に計画性があったと認められないことは、それぞれ重要な事情ではあるものの、被告人に対しては極刑を回避すべき決定的事情とまではならない」としました。

これに対し、最高裁は、「犯行の罪質、動機、計画性、態様殊に殺害の手段方法の執よう性・残虐性、結果の重大性殊に殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等」を考慮すべき事情としたうえ、「早い段階から被害者の死亡を意欲して殺害を計画し、これに沿って準備を整えて実行した場合には、生命侵害の危険性がより高いとともに生命軽視の度合いがより大きく、行為に対する非難が高まるといえるのに対し、かかる計画性があったといえなければ、これらの観点からの非難が一定程度弱まるといわざるを得ない」として、計画性を重視すべきことを指摘しています(控訴審は計画性を重視すべき理由については言及していないものの、本決定と同様の基準で量刑を判断したものと考えられます)。
被告人を死刑に処した第1審と、無期懲役に処した控訴審判断を維持した本決定では、犯行の計画性を重視すべきか否かについて判断が分かれたものとみることができます。

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