刑事施設に収容されている者に対する届出住所への書留送達の有効性
再審を申し立てていた被告人に対して再審請求棄却決定が送達されるにあたり、申立人が別件で逮捕勾留されていたために住所に書留送達されたことについて、送達は無効であるとして特別抗告した事案。
判旨(最判 平成27年3月24日)
「本件抗告の趣意は、単なる法令違反の主張であって、刑訴法433条の抗告理由に当たらない。(中略)申立人は、自ら再審請求をしたにもかかわらず、前記住居変更の届出書を提出した後、原々決定謄本について本件付郵便送達がなされるまで、裁判所に対して住居等の変更届出や連絡をしてこなかった一方で、原々審は、申立人の所在を把握できず、他に申立人が別件で刑事施設に収容されていることを知る端緒もなかったのである。このような事実関係の下では、本件付郵便送達は、刑訴規則62条1項の住居、送達受取人等の届出を申立人が怠ったことを理由に同規則63条1項により申立人本人を受送達者として前記届出住居に宛てて行ったものと理解することができ、再審請求をしている申立人が実際には別件で刑事施設に収容されていたとしても、有効と解するのが相当である。」
コメント
まず、特別抗告は憲法違反や判例等に反する場合に認められます(刑訴法433条1項、405条)。本件で再審申立人が主張していたのは送達の違法であるため、単なる法令違反として抗告事由には該当しません。
次に、本判決は職権で送達の有効性についても判断しています。書留送達は住所を届け出る義務を負う者が「届出をしないとき」にできるとされています(刑訴法規則63条1項本文)。本件では申立人が送達当時に刑事施設に収容されていたため所在が変わっています。それにも関わらず申立人は住居等の変更を伝えておらず、裁判所としても別件の逮捕勾留の場合には申立人からの連絡以外に住居の変更を知る手段がないことから、「届出をしないとき」にあたると判断されました。