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最新判例平成28年3月24日

事案

被告人X及びYは、共謀の上、被害者Aに対して第1暴行を加え傷害を負わせ、さらに被告人Zは、Aの頭部顔面を多数回蹴りつける等の第2暴行を加えて、これら一連の暴行によりAは急性硬膜下血腫の傷害を負い、死亡した。第1審判決は、仮に第1暴行で既に死因となった傷害が発生していても、第2暴行は、同傷害をさらに悪化させたと推認できるから、刑法207条の適用をする前提が欠けるとした。控訴審判決は、第1審判決を破棄し、地方裁判所に差し戻しを命じたため、被告人らが上告した事案。

判旨(最判 平成28年3月24日)

同条(刑法207条)の適用の前提として、検察官は、各暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するものであること及び各暴行が外形的には共同実行に等しいと評価できるような状況において行われたこと、すなわち同一の機会に行われたものであることの証明を要するというべきであり、…証明された場合には、各行為者は、同条により、自己の関与した暴行が死因となった傷害を生じさせていないことを立証しない限り、当該傷害について責任を負い、更に同傷害を原因として発生した死亡の結果についても責任を負うというべきである。

コメント

本件は、①刑法207条の適用があるか、②「同一の機会」といえるかの2点が問題となった事案です。①刑法207条は、暴行と傷害との間に必要となる因果関係についての挙証責任を転換した規定と考えられています。このような趣旨からすれば、仮に第1審の認定するような事情があるとしても、結局第1暴行の因果関係を否定する理由にはならず、同条の適用がなくなるという理解にはならないはずでしょう。②「同一の機会」は、各暴行の時間的場所的な近接性を考慮の上、外形的に共同実行に等しいといえるかどうかで判断されます。

第1審は、時間的場所的な近接性を肯定しながら、X及びYは、Zがさらに第2暴行のような激しい暴行に及ぶことは予期できなかったとして「同一の機会」を否定しています。他方で、控訴審は、第1暴行に至った事情と第2暴行に至った事情とは、相応に共通するところがあるとして、「同一の機会」を肯定しています。両判決において、着目している要素は異なりますが、要するに、外形的に共同実行に等しいと評価できるか否かがポイントです。今後も判例の動向に注意する必要があるでしょう。

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