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横領罪で逮捕されたら

横領罪とは、「他人の占有に属していない他人の物を不法に領得する」犯罪であり、刑法第38章に規定されています。
横領罪には、単純横領罪、業務上横領罪、遺失物等横領罪の3類型があり、罰則が異なっています。

また、これら横領罪類似の犯罪として「窃盗罪」や「背任罪」があります。
ここでは、最も典型的な業務上横領について、どのようにして事件が発覚し、警察が捜査をし、検事が起訴不起訴を決め、裁判となるのか、その中で弁護士がどのような役割を果たすのかについて、代表弁護士・中村勉が解説します。

横領罪の疑いで社内調査

横領事案で最も典型的なのは会社員が会社のお金を着服することです。業務上横領とされ、懲役10年以下の刑になり、金額にもよりますが、示談ができなければ実刑判決を受け、刑務所で服役しなければなりません。

このような業務上横領罪をはじめとする横領罪は、どのようなプロセスで発覚するのでしょう。

会社での着服横領事案は、警察が最初に事件を認知するということはありません。会社内部の犯罪であり、最初に、会社が財務監査等で横領の事実を認識するのが一般的です。
被疑者は同じ会社内の人間であり、通常は会社内部で顧問弁護士を交えた社内調査が行われ、証拠が出そろった最終段階で容疑をかけられた会社員がヒアリングを受けます。顧問弁護士が同席することが多いです。このヒアリングで当該会社員が事実を認めれば、自白を内容とする上申書等が作成され、署名押印を求められます。

次に会社がとる行動は、すぐに警察に被害届を出すというものではありません。すぐに警察沙汰にしてしまうと、横領被害金の回収が出来なくなり、また、報道で横領スキャンダルが世間に知れると会社の信用問題にもなりかねないです。

そこで、何度か容疑者に対するヒアリングが繰り返され、被害金額を特定します。預金通帳などの様々な証拠物の提出を求められることもあります。もちろん横領金の使途も聞かれます。

こうして社内調査で明らかになった被害金額と、容疑者の供述にかかる金額が一致するか吟味され、その返還請求がなされます。返金がないと警察に告訴すると告げられることもあるでしょう。

弁護士に対応を相談

この段階で至急弁護士に相談をすべきです。なぜなら、多くの場合、会社が提示する横領被害金額と容疑者の認識している金額とは一致しないからです。
会社は無理矢理一致させようとするかもしれません。容疑者は犯罪を起こし、会社を裏切ったという気持ちから立場が弱く、会社の言いなりに、身に覚えもない横領事実まで認めてしまう可能性があります。

実は、会社の財務監査で明らかになった使途不明金は必ずしも当該容疑者がすべて横領したお金であるとは限らないのです。ほかの会社員が着服した金額が含まれているかもしれず、また、記帳する段階でのミスなのかもしれません。

それらすべてを当該容疑者が着服したお金であると断定され、仮にその後、その巨額の金額を基に告訴されて裁判になった場合に、本来、執行猶予を獲得できる程度の被害金額であるのに、身に覚えのない事実で全責任を被せられ、実刑判決を宣告される可能性があるのです。

ですから早急に弁護士に相談すべきです。弁護士を立てて会社側と示談交渉をしてもらうべきです。弁護士であれば、横領事実につき、会社側にその事実の疎明資料や証拠の提示を求めるでしょうから、会社も慎重になり、確実な証拠があるもののみを本人の着服横領にかかる被害金額であると認定し直すこともあるのです。

弁護士を介した示談により逮捕を回避

既に説明したように、事件発覚が警察ではなく、会社であるということは、逆に言うと、示談により警察沙汰にならずに解決するチャンスがあるということを意味します。会社によっては、示談によって被害金額を回収できたとしても、けじめとして刑事告訴をし、処罰を求めるという会社もあります。

しかし、先ほども述べたように、着服横領の事実を新聞報道等によって世間に知られたくないという心情もあります。着服を赦すような経理管理体制の甘さを指摘されることもあるからです。

ですから、とにかく示談成立を目指して、弁護士を介し、会社側と交渉することが重要です。現に、当事務所が取り扱った案件の中には、警察への刑事告訴前に示談が成立し、刑事告訴を見送り、懲戒解雇で済んだという事例も何件もあります。着服金額が多額に上り、一括では返済できず、分割にて支払い、示談を成立させたという事例もありました。

このように、財産犯である横領罪では、被害回復が何よりも重要であり、そのことは、仮に刑事告訴され、逮捕され、裁判にかけられた場合も同じです。最悪でも示談によって実刑回避を図ることができるのです。

横領罪で逮捕されたら

では、示談原資がないなどの理由で会社との交渉が難航し、会社も被害金を回収できないと判断して刑事告訴、そして逮捕された場合にはどうなるのでしょうか。

一般に、警察に逮捕されると、警察官は、48時間以内に検察官に送致し、検察官は、勾留の必要があると判断すれば、24時間以内(逮捕から72時間以内)に裁判所に勾留請求をすることとなり、勾留請求が認容された場合には、まずは10日間身柄拘束され、検察官による勾留延長請求が認められれば、更に原則として最長10日間の身柄拘束がなされます。

横領罪で逮捕された場合の弁護活動

もし横領容疑に身に覚えがなく、そのために逮捕前に会社と示談できずに逮捕されてしまった場合は、事実を争います。

もっとも、横領事案の場合、窃盗などと異なり、犯人が全くの別人であり、冤罪であるという例は少ないです。あるとすれば、会社が国税の査察を受けて巨額の使途不明金が発覚し、実は会社幹部の不祥事であるにもかかわらず、従業員一人にその責任を押し付けるというケースや、税金逃れのために売上除外をし、その分を従業員の給料つまり経費として計上して、後に幹部に還流させるなどのケースがあります。

しかし、完全な冤罪事件というのは例が少なく、多くの場合、被害金額に関する否認であり、そのために逮捕されるというケースです。また、自白のケースであっても、被害額が数千万円といった多額である場合には、その重大性から逮捕されるでしょう。

そして、逮捕された場合の弁護活動は、やはり示談交渉となります。会社に発覚してから刑事告訴、逮捕に至るまでは、長期間かかります。数か月はかかるでしょう。その期間を利用して金策をし、なるべく多くの示談原資を確保する必要があります。いかに優勝な弁護士であっても示談原資なく、示談交渉を成功させることはできません。

示談に成功したならば、検事が不起訴という判断をする可能性が高まります。不起訴となれば前科が付かないのです。
最後に、横領罪の種類や背任罪など他の犯罪との違いを説明します。

横領罪の種類

まず、横領罪の3類型について説明します。

単純横領罪(刑法252条)

単純横領罪は、自己の占有する他人の物を不法に領得する犯罪です。例えば、友人から預かった現金を自分の用途に使った場合や、図書館で借りた本を無断で他人に売った場合などが挙げられます。
単純横領罪の罰則は、5年以下の懲役です。

業務上横領罪(刑法253条)

業務上横領罪とは、上記の単純横領罪のうち、領得した物が業務上の委託信任関係に基づいて占有した物であった場合に成立する犯罪です。例えば、代引きの集金をした荷物配達人が顧客から預かった現金を自分の用途に使った場合や、会社の経理担当者が管理していた会社の銀行口座から自分の口座に現金を振込送金して自分のものにした場合などが挙げられます。

なお、「業務」とは、職業として行われている場合だけではなく、人が一定の立場に基づき継続して行うものを広く含みます。業務上横領罪の罰則は、10年以下の懲役と単純横領罪より重くなっています。

遺失物等横領罪(刑法254条)

遺失物等横領罪とは、占有者の意思によらずに占有を離れ、まだ他の誰の占有下にもない物を領得した場合に成立する犯罪です。例えば、公道上に落ちていた財布を拾って自分のものにした場合や、公道上に乗り捨てられていた盗難自転車を乗り回した場合などが挙げられます。

遺失物横領罪の罰則は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料と、単純横領罪より軽くなっています。

上記のとおり、遺失物横領罪には罰則として懲役刑のほか罰金・科料が規定されていますが、単純横領罪と業務上横領罪には罰金刑がなく、懲役刑のみが規定されていることに注意が必要です。

横領罪、窃盗罪、背任罪の違い

横領罪類似の財産犯として「窃盗罪」と「背任罪」があります。これらとの違いを順に説明します。

窃盗罪と横領罪

まず、窃盗罪と横領罪の違いを見ていきましょう。これらの違いは、不法に領得した他人の物が自分の占有下にあったか否かです。他人の占有下にある物、例えば「他人の家の中にある他人の物」を自分のものにすれば窃盗罪であり、自分の占有下にある物、例えば「他人から預かった物」を自分のものにした場合は横領罪です。

背任罪と横領罪

次に、背任罪と横領罪の違いを見ていきましょう。背任罪は、刑法第247条に規定されており、「他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り、又は本人に損害を与える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたとき」に成立する犯罪です。

簡単にいうと、他人から任されている職務に背き、他人に損害を与える犯罪(信任関係違反による財産侵害)です。横領罪も、その所有者から信任を受けて預かった物を領得する罪ですから、信任関係違反である点は共通していますが、特定の財物を権限なしに領得する場合は横領罪のみが成立します。背任罪は、本人の名義・計算で本人の全体財産に損害を与えた場合に成立するとするのが判例です。

例えば、融資担当の銀行員が、回収の見込みのない顧客に対し、それと知りながら何らの担保も取らずに銀行から融資する場合などです。

見ていただいたように、横領罪、窃盗罪、背任罪は、その区別に専門的な法律知識が必要であり、自分が一体どのような罪を犯したとされているのか、誰に対しどのような対応を取るべきか、立件可能性や予想される刑期はどの程度なのかなどを的確に把握するためには、早い段階からこうした犯罪に精通した弁護士に相談することが必要不可欠です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。横領の疑いをかけられた場合、その類型、態様、金額等にも拠りますが、立件・逮捕・勾留・起訴され、有罪となれば実刑になるおそれがあります。
しかし、適切な弁護活動をして相手方との示談をすることなどにより、立件されず、立件されても逮捕・勾留・起訴されず不起訴処分を獲得したり、有罪でも執行猶予が付いた判決を獲得できる可能性が高まります。
横領罪の疑いをかけられたら、一刻も早く専門的知識・経験を持つ弁護士にご相談ください。

当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。

  • 逮捕されるのだろうか
  • いつ逮捕されるのだろうか
  • 何日間拘束されるのだろうか
  • 会社を解雇されるのだろうか
  • 国家資格は剥奪されるのだろうか
  • 実名報道されるのだろうか
  • 家族には知られるのだろうか
  • 何年くらいの刑になるのだろうか
  • 不起訴にはならないのだろうか
  • 前科はついてしまうのだろうか

上記のような悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。

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刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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