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逮捕状 – 逮捕状の発行や有効期限等を弁護士が解説

逮捕状とは、捜査機関が逮捕する際に必要とされるものです。裁判官が、捜査機関に「逮捕していいよ」と判断したことを示すものです。

しかし、犯人が目の前にいるのに、逮捕状の発行に時間がとられていれば、犯人が逃げてしまいます。では、逮捕される際には必ず逮捕状が必要なのでしょうか。

逮捕状の発行の手続きはどれくらい大変なのでしょうか。一度発行しておけば、10年後でも20年後でも、犯人を見つけたらその逮捕状で逮捕できるのでしょうか。逮捕や、逮捕状について詳しく解説します。

逮捕される際には必ず逮捕状が必要なのか

先程もいったとおり、逮捕状を発行することに時間がとられていれば、目の前にいる犯人は逃げてしまいます。そこで、法律は、逮捕状なしに逮捕できる場合について定めています(憲法33条、刑事訴訟法210条、211条、212条、213条)。逮捕には種類があります。(1)通常逮捕、(2)現行犯逮捕(準現行犯逮捕)、(3)緊急逮捕です。

逮捕をする際には、原則として、逮捕状が必要とされます。逮捕状を裁判官に出してもらって、逮捕状に基づいてなされる逮捕が(1)通常逮捕です。(2)現行犯逮捕、(3)緊急逮捕はその例外として定められた種類の逮捕です。令状はいりません。このうち、(3)緊急逮捕は、逮捕する際には逮捕状は不要ですが、逮捕したあとに、逮捕状の発付を請求する必要があります。

通常逮捕とは?

「犯人が罪を犯したと疑うに足りる相当の理由(逮捕の理由)」がある場合であって、「逮捕の必要性」が認められる場合に、逮捕状があることを前提になされる逮捕です。これが逮捕の原則の形態です。

「逮捕の必要性」は、証拠を隠滅するおそれや、逃亡のおそれがない場合には否定されます。さらに、軽微な犯罪で、逮捕することがふさわしくないと考えられる場合にも、逮捕の必要性は否定されます。

逮捕できる人は、検察官、検察事務官又は司法警察職員に限られます。

司法警察職員…司法警察員、司法巡査を合わせたもの。警察官、麻薬取締官、海上保安官、労働基準監督官などをいう。

現行犯逮捕とは?

犯人が目の前で犯罪行為を行っている場合にされる逮捕のことです。現行犯逮捕では、「犯罪と犯人が明白であること」、「犯行から時間がたっていないこと」、「逮捕の必要性」が要件となります。

犯行が目の前で行われている場合、誤認逮捕のおそれがありません。また、すぐに逮捕しなければ犯人が逃げてしまうため、例外的に、現行犯逮捕は逮捕状がなくても行うことができます。現行犯逮捕は他の種類の逮捕と違い、だれでもすることができます。

緊急逮捕とは?

死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役もしくは禁錮にあたる罪についての犯人を逮捕する場合で、逮捕状を請求する時間がない場合には、逮捕状なしに逮捕することができます。これを緊急逮捕といいます。緊急逮捕をする際には、逮捕状は不要です。

たとえば、凶悪な連続殺人犯と偶然出くわしたときに、逮捕状がないから逮捕ができない!となれば、凶悪な連続殺人犯を捕まえるせっかくの機会を逃してしまいます。もし、その連続殺人犯がこれからも殺人をする可能性がある場合、逮捕状を持っていないというだけで、市民を危険にさらすことになります。それでは困ります。

そこで、法律は、重大な犯罪についての犯人に限り、逮捕状を請求するひまがない場合には、逮捕状なしに逮捕できることをさだめています。もっとも、現行犯逮捕とちがって、犯行現場を見ていたわけではないので、誤認逮捕のおそれは否定しきれません。そのため、後から逮捕状を請求し、裁判官に審査してもらう必要があります。ただし、逮捕できる人は、検察官、検察事務官、司法警察職員に限られます。

逮捕状がある場合の逮捕の手続き

逮捕は、逮捕状を示してされなければなりません。ただし、逮捕状が発付されているのに、手元にない場合であって、急速を要する場合には、逮捕状が発付されていることを述べて逮捕することができます。これを緊急執行といいます。逮捕状が発付されている時点で逮捕するので、逮捕状の発付前にすることができる緊急逮捕とは別物なので、注意が必要です。

逮捕状はどんな風に発行されるのか

逮捕状の請求

逮捕状を請求することができる人は限られています。
検察官、司法警察員(警察官たる司法警察員については指定警部以上の者にかぎる)(刑事訴訟法199条2項本文)です。指定警部とは、警察署で課長、警察本部で係長相当職を務める者をいいます。
警察官であればだれでも逮捕状を請求することができるわけではないのです。
※司法警察員…一般警察職員のうち、巡査部長以上の階級の者

必要書類

逮捕状を請求する際には、逮捕状請求書、そして、逮捕の理由、逮捕の必要性を認めるべき資料をつけて裁判官に請求します(刑事訴訟規則143条、刑訴199条2項)。

逮捕状請求の相手

逮捕状の請求は、裁判官にします。どの裁判官に請求すればいいかも決まっています。請求者所属の官公署所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所の裁判官です。少年事件については、家庭裁判所の裁判官も含まれます。請求があれば数通発付されることもあります。

逮捕状発付の手続

裁判官は、必要と認めるときは、逮捕状の請求をした者の出頭を求めてその陳述を聞き、又はその者に対し書類その他の物の提示を求めたり(刑事訴訟規則143条の2)、取り調べを行ったりすることもできます(刑事訴訟法43条3項)。そこで、逮捕の要件(逮捕の理由、必要性)が認められれば、裁判官は逮捕状を発付します。

小括

このように、逮捕状を発付してもらうには、裁判官に資料を提出して吟味してもらわないといけません。目の前に犯人がいる場合、逮捕状を発付してもらっている間に犯人に逃げられてしまうのです。

逮捕状に有効期限はあるのか

逮捕状には、このような記載があります。「有効期間経過後は、この令状により逮捕に着手することができない。」つまり、逮捕状には有効期限があります。いつか目の前に犯人が現れたときのために逮捕状をとっておいても、有効期限がきれればその逮捕状で逮捕することはできないのです。

有効期限は原則として7日です。もっとも、裁判官が相当と認めるときは7日を超える期間を定めることができます(刑事訴訟規則300条)。この有効期間が切れれば、逮捕状を裁判所に返還しなければなりません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。テレビドラマで逮捕されるシーンを見ていても、逮捕状がある場合と、「現行犯で逮捕する!」といって逮捕状なしに逮捕されている場合があるかと思います。結局、逮捕は逮捕状がいるのか、いらないのか、混乱してきますよね。この記事を読んでいただき、逮捕には逮捕状が必要な場合と、逮捕状がいらない場合があることがわかっていただけたかと思います。

何もしていないのに、いきなり警察官と名乗る人が逮捕しにきたとき、逮捕状がなければその逮捕は違法の可能性があります。逆に、犯罪をしたところを見られて、そのまま逮捕された場合に、「逮捕状はあるのか!」などと言っても見当違いだということになります。現行犯逮捕は逮捕状がなくてもすることができますからね。

逮捕は、警察官などの職業につかない限り、多くの人にとっては無縁の仕組みで、知る機会もないかと思います。この記事を読んで、少しでも無縁の世界について知識が増えたと思って頂ければ幸いです。逮捕に無縁ではなく、いままさに逮捕の関係でお困りの方は迷わず弁護士にご相談ください。

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