法律相談Q&A

Q.
(裁判員裁判02)裁判員裁判で被告人を黙秘させることは有効か

A.

 刑事事件においては,被疑者・被告人に黙秘権が保障されています。この黙秘権というのは,被疑者・被告人が取調べや公判廷において終始沈黙することができるという権利であり,被告人は,公判廷における被告人質問等において,個々の質問に対しても陳述を拒むことができます。
 このように,被疑者・被告人に黙秘権が保障されているのは,被疑者・被告人が国家権力の発動としての捜査,起訴,公判を受ける弱い立場に置かれており,被疑者・被告人に対して過度な人権侵害が及ばないようにするためです。そもそも,国家権力であっても,人の内面に入り込んで,強制的にその内面を調べることは許されません。被疑者・被告人が自分の知っていることを話すかどうかは自分で決めるべきことであって,強制されるべきことではないのです。
このような黙秘権は,弁護人選任権と並んで,被告人が公正な裁判を受けるためには,極めて重要な権利です。

 このように,黙秘権を行使することは極めて重要ですが,そうだとしても,裁判員裁判において,被告人に黙秘権を行使させることは,果たして有効なのでしょうか。
 確かに,裁判官の裁判であろうと,裁判員裁判であろうと,被告人に黙秘権は保障されています。そして,被告人が黙秘権を行使したことそれ自体を捉えて,被告人に不利な判断を下すことは許されません。
 しかし,裁判員にとって,黙秘権というものがすんなりと理解できるかというところは難しい部分もあります。裁判員裁判においては,裁判が始まる前に,裁判長から被告人に黙秘権があることや黙秘したときの扱いをどうするかということについて,裁判員に分かりやすく説明されます。ただ,日本人は,昔から,「人は常に正直であれ」とする感覚が染みついています。仁,義等の人倫道徳が重んじられる感覚は,現代に至るまで色濃く続いており,正直に話すことが美徳とされているのです。そのため,被告人が何の理由も告げずに,ただ「黙秘します」といい切ったような場合,裁判員は,どうしてもギャップを感じて,戸惑うことになるのではないでしょうか。そして,どちらかというと,被告人に対して否定的な感覚になってしまうのではないでしょうか。
 このような観点からしますと,事件の性質にもよりますが,裁判員裁判においては,被告人にある程度しっかりと話させる方がいいような気がします。

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