法律相談Q&A

Q.
(裁判員裁判15)被告人関係者が裁判員を威迫した場合の手続きについて

A.

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下,「裁判員法」)107条1項は,被告事件に関して,その審判に係る職務を行う裁判員に対し,「威迫の行為」をした者は,二年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられる旨規定しています。ここでの「威迫」とは,裁判員に対し,言語挙動によって気勢を示し,不安の念を生じさせる行為をいいます。
 特定危険指定暴力団「工藤会」系幹部(以下,「本件被告人」という。)が殺人未遂罪などに問われた福岡地裁小倉支部の裁判員裁判(以下,「本件被告事件」という。)で,本件被告人の関係者とみられる男が,審理を終えた裁判員に「よろしく」などと声をかけた行為は,「威迫」行為にあたるとして,裁判員法107条1項に違反する可能性があります。なぜなら,裁判員に対し,本件被告人の関係者であると思われる男が「よろしく」と申し向けることは,その暴力団的背景をもとに行った言動であって,このような気勢を示されることで,裁判員が評決(有罪かどうか,量刑はどのくらいか等の判断)に当たり,本件被告人にとって有利な判断をしない場合には,裁判員自らの自由・安全が脅かされるのではないかと感じ,不安の念を生じさせることとなる行為に当たるとも考えられるからです。
 このように,裁判員に対する「威迫」行為がなされた場合につき,被告事件の審理・判決をどのようにすべきかについては,現行制度は規定を設けていません。それは,裁判員に危害が加えられるおそれがあるような事件については,裁判員裁判の対象とせず(裁判員法3条1項),裁判官のみが当該事件を取り扱うとすることで,こうした事態を回避しうると立法制定時に判断されたためであると考えられます。
しかし,本件では,裁判員裁判対象事件(裁判員法2条1項1号)から除外されることのないまま,裁判員裁判が行われ,判決期日が設けられたところ,上記事態が生じたのです。このような事態については,今までに生じたことがなかったため,ひとまず判決期日を取り消すという判断を福岡地裁小倉支部は下したものと考えられます。

 今後については,本件被告事件を裁判員裁判の対象事件から除外する旨の決定(裁判員法3条4項・1項)を福岡地裁小倉支部で行うことで,裁判員らを本件被告事件から除外し,裁判官のみでの判決を行うこととなることも考えられます。しかし,本件では声掛けのみが行われたに過ぎないことからすれば,未だ「裁判員の生命,身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ」や,その「生活の平穏が著しく侵害されるおそれ」裁判員法3条1項)はないものとして,対象事件からの除外をすることはせず,現在の裁判員を構成員としたまま判決を下すことも十分にあり得ると考えられます。

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