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麻薬で逮捕されたら? 弁護士が解説

麻薬は高度の依存性があり、誰にも知られず隠れて入手使用しているので、また誰にも知られずに自分でこれを止めることもほぼ不可能です。
逮捕されて初めて問題の大きさや周囲への影響の甚大さに気づくのです。麻薬で逮捕されてしまった場合はどのように事件が進んでいくのか、不安な状況に置かれることになるでしょう。

今回は、麻薬事件での逮捕の手続についてはもちろん、そもそも麻薬とされているドラッグはどのようなものが存在しているのか、麻薬の危険度とはどのようなものか、また、それに伴う罰則規定についても紹介します。
麻薬事件で弁護士がどのような活動を行うのかといったことは事件の当事者にならない限りなかなか知り得ることはありません。
しかし、それでは遅いという方、今すぐ知りたいという方もいらっしゃると思います。今回は、麻薬で逮捕された場合の弁護活動について代表弁護士・中村勉が解説いたします。

麻薬と規定される薬物とは

そもそも法律で規制されている「麻薬」とはどのような薬物なのでしょうか。
「麻薬」にあたる薬物とは、麻薬及び向精神薬取締法(以下、「麻向法」といいます)の2条1号により「別表第一に掲げる物」として指定されたものをいい、具体的には、ヘロイン、コカイン、MDMA、LSDなどを指します。以下、順番に詳しくみていきましょう。

ヘロイン

あへんの誘導体であり、白色結晶の粉末で、その作用は鎮痛剤として使用されている「モルヒネ」と同様ですが、鎮痛、麻酔作用はモルヒネの4倍~8倍と強力で、呼吸抑制作用などの副作用も強く、毒性、依存性、禁断症状ともモルヒネに比べて著しく強い危険な薬物です。
そのため、他の麻薬よりも重い罰則規定が設けられています。詳しくは後述します。

コカイン

南米原産のコカの木の葉から得られる無色の結晶又は白色の結晶粉末です。全身適用により中枢神経興奮作用を有し、皮下注射や鼻腔内吸入等によって体内に吸収されると、知覚神経麻痺はもたらされず、主として中枢神経に対して初めは興奮、次いで麻痺的な作用を発現します。
コカイン中毒は、興奮と麻痺の両症状が相交錯して発現し極めて複雑な様相を呈します。精神不安や幻覚などから身体の衰弱、重篤な精神障害に陥り、性格の破綻を来たします。

LSD

いわゆる幻覚剤に属し、他の麻薬のような鎮痛、鎮静作用はありませんが、中枢神経系に興奮作用をもたらし、経口摂取することで特異な幻覚、幻視を伴う精神異常状態を引き起こします。LSDを連用すると耐性が発現し、精神依存が形成されます。そうなると、一般的には、全ての面で無気力になり、神秘的なものに興味を持つようになるとされ、また、自分自身特殊な能力に輝いているというような錯覚に捕らわれる人も多いです。
しかし、実際には能力の著しい低下がみられ、幻覚幻視からくる精神障害あるいは錯乱、分裂症状等の精神障害に陥ります。

MDMA

常温では白色結晶性の粉末ですが、一般的には錠剤やカプセルの形で密売されており、エクスタシー等と呼ばれることもあります。
分子構造は覚せい剤に類似しています。脳内のセロトニンを過剰に放出することにより、覚せい剤と同じような興奮作用とLSDのような幻覚作用を引き起こし、多幸感、他者との共有感をもたらすとされています。
脳や神経系を破壊するなどの悪影響があり、また、特に強い精神的依存症があり、濫用を続けると錯乱状態に陥るほか、腎・肝障害や記憶障害などの症状が現れることもあります。

参考文献:「シリーズ捜査実務全書8 薬物犯罪」東京法令出版

麻薬事件はどのように発覚するか

薬物事件全般的にいえることですが、職務質問により所持が発覚するケースが多いです。
また、捜査機関は検挙した被疑者に対し、取調べで薬物の入手経路を詳しく聴取しますので、芋づる式に譲渡した密売人が検挙されるケースも多いです。

麻薬の態様と法定刑

先ほど触れたとおり、ヘロインとその他の麻薬では罰則が異なります。また、営利目的の有無によっても、罰則が異なります。

ヘロイン

製剤・小分け・譲渡・譲受・交付・所持・施用は10年以下の懲役です(麻向法64条の2第1項、64条の3第1項)。これに営利目的が付くと、1年以上の有期懲役、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金です(同法64条の2第2項、64条の3第2項)。

輸出入・製造は1年以上の有期懲役です(同法64条1項)。これに営利目的が付くと、無期もしくは3年以上の懲役、又は情状により無期もしくは3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金です(同条2項)。

なお、法定刑に無期懲役がある場合、「裁判員裁判」の対象事件になります。裁判員裁判は一般の方が裁判員として裁判に参加する特殊な裁判であり、取扱い経験がある弁護士も限られてきます。

無罪主張をする場合はもちろん、情状弁護についても、裁判官だけでなく裁判員に主張を認めてもらうためには、通常の裁判では求められないプレゼンテーション能力や資料作成能力なども必要になってきます。
無罪主張する場合はもちろん、情状弁護に絞る場合であっても、なるべく裁判員裁判の取扱い経験のある刑事事件に精通した弁護士を選ぶことが望ましいでしょう。

コカイン、MDMA、LSD

製剤・小分け・譲渡・譲受・譲受・交付・所持・施用は7年以下の懲役です(麻向法66条1項、66条の2第1項)。これに営利目的が付くと、1年以上10年以下の有期懲役、又は情状により1年以上10年以下の有期懲役及び300万円以下の罰金です(同法66条2項、66条の2第2項)。

輸出入・製造は1年以上10年以下の有期懲役です(同法65条1項)。これに営利目的が付くと、1年以上の有期懲役、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金です(同条2項)。

以上のように、ヘロイン以外の麻薬では、同じ行為態様であってもヘロインに比べるといずれも法定刑が軽いことがわかります。裁判員裁判にもなりません。ただし、軽いといってもあくまでヘロインに比べれば相対的に軽いというだけであって、決して軽い罪というわけではありません

麻薬で逮捕された場合

逮捕・勾留される可能性が高い?

麻薬事件は、逮捕・勾留される可能性が高いです。
特に、職務質問時や捜索・差押え時に所持していた薬物は、その場で簡易鑑定され、そこで陽性反応が出れば、現行犯逮捕される可能性が高いです。

また、薬物そのものの捜索・差押えに加えて、尿検査を求められることが一般的であり、薬物使用の陽性反応が出れば、もし薬物自体が発見されなかったとしても、やはり現行犯逮捕される可能性が高いです。

麻薬で逮捕された場合の流れ

麻薬事件で逮捕された場合の手続については以下のとおりです。
所持量が少量の場合は10日間の勾留で済むこともありますが、多くの薬物事件において、薬物の正式鑑定に時間がかかることから検察官が勾留延長を請求します。延長期間は最大10日間となります。つまり、逮捕・勾留期間を併せて最大23日間身柄が拘束されてしまいます。

1種類の薬物の単純所持や使用の場合は1回の逮捕・勾留で済むことが多いですが、何種類もの薬物を所持や使用していた場合や、営利目的での大量所持など捜査に時間がかかる場合、別の被疑事実で再逮捕・再勾留され、追加でまた最大23日間身柄拘束される可能性もあります。ただし、逮捕された事件の全てが勾留されるとは限らず、勾留決定を争う手段もあります。

特に、所持量が少ない場合で採尿の捜索・差押えが完了していれば、隠滅すべき証拠がもはや残っていないことを強調し、勾留決定前であれば勾留請求却下を求める意見書を裁判官に、勾留決定後であれば勾留決定に対する準抗告申立書を裁判所に提出し、釈放を求めることが考えられます。勾留決定前に勾留請求却下を求める意見書を提出するためには、逮捕から2、3日しか時間がないため、すぐに動いてくれる弁護士に依頼することが必須です。

意見書の作成は、経験がある弁護士であればその事案で何を主張すべきであるかすぐにポイントがわかりますが、逆に経験がない弁護士に依頼してしまうと何を書いたらよいかすぐに判断できず、検討に時間がかかってしまい、裁判官の勾留請求決定の判断が下されるまでに意見書の提出が間に合わないというおそれもあります。

もちろん、弁護士を選ぶ時間も限られているため、何人もの弁護士を訪ね歩いてどの弁護士がよいかじっくりと比較検討する時間はありませんが、その事務所のホームページを見て、依頼を検討している弁護士に勾留請求却下や準抗告認容の実績があるかどうかを確認した方がよいです。そこまで具体的な実績は確認できなくても、最低限、その弁護士が普段刑事弁護を取り扱っているかは確認した方がよいでしょう。

起訴の可能性や、起訴後の流れ

正式鑑定の結果、所持、使用等していた薬物が法律で禁止されている麻薬等であることが間違いなければ、起訴される可能性が高いです。麻向法違反の起訴率は、統計によりますと、2018年は56.0%、2019年は59.9%、2020年は62.0%と半分以上の確率で起訴されており、しかも、起訴率が3年連続で増加しています。

出典: 検察統計調査 検察統計 被疑事件の罪名別起訴人員、不起訴人員及び起訴率の累年比較

ちなみに、同じ統計を見ると、覚せい剤取締法違反の起訴率は2020年で77.2%、2019年で75.7%、2018年が76.9%とやはり例年高く推移しており、やはり麻向法違反に限らず薬物事件の起訴率が高いことが伺えます。どうしてなのでしょうか。

薬物事件の大きな特徴は、特定個人の被害者がおらず、示談交渉ができないことです。特定個人の被害者がいる犯罪の場合、被害者と示談し、被害者が加害者の刑事処罰を望まない意思表示をすれば、犯罪の成立自体は明らかであったとしても、訴追の必要性がなくなり、不起訴になることがよくあります(「起訴猶予」といいます)。

例えば、特定個人の被害者がおり、示談交渉の有効性が高い犯罪を先ほどと同じ統計で見てみると、強制わいせつの起訴率は2020年で33.9%、強制性交等の起訴率は2020年で37.0%と、法定刑は薬物事件と比べて軽いとはいえない犯罪であったとしても、明らかに起訴率が低いことがわかります。示談交渉ができず、この起訴猶予が狙いにくい点が薬物事件の起訴率を上げている最大の要因であると考えられます。

起訴後は、裁判を待つことになりますが、その間は保釈が認められれば裁判が終わるまでの間、留置場を出ることができます。先ほどご紹介した勾留決定を争う弁護活動と比較すると、起訴状がもう裁判所に提出された後の段階であり、また、担保として保釈保証金を裁判所に預けることになるため、許可される可能性は高いです。どうしても保釈金が用意できないなどの事情があればやむを得ませんが、起訴後は速やかに保釈請求すべきです。

薬物事件では、示談交渉はできませんが、だからといって何もしなくてもよいというわけではありません。薬物事件は再犯率が高く、裁判官も再犯のおそれを強く懸念するため、再犯のおそれがないことを説得的に裁判で主張する準備が必要です。

麻薬事件の弁護活動

法律で禁止されている麻薬等をそうだとわかっていて所持や使用していたのであれば、最初からそのように認めた方が保釈許可される可能性や執行猶予の付く可能性が高いです。起訴されてから認めるという人がいますが、その場合、捜査段階の供述調書では認めていないことになるため、裁判が進まないと保釈が許可されない可能性が高くなり、また、裁判で「反省しています」と述べたとしても、やはり最初から素直に認めている人に比べれば裁判官の見る目も厳しくなります。

逆に、法律で禁止されている麻薬等をそうだとわかっておらずに所持や使用していたのであれば、その弁解が客観的に信用してもらえる内容であるかどうかを慎重に検討する必要があります。いくら「知りませんでした」と述べたとしても、その他の証拠関係からその弁解を排斥できると判断されれば、やはり、起訴され、有罪判決を受ける可能性が高く、しかも、「不合理な弁解に終始して反省の態度が見られない」などと判決理由に書かれ、当初から認めていた場合よりも重い刑を受ける可能性が高まります。「本当は知っていたけど、不起訴や無罪の可能性に賭けて知らなかったということにしよう」などと安易に考えるのは危険です。特に、本当は知っていたのであれば、他の事情からも知っていたはずであると認定される可能性が高いです。

麻薬等であることを本当に知らなかったのであれば、知らずにどうして法律で禁止されていて通常入手困難である麻薬等を所持や使用していたのかということを第三者が聞いても「それはあり得るな」と思えるような具体的かつ説得的な説明が必要になります。どのように説明するのが効果的かについては、弁護士とよく相談しましょう。

麻薬等であることを知っていたことは認めるが、捜査の適法性を争うということもあり得ます。先ほども触れたとおり、薬物所持は職務質問時や捜索・差押え時に見つかり、現行犯逮捕されるケースが多いですが、例えば、所持品検査や現行犯逮捕手続などの過程で捜査機関から令状なく留め置かれる、強引にパトカーへ乗せられるなどされた場合は、捜査が違法であると主張することが考えられます。そして、違法な捜査によって得た証拠は証拠能力が否定され、無罪となる可能性があります(違法収集証拠排除法則)。
ただし、違法収集証拠排除法則により無罪となるケースは、犯罪行為自体は立証できているのに敢えて無罪にするということになりますので、裁判所の判断は非常に厳しく、実際にこれにより無罪となっているケースは珍しいです。

また、違法収集証拠排除法則を主張する場合、警察官の証人尋問等に時間がかかるため、裁判が長期化し、最初から争わなかった場合に比べて身柄拘束期間が長期化するおそれもあります。違法収集証拠排除法則の主張が考えられる事案であっても、本当に主張するかどうかについては、主張が通らなかった場合のデメリットも十分考慮し、弁護士とよく相談しましょう。

麻薬や薬物事件の再犯防止策

麻薬をはじめ、法律で禁止されている薬物は強い依存性のあるものが多く、やめたくてもやめられない人がたくさんいます。
覚せい剤の統計ではありますが、令和3年の警視庁における統計で再犯者率が67.4%であることからも、そのことが裏付けられます。
そのため、薬物事件の場合はより一層再犯防止策が重要になります。

出典:「組織犯罪対策に関する統計図表2-20 覚醒剤事犯の再犯者率の推移」

重要なことは「自分は一人で治せる」「そもそも依存症じゃない」などと安易に考えないことです。まだ捜査中や裁判中の場合は、絶対に今やってはいけないという強い抑止力が働きますが、裁判が終わって気が抜け、またやってしまったという人がたくさんいます。
そのため、まだ気が抜けない捜査中や裁判中の段階で医療機関やグループミーティングなどにつなぐことが重要です。

薬物依存症からの回復をサポートする組織としては、「ダルク(DARC)」が有名です。
ダルクとは、ドラッグ(DRUG=薬物)のD、アディクション(ADDICTION=嗜癖、病的依存)のA、リハビリテーション(RIHABILITATION=回復)のR、センター(CENTER=施設、建物)のCを組み合わせた造語で、覚せい剤、危険ドラッグ、有機溶剤(シンナー等)、市販薬、その他の薬物から解放されるためのプログラム(ミーティングを中心に組まれたもの)を行う機関です。ダルクに限らず、薬物依存症回復のための治療やグループミーティングを行っている機関はたくさんあります。

こうした機関に早期段階でつなげることが再犯防止に重要であるとともに、裁判で有利な情状として主張し、少しでも執行猶予の可能性を高めたり、刑を軽くしたりするという意味でも重要です。被害者がいる認め事件の場合、有利な情状になるのはなんといっても示談ができていることですが、残念ながら、薬物犯罪は特定個人の被害者がいないため、示談ができません。

示談書に代わって有利な情状として評価されるのは、再犯防止策をしっかりと実行に移している事実です。医療機関やグループミーティングに参加していることを客観的に示す資料を書面で提出し、被告人質問ではそこでどのようなことをして、どのようなことを学んでいるのかなどをしっかりと答えることができれば、ただ単に「もうやりません」と一言述べるだけに比べ、印象が全く違います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。そもそも麻薬とはどのようなもので、麻薬事件で逮捕された場合の罰則や、弁護活動、再犯防止策など、一通りおわかりいただけましたら幸いです。

もしかしたら、薬物事件の弁護は示談ができないからすることがないと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、示談ができないとしてもすべき弁護活動はたくさんあります。麻薬事件でお困りの方はぜひ刑事事件に詳しい弁護士にご相談ください。

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更新日: 公開日:
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