刑事判例紹介(14)|刑事事件の中村国際刑事法律事務所

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刑事弁護コラム

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事案

 比較的閑散な道路における交通取締りにおいて,原告は,警報機が鳴っているのに踏切に進入したとして道路交通法33条2項違反の罪を告知され,運転免許証の提示を求められた。原告がこれを拒否したところ,現行犯逮捕されたため,本件逮捕が違法であるとして国家賠償請求訴訟を提起した。

判旨(大阪高裁昭和60年判決)

 現行犯逮捕においても逮捕の必要性(逃亡または罪証隠滅のおそれ)が要件となるか否かについて検討するに,…現行犯逮捕も人の身体の自由を拘束する強制処分であるから,その要件はできる限り厳格に解すべきであって,通常逮捕の場合と同様,逮捕の必要性をその要件と解するのが相当である。…違反者が逃亡や罪証を隠滅するなどの行為を何らなしておらず,単に警察官の指摘した違反事実を否認し,免許証の提示を拒否したことのみをもって,住所,氏名を質すこともなく,他に人定事項の確認手段をとらないまま,直ちに現行犯として逮捕することは,逮捕の必要性の要件を満たしていないといわざるを得ない.。

コメント

 現行犯逮捕の要件として,逮捕の必要性(逃亡または罪証隠滅のおそれ)を要求する明文の規定はありませんが,本件は,逮捕の必要性が要件となることを明らかにしました。その上で,本件の現行犯逮捕を違法とし,国家賠償請求を認めており,現行犯逮捕の適法性にも限界があることを示しています。

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