刑事判例紹介(17)
事案
被疑者は爆弾物取締罰則違反被疑事実について逮捕・勾留されたが,被疑者の事件への関与を証明し得る証拠を収集できなかったため,公訴提起に至らず,勾留期間満了で釈放された。しかし,その後の捜査により,嫌疑が濃厚となり,再逮捕された。同一被疑事実についての,再逮捕・再勾留が認められるか争われた事案。
判旨(東京地裁昭和47年決定)
同一被疑事件について先に逮捕勾留され,その勾留期間満了により釈放された被疑者を単なる事情変更を理由として再び逮捕・勾留することは,刑訴法が203条以下において,逮捕勾留の期間について厳格な制約を設けた趣旨を無視することになり被疑者の人権保障の見地から許されないものといわざるをえない。しかしながら同法199条3項は再度の逮捕が許される場合のあることを前提にしていることが明らかであり,現行法上再度の勾留を禁止した規定はなく,また,逮捕と交流は相互に密接不可分の関係にあることに鑑みると,法は例外的に同一被疑事実につき再度の勾留をすることも許しているものと解するのが相当である。…そしていかなる場合に再勾留が許されるかについては,…先行の勾留期間の長短,その期間中の捜査経過,身柄釈放後の事情変更の内容,事案の軽重,検察官の意図その他の諸般の事情を考慮し,社会通念上捜査機関に強制捜査を断念させることが首肯し難く,また,身柄拘束の不当なむしかえしでないと認められる場合に限るとすべきである。
コメント
同一被疑事実についての,再逮捕・再勾留は,厳格な身柄拘束期間を定めた刑訴法の趣旨から,原則は認められません。しかし,本決定では,新たな重要証拠の発見等の事情変更があり,逮捕・勾留の不当なむしかえしに当たらないと評価できる場合には,例外的にこれが許容されると判断しました。