刑事判例紹介(26)|刑事事件の中村国際刑事法律事務所

刑事判例紹介(26)

刑事弁護コラム

刑事判例紹介(26)

事案

 ホームページ上で不特定多数の者がわいせつ画像のデータを閲覧できるようにしたとして,わいせつ図画公然陳列の容疑で捜査が開始される中,ホームページを提供していたプロバイダ会社に捜索差押許可状が発付され,顧客管理データを記録したフロッピーディスクが差し押さえられた。
 本件フロッピーディスクにはアダルトサイトの開設を希望している顧客のデータが記録されていたことから,本件プロバイダ会社が本件フロッピーディスクは被疑事実との関連性及び差押の必要性がないため違法であるとして争った事案である。

判旨(東京地裁平成10年判決)

 具体的差押処分にあたっては差押えの必要性を厳格に解する必要がある。…本件ホームページを開設した被疑者に関するものについては,本件被疑事実との関連性,差押えの必要性は明らかであるが,その余の会員に関するデータについては,アダルトサイトホームページの開設希望者に限定したところで本件被疑事実との関連性を認めがたく差押の必要性は認められないというべきである。

コメント

 捜査機関が差押えを行う場合,個別具体的な差押えの必要性を判断する必要があります。本件において,被疑者との関係では問題なく差押の必要性が認められるといえるでしょう。
 しかし,本件フロッピーディスクには被疑者以外の顧客名簿も記録されていました。このような顧客のプライバシー保護を考慮した場合に,本件フロッピーディスクを差し押さえる必要性よりもプライバシー保護の要請が上回るとして,本件差押えを違法と判断されました。
 本件とは異なり,伝票などを差し押さえる場合は,伝票綴り全体で差し押さえられることも少なくありません。被疑事実に関する部分だけ差し押さえることはなかなか考えられないからです。このような場合と比較すると,本件フロッピーディスクの差押えが適法とされても問題はなさそうにも思えます。通信の秘密といったプライバシーの要保護性の点が影響した結果なのかもしれません。

Pocket

公開日: 更新日:

「刑事事件」に関する取扱い分野

「刑事事件」事案の経験豊富な弁護士はこちら

弁護士 山口 亮輔

ご挨拶  千葉事務所長の山口亮輔と申します。  私は首都圏の刑事事件,民事事件,少年事件などの法律問題に加えて,子ども担当弁護士(コタン),障がい ...

パートナー 柏本 英生

ご挨拶  このページをご覧いただいている方の中には,今,人生に一度あるかないかの大変な状況にいらっしゃる方も多いと思います。これからなにが起こるのか ...

「刑事事件」に関する刑事事件Q&A

自首に家族も同伴できますか。

自首に家族も同伴できますか。  可能です。身元引受書等身柄拘束を避けるために必要な書類を書いていただいた上で,同伴していただくことになります。 ...

「刑事事件」に関する刑事弁護コラム

「刑事事件」に関するご依頼者様の「感謝の声」

「刑事事件」に関する解決実績