刑事判例紹介(37)
事案
被疑者の弁護士が捜査機関に初回の接見を求めたが,被疑者を取調べ中であることを理由に,接見の申出を拒否され,翌日に接見するよう指定された。もっとも,被疑者の取調べは,結果として当日夕方頃以降はなされていなかった。このような接見指定が国家賠償法上違法である等として,被告人が上告した。
判旨(最高裁平成12年判決)
…とりわけ…弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直後の初回の接見は,…憲法上の保障の出発点を成するもので…速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要である。したがって,捜査機関としては,…指定に当たっては,弁護人となろうとする者と協議して,即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能かどうかを検討し,これが可能なときは…特段の事情のない限り…所用の手続を終えた後において,たとい比較的短時間であっても,時間を指定した上で即時又は接近した時点での接見を認めるようにすべきであり…被疑者の取調べを理由として右時点での接見を拒否するような指定をし,被疑者と弁護人となろうとする者との初回の接見の機会を遅らせることは,被疑者が防御の準備をする権利を制限するものといわなければならない。
コメント
弁護人との初回の接見は,憲法34条前段における弁護人依頼権の出発点を成すもととされ,早期に行う必要性が大きく,特に重要とされています。本件は,被疑者が当初から明確な弁護人選任意思を有していたこと,及び,取調べが予定されていた当日夕方以降の取調べはされないままであったことより,当日中に接見させても,時間を指定すれば,捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能であったとして,接見を翌日に指定した捜査機関の措置を違法と判断しており,被疑者の防御権への不当な制限を阻止する姿勢を明らかにしています。