刑事判例紹介(57)|刑事事件に強い元検事弁護士が強力対応

刑事判例紹介(57)

刑事弁護コラム

刑事判例紹介(57)

事案

 警察官が保管していた取調べメモについて,弁護人が刑事訴訟法316条の20に基づき開示請求をしたところ,本件メモが,警察官が私費で購入し,一時期自宅に持ち帰っていたものであったことから,そのようなメモであっても証拠開示命令の対象となるかが問題となった事案。

判旨(刑訴法57事件)

 本件メモは,警察官が,「その職務の執行のために作成したものであり,その意味で公的な性質を有するものであって,職務上保管しているものというべきである。したがって,本件メモは,本件犯行の捜査の過程で作成され,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易なものに該当する」以上,証拠開示命令の対象となる。

コメント

 刑事裁判の充実・迅速化という目的から公判前整理手続の制度が導入され,その一環として種々の証拠開示制度が設けられました(刑事訴訟法316条の14以下)。本決定は,どのような文書がこの証拠開示制度の対象となるかという問題に関するものです。
 これまでの判例を振り返ると,最判平成19年12月25日刑集61巻9号895頁は,取調べメモについて,犯罪捜査規範13条(「警察官は,捜査を行うに当り,当該事件の公判の審理に証人として出頭する場合を考慮し,および将来の捜査に資するため,その経過その他参考となるべき事項を明細に記録しておかなければならない」)に基づき作成された備忘録に該当するのであれば開示対象となることを認め,さらに,最判平成20年6月25日刑集62巻6号1886頁は,犯罪捜査規範13条の備忘録に該当するのであれば取調べ以外の捜査に関するメモも開示対象となることを認めました。このように,判例は証拠開示命令の対象を広げる傾向にあったといえます。
 本決定は,犯罪捜査規範13条について言及せずに本件メモが開示対象となるとしていることから,犯罪捜査規範13条の備忘録に該当することが開示対象文書の要件ではないことを示したものと考えられ,証拠開示命令の対象をさらに拡張したものであると評価できます。

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