刑事判例紹介(82)|刑事事件の中村国際刑事法律事務所

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共犯者の自白は「本人の自白」と同視でき補強証拠を要するのではないかが争われた事案

 被告人を含む4名は交通事故を装い保険金の支払いを受けようとしたとして起訴された。1審で被告人は,所用で自動車に同乗していたに過ぎないと主張したが,他の共同被告人は犯行を認めて詳細な供述をした。1審判決はこれらの3名の公判における自白を主な証拠として被告人全員を有罪とした。

判旨(最高裁昭和51年判決)

 当裁判所大法廷判決の趣旨に徴すると,共犯者2名以上の自白によって被告人を有罪と認定しても憲法38条3項に違反しないことが明らかであるから,共犯者3名の自白によって本件の被告人を有罪と認定したことは,違憲ではない。のみならず,原判決がその基礎とした第1審判決の証拠の標目によると,共犯者らの自白のみによって被告人の犯罪事実を認定したものでないことも明らかである。

コメント

 本件では,「共犯者の自白」のみで被告人を有罪とすることは自白偏重による誤判のおそれがある点で「本人の自白」と差異はないため補強証拠を要するのではないかが問題となりました。共犯者の供述は他人に刑事責任を転嫁する危険があり,裁判所は慎重にその証明力を検討するため「本人の自白」と同様には考えられません。また,被告人に共犯者を反対尋問する機会を与えれば反対尋問を経ない供述よりも証明力が高いので,共犯者の自白を証拠として被告人が有罪となり補強証拠のない共犯者が無罪となるのは不合理とはいえません。以上より,共犯者の供述には補強証拠は必要ないと解されています。

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