皇位継承に伴い死刑執行見合わせも|恩赦について詳しく解説します|刑事事件に強い元検事弁護士が強力対応

皇位継承に伴い死刑執行見合わせも|恩赦について詳しく解説します

刑事弁護コラム 皇位継承に伴い死刑執行見合わせも|恩赦について詳しく解説します

皇位継承に伴い死刑執行見合わせも|恩赦について詳しく解説します

 今年の新天皇の即位に伴い「恩赦」が,特に「大赦」が検討されていると報じられています。「恩赦」と聞くと,死刑判決を受けた人が出所できるようなイメージがありますが,正しいのでしょうか。
 今回は恩赦制度について説明します。

恩赦とは

 恩赦は「裁判によらないで刑罰権を消滅させ,あるいは裁判の内容・効力を変更又は消滅させる制度」と犯罪白書では定義されています。簡単に言ってしまうと,裁判で決まった刑を軽くする制度となります。
 この制度は日本国憲法で定められています。具体的には内閣は,「大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権を決定すること。」(憲法73条7号)ができるとされ,この決定を天皇が「大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権を認証すること。」(同法7条6号)で効力が生じます。具体的な手続きなどは,恩赦法及びその施行規則に規定されています。「恩赦」とは憲法や法律に基づく,大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除,復権のことを指します。

恩赦の役割

 裁判で罪を犯したと認められたのに,なぜ刑罰を軽くするのか疑問に思われる方もいるかもしれません。恩赦制度の役割についてはいくつかの説明がなされています。①平等に法律を適用することによって生じた不正義をただすこと,②事後的に事情が変更されたことによって,刑罰の内容が妥当ではなくなった場合に刑罰を修正すること,③通常の裁判手続では救済できない誤判を救済すること,そして④有罪になった者が事後的に更生した場合に刑罰を変更しまたは資格を回復することがあげられています。
 このうち,法務省がホームページで恩赦制度の存在理由としてあげているのは,4番目の事後的な反省等を理由として刑事政策的に刑罰を変更するとの点です。
 つまり,罪を反省し,再犯の可能性がなくなった者に対して刑罰の免除等をすることは,社会にとっても受刑者個人にとっても良いことであるというのが制度の存在理由としてあげられているのです。

恩赦の種類

 恩赦の種類は憲法で定められ,その内容は恩赦法によって定められています。
 恩赦は,特定の罪を犯した者,特定の資格制限を受けた者などの特定のカテゴリーに分類される者に対して一括して行われる恩赦(政令恩赦)と特定の個人に対して行われる恩赦(個別恩赦)に大別できます。そして恩赦の種類によってその効果が異なります。
 例えば特定の罪を犯した者に対して行われる,政令恩赦の一種である「大赦」では,その罪で有罪となった者に対しては有罪の言渡しの効力が消滅します。まだ有罪の判決を受けていない者に対しては,公訴権が消滅します(恩赦法3条)。公訴権が消滅すると,その罪で起訴されていても刑事手続きは打ち切られます。起訴されていない者も起訴されることがなくなります。同じく政令恩赦である「減刑」では刑が減軽されます(同法7条1項)。また後で詳しく説明しますが,「復権」では,喪失または停止された資格が回復します(同法10条)。
 一方の個別の者に対して行われる個別恩赦である「特赦」でも有罪の言渡しの効力が消滅します(同法5条)。その効果は「大赦」と同様です。また,「減刑」は個別恩赦でも行われますが,こちらは政令恩赦とは異なり刑の減軽または刑の執行が減軽されます(同法7条2項)。そして,「刑の執行の免除」は刑の執行を免除します(同法8条)が,刑の言渡しの効力は持続しますので注意が必要です。また復権は個別恩赦でも行われ,その効果は政令恩赦と同様です(同法9条)。
 なお,個別恩赦については,①内閣が定める基準によって,特定の期間に限って行われる特別基準恩赦と②常時行われている常時恩赦に分かれています。特別基準恩赦は,政令恩赦に伴って実施されるのが大半です。

 例えば,特定の罪を犯した者に対して行われる,政令恩赦の一種である「大赦」では,その罪で有罪となった者に対しては有罪の言渡しの効力が消滅します (恩赦法3条1号)。まだ有罪の判決を受けていない者に対しては,公訴権が消滅します(同法3条2号)。公訴権が消滅すると,その罪で起訴されていても刑事手続きは打ち切られます。起訴されていない者もその罪で起訴されることがなくなります。 同じく政令恩赦である「減刑」では刑が減軽されます(同法7条1項)。また後で詳しく説明しますが,「復権」では,喪失または停止された資格が回復します(同法10条)。
 一方の個別の者に対して行われる個別恩赦である「特赦」でも有罪の言渡しの効力が消滅します(同法5条)。その効果は「大赦」と同様です。また,「減刑」は個別恩赦でも行われますが,こちらは政令恩赦とは異なり刑の減軽または刑の執行が減軽されます(同法7条2項)。そして,「刑の執行の免除」は,判決で確定した刑の執行のみを免除する効果を有します(同法8条)が,刑の言渡しの効力は持続しますので注意が必要です。また復権は個別恩赦でも行われ,その効果は政令恩赦と同様です(同法9条)。

過去の恩赦例

政令恩赦の過去の実施状況

 政令恩赦は国家の慶弔時(国家にとって良いことや悪いことが発生した時)に行われるのが通例です。政令恩赦は,現行憲法下では平和条約発効,日本の国連の加盟,平成天皇の婚姻,明治百年記念,沖縄復帰記念,昭和天皇の崩御,平成天皇の即位および現皇太子のご結婚等に際して行われました。

個別恩赦の過去の実施状況

 一方で個別の恩赦は,政府発行の白書などでは実施件数などは明らかにされていますが,どのような犯罪を行った者が対象になったのかは不明です。ただ,特赦や減刑は平成25年以降全くなく,刑の執行の免除が10件以下の件数で行われているに過ぎません。この刑の執行の免除も無期懲役で服役していた者が仮釈放を受け,保護観察になっている状態を終了させるために行われているようですので,刑務所に服役している者が恩赦によって出所するという状況は個別恩赦ではあまりないようです。

昭和から平成への代替わり時の恩赦

 今回の天皇の代替わりによって行われる恩赦と類似の状況が生じたのは,昭和から平成への代替わりの時です。そこで,この恩赦の内容を少し詳しく見ていきましょう。代替わり時の恩赦は,昭和天皇の死亡に関して,平成元年2月13日に大赦令と復権令で行われています。そして,平成2年11月12日に平成天皇の即位に際して復権令でも行われています。これらが先ほど説明した政令恩赦です。
 また,昭和天皇の死亡および平成天皇の即位に伴って,特別基準恩赦の基準が発表されそれにしたがって恩赦が行われました。これは先ほど説明した個別恩赦にあたります。

代替わり時の大赦令(政令恩赦)

 大赦の対象とされた者は第二次世界大戦中もしくはその後の経済統制関係法令に違反した者,外国人登録法に違反して指紋押捺に応じなかった者,拘留または科料が法定刑となっている罪を犯した者でした 。
 したがって,強盗殺人や殺人で死刑判決を受けた者が刑務所から出てくるものではないですし,また覚せい剤や交通事故,通常の刑法犯(窃盗,詐欺,傷害等)の受刑者が刑務所から出てくるというものでもありませんでした。

代替わり時の復権令(政令恩赦)

 次に昭和天皇が崩御した際の復権令ですが,対象は罪の種類は限定されず罰金刑に処せられた者と,昭和64年1月7日の前日までに刑に処せられてから5年以上経過した禁錮以上の刑に処せられた者が復権しました。
 復権というのは少し分かりにくいのでここで説明をしておきます。いくつかの法律では有罪判決を受けた場合,特定の仕事に就くことを制限している場合があります。例えば弁護士法7条は,「禁錮以上の刑に処せられた者」は弁護士になれないと定めています。また警備業法14条1項・3条2号は「禁固以上の刑に処せられ,又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ,その執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者」は警備員にはなれないと定めています。更に公職選挙法252条1項ないし3項は同法に違反して罰金や禁錮以上の刑を受けた者は5年もしくは10年間,候補者になったり投票したりすることできないと定めています。
 刑法は34条の2で禁錮以上の刑の執行が終わって10年,罰金については刑が終わってから5年で刑の言渡しの効力は消滅すると定めていますので,復権令がなくても所定の期間が経過すればこのような制限はなくなるのですが,10年や5年それらの仕事に就けないのは大変です。そこで,この復権令は意味があるのです。
 次に平成の天皇が即位した際の復権令ですが,こちらは罰金刑を受けた者の復権のみが定められました。
 なお復権令が出された際には,公職選挙法違反で罰金刑を受けた人が大量に復権し,その直後に選挙が行われましたので,政治的な意図をもって行われた恩赦であるとの批判もなされました。

特別基準恩赦(個別恩赦)

 昭和天皇の崩御および平成天皇の即位に関して,特別基準恩赦が行われました 。先ほどの政令恩赦では,重大な罪を犯して服役している者はまったく対象になっていませんでしたが,こちらでは一部重大な罪を犯して服役している者も対象となっていました。例えば,減刑の対象として死刑の対象者は含まれませんでしたが,少年時代に罪を犯して服役している者や70歳を超えて服役している者は刑期が長かったとしても減刑の対象に含まれました。
 一方で,それ以外の通常の受刑者については,薬物の罪を犯した者は対象外で,更に法定刑(法律の条文で決まっている刑の長さ)が短い方の刑の長さ(短期)が1年以上の罪で服役している者も対象外でした。たとえば,窃盗は短期の懲役刑が1月以上の罪(刑法235条・12条)なので恩赦の対象犯罪となりましたが,強盗罪は短期の懲役刑でも5年以上の罪(同法236条)なので恩赦の対象犯罪とはなりませんでした。だれでも彼でも特別基準恩赦の対象となり請求ができるわけではなかったのです。0
 なお,恩赦の対象になると説明しましたが,単に対象となるだけでは減刑されるわけではありません。実際に減刑されるのは,犯情,本人の性格,行状,犯罪後の状況,社会の感情等にかんがみ,特に減刑することが相当であると認められる者のみでした。「特に…相当」と記述があることからも明らかなように,かなり限られた対象に対して行われたとみることができます。
 かつては死刑判決を受けた者が無期懲役になるなどの恩赦が行われたようですが,犯罪に対する社会の目が厳しくなっている現在において,代替わりでそのような事が行われることはないと思われます。

今回の代替わりで恩赦が実施された場合に注意をするべき点

 恩赦は行政である内閣が行うものです。行政は比較的,前例踏襲に流れやすいものです。そうしますと,上記で紹介した昭和から平成への代替わり時の実行は参照に値すると言えます。そうしますと,①罰金刑を受けることで何らかの資格制限にかかってしまった人は今回の恩赦で資格制限がなくなるか否かを注意しておく必要があるといえます。②禁錮刑以上の刑に処せられた人(刑務所で服役した人)も一定の期間が経過していれば(前回の昭和天皇崩御の際の復権令では,刑の執行が終わってから5年以上で)資格制限がなくなる可能性がありますので,同様に注意が必要です。
 また,おそらく③特別基準恩赦が行われる可能性も高いといえます。これは内閣がその基準を定めます。特別基準恩赦は本人の申請を待って行うものとされましたので,基準が発表された時点で自身や服役している関係者がそれにあたるかどうかを確認して,場合によれば申請を行うようにするべきです。たとえば自身の親が服役しており70歳を超えている場合や,自身の未成年の時に起こした犯罪で服役している場合などは対象になる可能性があります。更に比較的軽い罪で服役している場合(昭和から平成の代替わりでは窃盗罪など)であれば,対象になる可能性があります。
 ④もっとも,死刑などの重い刑については,平成の代替わり時でも減刑された形跡はありませんでしたので,安易に恩赦に期待するのではなく三審制で徹底的に争うことが大事です。恩赦に期待をするのではなく,再審請求等に全力で当たるべきです。
 いずれにせよ,特別基準恩赦の基準は一般の方がご覧になっても難しいと思います。また,申請にあたって理由書などを作成するのも難しいと思われます。弁護士は恩赦の請求の代理人になることが可能です。特別基準恩赦は期間が限定されていますので,基準が発表された場合,弁護士などの法専門家に早急に相談されることをお勧めいたします。

恩赦の今後

 天皇の代替わりに際して恩赦を行うことについては,憲法学から天皇の政治利用であるとして疑問の声があがっています。恩赦制度の存在理由に照らしても,国家の慶弔時に大量に恩赦を行うことの正当性が本当にあるのか考える必要があると思われます。
 一方で,常時恩赦の件数が少ないのは問題であると思われます。恩赦に際しては被害者が受刑者を許しているかが重要な要素となってきます。現在の刑事裁判実務では,被害者が被害弁償を受けやすいのは刑が確定するまでと言われています。というのも,刑が確定してしまえば被告人としては積極的に被害弁償を行うメリットを感じることができないからです。もちろん他者に迷惑をかけた以上,償うのは倫理的には当然ではありますが,個別恩赦を積極的に活用することを通して,被害者が被害弁償を受けやすい環境を整えることも刑事政策的には有用ではないかとも思われます。常時恩赦の活性化が必要です。
 また恩赦の役割の一つとして,通常の裁判手続きでは救えない誤判の救済があります。依頼者の命や権利を守るためにもどのように恩赦制度を活用していけるのか検討していく必要性は高まってきているといえます。

まとめ

 今回は恩赦制度についてまとめました。過去の過ちによる資格制限で困っている方などは,今回の代替わりは更生のための良い機会になる可能性があります。報道などに注意をし,疑問があれば,ぜひ法専門家の助力を求めてください。

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