身近に潜む法律問題について|偽札,セルフレジ,未成年との真剣交際…等の犯罪となり得る案件を解説します|刑事事件に強い元検事弁護士が強力対応

身近に潜む法律問題について|偽札,セルフレジ,未成年との真剣交際…等の犯罪となり得る案件を解説します

刑事弁護コラム 身近に潜む法律問題について|偽札,セルフレジ,未成年との真剣交際…等の犯罪となり得る案件を解説します

身近に潜む法律問題について|偽札,セルフレジ,未成年との真剣交際…等の犯罪となり得る案件を解説します

 犯罪というと,殺人や強盗などの重大犯罪がイメージされ,日常的に身の回りで起こるものだとは思われていないかもしれません。まして自分が罪を犯すことなどあり得ないと思われていることでしょう。しかしながら,犯罪となり得る行為は身近にたくさん潜んでおり,いつの間にか自分が犯罪者にとなってしまう可能性も決して否定できません。そこで,この記事では,身近な法律問題をいくつか取り上げ,どのような犯罪が成立する可能性があるのかを解説します。

偽札をそれと知らずに使った場合

 まず,偽札を使用する行為は,偽造通貨行使等罪(刑法148条2項)に該当します(通貨偽造罪は同条1項です)。なお,紙幣だけでなく硬貨の場合も同じです。

刑法148条(通貨偽造及び行使等)

 1 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
 2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。

 では,偽札と知らなかった場合(知らぬ間に偽札が財布に入っていて,使ってしまった場合)はどうなるでしょう。これは,「行使の目的」(偽貨を真貨として流通に置く意思―簡単に言うと,偽札を使って取引・支払を行おうとする意思のことです)がないので,偽造通貨行使等罪は成立しません。
 ちなみに,初めは財布に入っていたお札が偽札だと知らなかったが,後で偽札だと気づき,それを公使した場合には,収得後知情行使等罪(刑法152条)に該当します。法定刑が通貨偽造罪や偽造通貨行使等罪と比べると著しく軽いのは,人間性の弱さの現れに対して,法がある程度の同情を認めているからです。

刑法152条(収得後知情行使等)

 貨幣、紙幣又は銀行券を収得した後に、それが偽造又は変造のものであることを知って、これを行使し、又は行使の目的で人に交付した者は、その額面価格の三倍以下の罰金又は科料に処する。ただし、二千円以下にすることはできない。

コンビニコーヒーで100円のカップに150円のものを注いだ場合

 コンビニのセルフサービスのコーヒーで,Sサイズの100円のカップを購入して,150円のMサイズのコーヒーを注いだ場合は何罪が成立するでしょうか。コーヒーを50円分余分に盗んだということで窃盗罪(刑法235条)が成立するように思えますが,話はそう単純ではありません。
 多くの場合,まずレジで店員からカップを購入した後,機械でSサイズまたはMサイズのボタンを押してカップにコーヒーを注ぎます。
 もし, Sサイズのカップを購入する時点でMサイズのコーヒーを注ごうと考えていた場合には,店員(人)をだました(欺いた)といえるので,窃盗罪ではなく詐欺罪(刑法246条1項)が成立します。
 一方で,Sサイズのコーヒーを注ぐつもりで,レジで会計を済ませたものの,機械を操作するときに,「やっぱりMサイズを注ごう」と考えた場合には,店員(人)を欺いたとはいえず,詐欺罪ではなく,窃盗罪が成立します。
 なお,Sサイズのコーヒーを注ぐつもりだったのに,間違えてMサイズのボタンを押してしまったとき,きちんと店員に申告すれば犯罪には当たりませんが,もしそのまま黙って店を出ると,占有離脱物横領罪(刑法254条)が成立します。占有離脱物横領罪は,他人による占有を離れた物を横領する罪で,条文の「遺失物」と「漂流物」はその例です。したがって,遺失物等横領罪ともいいます。

刑法235条(窃盗)

 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

刑法246条(詐欺)

 1 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
 2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法254条(遺失物等横領)

 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

セルフレジで一部商品の金額を支払わなかった場合

 これも,先ほどのコーヒーの場合と同じように,相手がセルフレジという機械なので,詐欺罪ではなく窃盗罪が成立します。なお,有人のレジならば,詐欺罪が成立します。

他人のクレジットカードを無断で使用した場合

 他人名義のクレジットカードを使用する行為は,詐欺罪に該当します。その人の経済的な信用力に基づいて,無担保での後払いを認めるというのがクレジットカードの前提条件であるため,他人が使用すればその条件が偽られることになるからです。なお,カードの使用を名義人から許されており,名義人として決済がなされると誤信している場合でも,詐欺罪が成立します(最決平成16年2月9日)。

誤って自分の元に届いた配達物を使用した場合

 自分宛の荷物ではないのに,誤って配達された荷物を開封した場合,占有離脱物横領罪(刑法254条)が成立します。
 同じく占有離脱物横領の事案として,駅で改札に入る前に切符を拾い,自分のものにする行為は同罪が成立しますが,その切符を精算所に提示して払い戻しを受けても,判例は詐欺罪の成立を否定しています(東京地判昭和36年6月14日)。不可罰的事後行為といって,当初の行為によって予定されている後の行為は,犯罪を構成しないのです。例えば,泥棒が盗んだものを壊しても,窃盗罪のほかに器物損壊罪は成立しません。

残業代を実際より多く,または少なく申告した場合

 残業代の水増しは,上司や経理係をだまして残業代を申請する行為ですので,詐欺罪に該当します。少なく申告した場合は,余分に「財物を交付させた」わけではないので,詐欺罪は成立しません。
 ところで,犯罪の成否とは別の問題ですが,このような水増し行為によって,会社を解雇されるのでしょうか。労働契約法16条は,解雇の条件として,客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を要求し,使用者による解雇権の濫用を防止しています。
もっとも,刑法犯である詐欺罪の場合には,(その回数,額にもよりますが)解雇が認められるケースが多いようです。

労働契約法16条(解雇)

 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

成年に達した人物が未成年と真剣に交際した場合

 そもそも民法731条は,「男は,18歳に,女は,16歳にならなければ,婚姻をすることができない」と定めており,逆に言えば,未成年でも結婚できるため,その前提となる交際は当然に認められます。したがって,成人と未成年者が真剣に交際した場合は,犯罪は成立しません。
 ただし,18歳未満の児童との性行為には注意が必要です。まず,児童との淫行を禁止する行為は,各地方自治体の青少年保護育成条例によって禁止されています(いわゆる淫行条例)。ここでいう淫行とは,「広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく,青少年を誘惑し,威迫し,欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいう」とされています(最判昭和60年10月23日)。一方で,児童に淫行を「させる行為」(児童に第三者と性行等を行わせる行為と児童に自身と性行等をさせる行為の両方を含みます)は,児童福祉法34条1項6号で禁止されており,10年以下の懲役または300万円以下の罰金,もしくはその両方が科せられます(児童福祉法60条1項)。
 また,児童売春(児童等に対して対償を支払うなどして性行等を行う行為)をした場合は,児童ポルノ禁止法4条により,5年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます。
 もっとも,無理矢理に淫行をさせたり,売春をしたりするのではなく,真剣な交際している場合の性行為は違法なものではありません。

赤信号で渡った通行人と通常走行していた車が衝突した場合

 自動車を運転によって人を死傷させる行為は,自動車運転死傷行為処罰法によって処罰されます。故意に危険な運転(あおり運転など)を行う行為は危険運転致死傷罪(同法2条,3条)によって処罰されますが,過失による場合は,5条によります。

自動車運転死傷行為処罰法5条(過失運転致死傷)

 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

 条文にあるとおり,自動車の運転上必要な注意を怠ったことによって人を死傷させた場合に処罰されるので,十分に注意してもなお死傷の結果が発生してしまうような場合には,本罪は成立しません。

突如襲い掛かってきた野生動物を殺してしまった場合

 まず,他人の飼っているペット(例えば飼い犬としましょう)が突然襲い掛かってきた場合を考えてみましょう。他人の飼い犬に怪我をさせたり,飼い犬を殺したりする行為には,器物損壊罪(刑法261条)が成立します。刑法上は,動物は「物」です。

刑法261条(器物損壊等)

 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

 しかしながら,飼い犬が突如として襲い掛かってきた場合に,何も反撃できないとすれば,自らが危険な目に遭うかもしれません。そこで,このような場合に正当防衛(刑法36条)が成立しないかが問題となります。正当防衛が成立すれば,処罰されません。その一方で,正当防衛ではなく緊急避難(刑法37条)が成立するという説もあります。

刑法36条(正当防衛)

 1 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
 2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

刑法37条(緊急避難)

 1 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
 2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。

 正当防衛は「正対不正」であるのに対し,緊急避難は「正対正」であると言われています。この場合,飼い主に故意または過失がある場合には飼い主(不正)に対する正当防衛が成立しますが,故意または過失がないときには「不正の侵害」が人間だけでなく動物(物)による行為にも認められるか否かで結論が変わります。物による「不正の侵害」を認めると,正当防衛が成立しますが,それを認めず,人間による行為のみをその対象に限定すると,正当防衛は成立せず,緊急避難が成立し得るのみということになります。
 では,野生動物の場合はどうでしょうか。野生動物は,刑法261条にいう「他人の物」ではないため,器物損壊罪はそもそも成立しません。

まとめ

 このように,犯罪は身近なところにあります。いつ自らが犯罪者となるかもわかりません。そして,ある行為が法律によって禁止されていると知らなかった場合でも,違法性の意識の可能性が原則として認められ,犯罪が成立してしまいます(ただし情状による刑の減軽はあり得ます)。
 逮捕されてからでは手遅れになる場合が多いですから,法に触れる可能性を感じたら,法律のプロである弁護士に相談されることをおすすめします。

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