金メダルかじりは器物損壊にあたるか|弁護士が器物損壊について解説|刑事事件の中村国際刑事法律事務所

金メダルかじりは器物損壊にあたるか|弁護士が器物損壊について解説

刑事弁護コラム

金メダルかじりは器物損壊にあたるか|弁護士が器物損壊について解説

 まだ記憶に新しい令和3年8月,名古屋市の市長が,日本代表の選手より表敬訪問を受けた際,手渡された金メダルをいきなりかじったという事件がありました。
 もしこれが警察沙汰になるとしたらどういう問題となるか,刑事弁護士の漆原俊貴弁護士に聞いてみました。

金メダルをかじったことで器物損壊が成立するのか

今回のこの事件は法律的に器物損壊に当たるのでしょうか?

 漆原: 今回の事例は限界事例であり,インターネット上でも成立するという主張と,しないという主張があるように,本当に微妙な事案なので,結論的には裁判をやってみないとわからない事案だと思います。

器物損壊罪(刑法261条)とは

 「他人の物を損壊し,又は傷害」した場合に成立する犯罪。

傷がついていなくても器物損壊は成立するのか

器物損壊罪にあたる場合,傷がついていない場合でも器物損壊罪として扱われるのでしょうか?

 漆原: 外見上傷がついていなくても器物損壊に当たる可能性があります。
 これは,器物損壊罪における「損壊」とは何かという定義が問題になりますが,「損壊」とは,物理的に壊れたりすることを指すことはもちろん,物の効用を害する行為についても損壊にあたります
 例えば,有名な判例として,飲食店の食器に放尿した事件で器物損壊罪の成立を認めたものがあります。判例の理屈は,事実上もしくは感情上,器物を再び本来の目的の用に供することができない状態にさせる行為が「損壊」にあたるという事です。つまり,外見上は傷がついていなくても使い物にならない状態になってしまった場合は器物損壊に当たる可能性があります。
 冒頭にも話したとおり,今回の件は,使い物にならなくなっているかという点で評価が分かれるところで,「唾液が付いただけではないか」という考えもあれば,「このコロナ禍で,ましてや後日感染が発覚した他人が噛んだメダルは元のメダルのような使い方はできない」という考えもあると思いますが,最終的には被害を被った後藤選手の気持ちが重要だと思います。
 特に,器物損壊罪は,親告罪といって告訴がないと起訴できない類の犯罪です。そこで,やはり被害者である選手の気持ちが尊重され,訴える気持ちがあれば,器物損壊として事件になる可能性はあると考えています。

おふざけでの行為も犯罪行為となるのか

おふざけで噛んでしまっただけとのことですが,この場合でも犯罪になりますか?
世間一般でも軽いおふざけで本来の用途と外れて壊してしまうという事もあるかもしれませんが,いかがでしょうか?

 漆原: この点は,故意の問題となります。刑法でいうところの故意というのは,結果を発生させようとして起こすだけではなく,こういう結果になってもよい,壊れても構わないということで起こす行為も故意にあたります。例えば,「壊そうと思って壊した」が故意にあたる事はもちろんですが,「投げたら壊れるだろう,壊れても構わない」と思って投げた場合にも故意が認められるということです。
 今回の事例では,損壊に当たるかどうかがそもそも微妙ですが,市長は「金メダルが台無しになると考えていなかった」「台無しになるような行為だと思っていなかった」という故意がなかったとも捉えられる主張をされており,故意があるのかどうかも微妙であると考えています。

犯罪成立にかかわらず損害賠償請求はできるのか

IOCが金メダルを交換したが,それで犯罪がなかったことになり,被害者が被害を訴えることができないことはありますか?
たとえば,民事的に損害賠償の請求についてはどうですか?

 漆原: 刑法は行為を行った時に犯罪が成立します。今回,器物損壊に当たるかは微妙ですが,当たると考えた場合は,噛んだ時点で犯罪が成立するということになり,金メダルが交換されたとしても,噛んだ行為は犯罪としてすでに完成しています。
 損害賠償請求に関してですが,不法行為によって損害を被ったということであれば,それに応じた損害賠償請求は可能です。今回の事案では,すでにIOCが金メダルを交換し新しいものになっているので,金メダルの価額を請求することや,金メダルを噛んだことによる金メダル自体の価値の減少を理由に請求することは難しいと思います。単純に汚されたという気持ちに対する慰謝料という形の損害賠償請求になるのではないかと考えます。

まとめ

 今回,漆原弁護士へのインタビューを通じて,器物損壊については限界事例ですが,被害者の気持ち次第では今後,事件化が可能な事例とお考えとのことでした。民事での損害賠償請求の可能性も考えられるとすると決して軽い問題ではないようです。

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