事案
被告人は、アルコール保有量検査のため風船への呼気吹き込みを求められたが、断って警察署の出入口の方に行きかけたため、巡査が「風船をやってからでいいではないか。」といって両手で被告人の左手首を掴んだ。巡査の制止行為につき、任意捜査の限界を超え、違法ではないかが問題となった事案。
判旨(最高裁昭和51年決定)
強制手段とは、有形力の行使を伴う手段を意味するものではなく、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味するものであって、右の程度に至らない有形力の行使は、任意捜査においても許容される場合があるといわなければならない。ただ、強制手段にあたらない有形力の行使であっても…必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容されるものと解すべきである。
コメント
巡査の行為が「強制の処分」(刑事訴訟法197条1項但書)にあたる場合には、刑事訴訟法に特別の定めがない限り違法となります。判例は「強制の処分」の定義を示したうえで、それ以外の有形力の行使すべてが許されるわけではなく、任意捜査にも限界があることを示しています。
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