事案
令状に基づき、被告人方を捜索していたところ、捜索中に荷物が配達され、被告人がこれを受け取った。捜査官は、以前にも同じような被告人宛ての荷物から覚せい剤が発見されたことがあったため、開封するように説得を試みたものの、被告人はこれを拒絶した。そこで、捜査官は荷物の中を確認する権限がある旨述べた上で本件荷物を開封し中身を確認したところ、荷物内から覚せい剤が発見されたため、被告人を逮捕し、同覚せい剤を押収した。
弁護人は捜索差押令状の効力は令状提示後に搬入された物品に及ばないとして捜査の適法性を争ったものである。
判旨(最高裁平成19年決定)
原判決の認定によれば、警察官が、被告人に対する覚せい剤取締法違反被疑事件につき、捜索場所を被告人方居室等、差し押さえるべき物を覚せい剤とする捜索差押許可状に基づき、被告人立ち合いの下に上記居室を捜索中、宅配便の配達員によって被告人宛てに配達され、被告人が受領した荷物について、…警察官は…上記許可状に基づき捜索できるものと解するのが相当である。
コメント
本件は捜索差押え開始後に届いた宅配物についてもその対象となるか否かについて争われた事件です。裁判所は、捜索差押え開始時点で捜索場所に存在しない場合であっても捜索差押えの対象になりうるとしました。
本件被告人は過去にも同様に宅配便を介して覚せい剤を入手していたことから本件宅配物についても覚せい剤が在中している蓋然性があり、本件宅配物を捜索する必要性があったといえるでしょう。また、偶然捜索開始前に届いていた宅配物は捜索が可能であるのに対し、捜索開始後に届いた宅配物は捜索ができないといったように捜索開始の前後で異なる結論を採ることは不合理といえます。また被告人の「受領」行為によって、被告人のプライバシーの領域内に帰属した以上は、捜索差押許可状の効力の及ぶものとして捜索差押えの対象になるといえるでしょう。