事案
電磁的公正証書原本不実記録・同供用被疑事実に関して、「差し押さえるべき物」を「組織的犯行であることを明らかにするための磁気記録テープ、光磁気ディスク、フロッピーディスク、パソコン一式」等とした捜索差押許可状が発付され、これ基づきフロッピーディスク108枚が差し押さえられた。差し押さえる際、フロッピー内を確認することなく差し押さえられたため、被疑事実との関連性のない物件まで包括的に差し押さえた点につき違法な捜査活動であるとして争われた。
判旨(最高裁平成10年判決)
令状により差し押さえようとするパソコン、フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような事情が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるときは、内容を確認することなしに右パソコン、フロッピーディスク等を差し押さえることが許されるものと解される
コメント
捜索差押えの場面において、対象物件は被疑事実と関連性のあるものでなければなりません。関連性のない物件まで差押えることができるとすれば、令状が一般令状化し、プライバシー侵害の危険を生じさせてしまうからです。
もっとも、関連性の有無については必ずしも捜索差押えの現場で明らかになるとは言えません。本件のようなフロッピーディスクに記録された情報は、内容を確認する必要があり、多量にある場合はその場で一つ一つ確認できないからです。また、本件の場合はフロッピーディスクを開くと同時に記録された内容を瞬時に消去させるソフトが用いられているとの情報もあり、証拠が損壊される危険性もあったとされています。これらのことからすれば、現場の捜査官ではなく、科捜研などのような専門的知見を有する者によって内容を確認する必要性があったといえるでしょう。
このように差押えの現場で内容を確認できないような場合は、被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる限り、包括的な差押えも許容されます。