事案
覚せい剤自己使用罪の嫌疑がある被告人に対し、繰り返し尿の提出を求めたが、被告人は頑強に拒否し続けたため、警察官は、身体検査令状及び鑑定処分許可状の発付を受けて、鑑定受託者である医師をして、被告人の尿を採取した。被告人は、このような採尿が違法である等として上告した。
判旨(最高裁昭和55年判決)
…強制採尿が捜査手続上の強制処分として絶対に許されないとすべき理由はなく、…犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められる場合には、最終的手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべきであり、…捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべきである。ただし、右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体検査令状に関する刑訴法218条5項が右捜索差押令状に準用されるべきであって、令状の記載要件として、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠であると解さなければならない。
コメント
強制採尿を許容する明文の規定はありません。本件は、強制採尿が捜索差押令状に基づいて許容されるとしましたが、医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠であると判示しており、厳格な要件の下でのみ適法とされるとしています。