事案
建造物侵入未遂被疑事件の嫌疑を有するAに対して、犯行計画メモやA名義の預金通帳等を差し押さえることを許可する旨の捜索差押許可状の発行を受け、同令状を執行した司法警察員は、預金通帳等の差押の際に、Aとは別人である申立人B方の居室内にあった、同令状に記載のない印鑑・背広等を写真撮影した。(本件撮影)Bは、このような写真撮影が違法であり、これにより得られたネガ・写真等の廃棄または返還を求めるとして、準抗告及び特別抗告を申し立てた。
判旨(最高裁平成2年決定)
…写真撮影は、それ自体としては検証としての性質を有すると解されるから、刑訴法430条2項の準抗告の対象となる「押収に関する処分」には当たらないというべきである。したがって、その撮影によって得られたネガ及び写真の廃棄又は申立人への引渡を求める準抗告を申し立てることは不適法であると解するのが相当である…。
コメント
本件のような室内における写真撮影は、検証としての性質を有するとされており、原則として、検証許可状が必要となります。本件は、検証令状なく行われた撮影行為であるものの、根拠として、捜索差押えの際に証拠価値の保存や手続の適正性の担保の必要がある場合には、捜索差押えに付随するものとして許容されるとした上で、本件撮影は検証の性質を有し、刑訴法430条1項の「押収に関する処分」には当たらないことより、準抗告の対象とはならないとしました。もっとも、本決定の判旨は事例判断にとどまるため、同条項に列挙されていない対象物についても、適正な刑事手続の確保の観点から、例外的に準抗告の対象とすべきケースは依然として在り得るといえます。