事案
任意同行及びその後の任意の取調べを求められた被疑者の弁護人が、被疑者との面会の申出をしたが、捜査機関はこれを拒否したため、このような面会の拒否が違法であるとして争われた
判旨(福岡高裁平成5年判決)
弁護人等から右被疑者に対する面会の申出があった場合には、弁護人等と面会時間の調整が整うなど特段の事情がない限り、取調べを中断して、その旨を被疑者に伝え、被疑者が面会を希望するときは、その実現のための措置を執るべきである。任意捜査の性格上、捜査機関が、社会通念上相当と認められる限度を超えて、被疑者に対する右伝達を遅らせ又は伝達後被疑者の行動の自由に制約を加えたときは、当該捜査機関の行為は、弁護人等の弁護活動を阻害するものとして違法と評され、国家賠償法1条1項の規定による損害賠償の対象となるものと解される。
コメント
任意同行及びこれに引き続いてなされる任意取調べ中の弁護士との「面会」については、明文の規定がありません。本件は、このような面会についても、捜査機関は、原則として面会の実現のための措置を執るべきであると判示した上で、昼休みの時間帯に面会を申し出た弁護人の弁護活動に適切な配慮をしなかった捜査機関側の行為を、社会通念上相当と認められる限度を超えた国家賠償法上違法なものであると評価しており、身柄を拘束されていない段階の面会においても、被疑者が早期に弁護人から適切なアドバイスを得られる権利に対する不当な侵害の阻止を図っているといえます。