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刑事判例紹介(64)

死亡させたことを強く疑わせる証拠により有罪と認定できるかが争われた事案

被告人はAを殺害した疑いで起訴された。被告人の嫁ぎ先で火災が発生し、夫が焼死するという出来事があり、その翌年に焼け残った納戸の中から偶然Aのものと思われる人骨が発見された。Aは両親らと住んでいた家にかかってきた電話に出て、その後急いで家をでていき、消息不明となっていた。被告人はAの失踪・死亡につき深く関与しているのではないかと疑われ、任意の取調べが行われた。裁判所は、状況的に見て、被告人がAを死亡させた疑いが強いとしながら、被告人が殺意をもってAを死亡させたと認定するには、なお合理的な疑いが残るとして被告人を無罪としたため、検察側が控訴して争った。

判旨(札幌高裁平成14年判決)

これらの事実はいずれも被告人がAを重大な犯罪によって死亡させたことを強く疑わせるものであるが、それ以上に被告人が殺意をもってAを死亡させたことまでを推認させるものとはいえないように思われる。すなわち、被告人が、Aの弱みを利用しAを使って何らかの方法により金銭を入手しようと企図したが、Aに何か理不尽なことを強要する過程でトラブルが生じ同人を死亡させてしまったという可能性が高いことは前記のとおりであり、そうであったとするとたとえAが被告人の殺意のない行為によって死亡したとしても、社会的には厳しい非難を避けられないことは明らかである。またその時の状況如何によっては、被告人の弁解が容易に聞き入れてもらえない可能性もある。被告人がそのような状況に置かれたとき、何としてでも、Aの死亡の事実を世間の目から隠し通したいと考えたとしてもそれは決して不自然なことではないように思われる。以上のとおりであって、所論が掲げる情況証拠はいずれも被告人の殺意を推認させるものとしては十分ではないかあるいは不適当といわざるを得ない。

コメント

本件では、被告人が殺意をもってAを死亡させたと認定することができるか否かが争われました。本判決では、被告人が重大な犯罪によりAを死亡させたことを推認させる証拠は少なからず存在するものの、証拠はいずれも殺意の有無に関しては多義的に理解しうるものであり、被告人の殺意を推認させるには十分ではないと判断しました。

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