事案
原判決は、①爆弾材料の窃盗、②爆弾1個による派出所爆破、③痴情による傷害、④別の爆弾2個の製造・所持、の公訴事実に関し、④については無罪とした。その理由は、④事件に関する自白は、③事件の勾留中に、捜査官が違法に取り調べた結果得られたもので、その自白に基づき発見された証拠は証拠能力を欠くとした。不任意自白に基づいて発見された証拠物の証拠能力が認められるかが争われた事案。
判旨(大阪高裁昭和52年判決)
虚偽自白を招くおそれのある手段や、適正手続の保障に違反して採取された不任意自白に起因する派生的第2次証拠については、犯罪事実の解明という公共の利益と比較考量のうえ、排除効を及ぼさせる範囲を定めるのが相当と考えられ、派生的第2次証拠が重大な法益を侵害するような重大な犯罪行為の解明にとって必要不可欠な証拠である場合には、これに対しては証拠排除の波及効は及ばないと解する。
コメント
不任意自白に基づき発見された派生証拠の排除の当否は、自白獲得手段の違法性が派生証拠も排除に導くほど重大なものか否かが問題です。自白排除の要請ないし違法な自白獲得手段抑止の要求と犯罪解明という公共の利益を比較衡量して決すべきであり、その比較衡量では、違法性の大きさに加え、その事案の重大性と派生証拠の必要不可欠性についても考慮するほか、違法手段を利用して派生証拠の獲得を狙うという捜査官の主観的側面にも配慮すべきであることを示した判示です。